エイムとムルカもエンビデスへと接近し、説得を実行する為、ウィルがムルカと共に前面での戦闘に参加し、後方よりミニルの風の楯で魔法を防ぎ、ミニル自身への攻撃はルルーの防御魔法で守る算段となり、早速ムルカとウィルが動く。
「エイム殿、できうる限り私から離れずにいてくれ。貴殿といえど多方面からの攻撃を防ぐのは難しいであろう」
「ムルカ様、私も魔法で反撃をしますから心配しないでください」
「念の為だ、エンビデス殿への説得には魔導書を授かったエイム殿、そして少なからず彼の心情が理解できる私の言葉が届きやすいかもしれん」
「エンビデスさんの心情?それって……」
エイムがムルカにエンビデスの心情について尋ねようとするとウィルが声をかける。
「もうおしゃべりは終わりだ。奴らが来る」
ウィルの言うようにエンビデス率いる魔導師団がエイム達に接近しようとしていた。魔法を使えない一般兵も多くいる為、接近戦を試みようとしているのだ。
「魔導師団っていっても、全員が魔法を使えるわけじゃねえんだな」
「うむ、そもそもエンビデス殿の直属の部下が魔術師に過ぎず、その魔術師達は兵も率いなければならん立場であるから、全員を魔術師で構成するのは無理があるのだろう」
エンビデス率いる魔導師団はエンビデス直属の部下が魔術師ではあるが、その魔術師達も全員が部下として別の魔術師を抱えられるわけではなく、一般兵を指揮しながら作戦行動を行わなければならない者も多くいる。
以前エイムを拉致したアビィは魔導師団の中でも比較的地位が高く、自身の指揮下に魔術師を置いていたが、そういった事ができる者は魔導師団でも極少数なのだ。
「そういう事なら俺が兵をかく乱しますからムルカ様とエイムは魔術師を突破してエンビデスに近づいてください」
「魔術師の突破を我らだけでか、それは少し厳しいな」
「大丈夫ですよ、ミニルとルルー様が援護してくれますから」
「そうか、っとこれ以上の雑談は無用だ、頼むぞ」
ムルカがそう声をかけると、ウィルは兵達に短剣を向けて攻撃を開始する。同時にルルーがウィルに対し水の魔法を放つ。
「私の魔法も役に立てて、ウィル!」
ウィルに対して放たれたルルーの魔法はウィルの左手で水の短剣へと変化する。右手に父ボガードより授かった短剣、左手に自身の術で生成した水の短剣の2つの刃で帝国兵へとウィルは向かって行く。
「いくぜ!お前らに恨みはねえが、戦いを止めねえなら誰であれ容赦はしねえぞ!」
エイムとムルカがエンビデスへの説得の成功を願いつつウィルも自らに役割を果たそうとしていた。