港町ニリでルルーとウィルはウィルの父親であるボガードの所有する船の整備をリンドと初めとする船員たちがしているドックまで来ており、ウィルがリンドを発見し、声をかける。

「あ、いたいたおーーーい、リンドーーー！」

「ぼっちゃん！帰ってやしたんですね、シスター様もわざわざおいでになってご足労おかけしやす、お嬢は？」

「ミニルはギン達と一緒にいる、別に俺達は帰って来たわけじゃねえんだ」

　ウィルの言葉に疑問を抱いたリンドはウィルに尋ねる。

「帰って来たんじゃねえんならどうしたんですかい？」

「私から説明します。実は……」

　ルルーはリンドに自分達が帝国に対し再度の休戦交渉に向かう事を説明し、その説明を受け、リンドが反応をする。

「帝国が戦争をおっぱじめるとは聞いてやしたが、そんな複雑な状況になっていたなんて」

「はい、ですからウィルさんとミニルさんはまだ我々への協力を希望しているので行動を共にすることになりました」

「あんま大きな声で言えないんだけどさ、帝国の将軍が俺達に協力してくれるからその船で帝国に行く事になったからリンドは頃合いを見て俺達を迎えに来てくれ、もちろん帝国の警戒が強ければ無理はする必要はねえ」

「分かりやした、あ、そうだぼっちゃん、大将から会ったら言っといて欲しいって言われたことがありやす」

　ウィルは少し顔を引き締めリンドに話すよう促す。

「もったいぶった言い方しねえで話せよ」

「こう言ってやした『少しは俺に近づけたみたいだがいい気になるのはまだ早いぞ』だそうです」

「言いやがるな親父、じゃあこう言っとけ。『親父を越えるのは時間の問題だ』と」

　ウィルとリンドのやり取りを微笑みながら見ていたルルーがリンドに対し声をかける。

「私達もウィルさんには助けられていますし、そうボガードさんに言ってあげてください」

「分かりやした、それからぼっちゃんお嬢の事ですが」

「ミニルにも伝言か？」

「いえ、お嬢に伝言ではなくこれもぼっちゃんになんですが……」

　ウィルはリンドの不安な顔を見て先んじて言葉を放つ。

「なんだ、安心しろ口うるさい奴だが例えミニルは俺が死んでも死なせねえ。そう親父に言っとけ」

「ああ、いや、もちろんそれもなんですが……変な男に言い寄られたり、手を出されないようにしっかりガードしろとのことです」

「そっちかよ！」

　その場にいたルルーはもちろん、この伝言を聞いたウィルはボガードに対しとんでもない親バカだと認識した瞬間であった。