帝都に通ずる森を前にしてギン達は3つの道を3組に分かれて移動していた。
左の道ではブライアン、ウィル、ミニルが傭兵達と進んでおり、ウィルが地図を手にして先導していた。
「ウィル、異常はねえか?」
「今の所問題はねえし、もう全体の真ん中くらいには来ているはずだ」
「お前の専門は海だと思ったが、陸でもやるじゃねえか」
「あのな、ブライアン、陸でも自分の居場所を把握できねえ奴が海の航海で生き残れるわけねえだろう」
ブライアンの言葉を聞いてウィルは海に出るにはまず陸でしっかりと自分の居場所を把握できてこそと訴え、さらにブライアンに対して言葉をかける。
「お前もこれから漁師になりたいってんなら覚えておけよ!あとさ地図の見方を覚えておいた方がいいぞ、俺が教えてやるから」
「おお、そりゃあいいぜ、こりゃあなんとしても生きて帰らねえとな」
ブライアンが地図の見方をウィルから教えてもらえることで少し漁師の道が開けて来そうと喜ぶが、それに対しミニルが不安そうにつぶやく。
「うーーん、兄さんの教え方で大丈夫かしら、ブライアンさん、他の人にお願いするのがいいと思いますよ」
「陸だけならともかく海ともなるとウィルに聞くのが一番いいと思うんだけどな」
ブライアンとミニルのやり取りを聞いてブライアンに対して抱いた疑問をウィルがぶつける。
「なあブライアン、教えてやるって言った俺が言うのも変なんだけどよ、今ならそんな漁師にこだわる必要はねえんじゃねえか?」
「おお、どうしてそう思うんだ?」
「嫌な奴やその取り巻きのせいでお前は兵団を辞めなくちゃいけなかっただけで、隊長さんはいい人だし、あのマイクって奴もお前を慕っているし、お前のこの戦いの功績を考えりゃ兵団に戻っても足りないくらいだし、もっと厚遇を受けられるんじゃねえのか?」
「……確かに、兵団にはもういられねえって思って、漁師を次の仕事にって考えてた。だが今俺が漁師をやりてえのは兵団にいられなくなったからってわけじゃねえ」
ブライアンの強い言葉にウィルが更に尋ねる。
「一体何だってんだ?」
「戦争で食うに困る人も多くいるだろう、そういう人達にうまいもんを届けてえ、この戦いでそう思ったんだ」
「すごいですねブライアンさん」
「まあ、それをする為にも俺自身にも金は必要だし、結局傭兵みたいなことはするかもな、お前達の親父みたいに」
ブライアンの大きな夢に感心しながらも、一同は森を抜ける。