俺、
見積もりの為に俺達が到着したのは、外側は何の変哲もない少し大きな田舎によくある一軒家だったが……その中に入ると入り口から圧倒されるものだった。
「ななな、なんだこりゃぁぁ!?」
入口にずらっと並べられていたのは、大量の子供用の靴。
それも全部昔の番組のプリントされたなんともデッサンがおかしかったり色が派手すぎるようなものが大半だった。
流石は玩具屋敷というべきか、まさか入り口すぐでこんなものに出くわすとは。
――だがそんなものは序の口だった。
大量の靴の次におれ達を出迎えたのは、巨大な等身大のガンボーグと呼ばれるロボットだった。
あ、このガンボーグをロボットというと一部のマニアが怒るんだっけ、確か以前ペドロさんにロボットと言ったら、「これはロボットではありまセーン! マ・シ・ン・スー・ツ! なのデース!!」と面倒くさい説明を食らった覚えがある。
そのペドロさんは当然のようにこの玩具屋敷に入った瞬間からマジマジと目を皿のようにして入口の子供靴から見続けている。
ペドロさんは、鼻息荒くガンボーグの足元にしゃがみ込んで、「この塗装の剥げ具合、まさに初期ロットデース!」などと叫んでいたが、こっちはそれどころじゃない。
このトンデモない玩具屋敷は俺達を歓迎しているのだろうか? 入った時から異様な空気が漂っている。
そして次に目についたのは、壁にびっしりと吊り下げられたヒーローマスクとハンガーにかけられた派手な全身タイツだ。
等身大ガンボーグの後ろには、壁一面に無数の特撮系変身ヒーローのマスクが飾られていた。
どれも微妙に歪んでいて、目の部分だけがくり抜かれている。またはボツポツと小さな大量ののぞき穴がある。
これって実際に撮影に使われた物なのか?
じっと見てると、こっちを見返してくるような気配がするのがまた嫌だ。
「これ、あれだよな。子供の頃テレビの再放送で見たやつ……ほら、なんか人形が突然爆発するシーンばっか印象に残ってるやつ」
「『宇宙兄弟テツジーン』じゃな? シバテレビの再放送で今やっとるぞ」
まったく、人が仕事している間ずっとテレビ三昧かよ、このぽんぽこゴロニート姫は。
「この屋敷、どうやらそういう『モノ』たちの供養場になっておるようじゃの。いわば、玩具霊の墓場……じゃが、霊が勝手にやって来るんじゃなく、何者かが意図的に集めておるようじゃ」
その言葉を裏付けるように、屋敷の奥からギイィ……とゆっくりドアが開く音がした。
「ま、まだ何か出てくんのかよ……!」
出てきたのは――巨大なゼンマイ仕掛けのピエロ人形。
ピエロが跳ねてきた瞬間、俺は思わず身構えたが――
「……あれ?」
バネ仕掛けのピエロは、俺たちの目の前でクルンと回転し、両手を広げて止まった。鳴り出すオルゴール音。そして、お辞儀。
「……なんだ、パフォーマンス人形かよ。ビビらせやがって……!」
俺がそう言った瞬間、ペドロさんがボソリとつぶやいた。
「おかしいデース……あの人形、動力はゼンマイだけ。なのに、いまの回転動作と音楽の連動……物理的に無理あるデース」
いや、ペドロさん、その冷静な分析の方が怖い。
「まあ、霊が動かしてるだけなら、それ自体はさほど脅威じゃないのう」
いやいやいや、普通の常識では霊が動かしている方がおかしいんだけど……紗夜がぽてりこをボリボリしながら言いかけた、その時だった。
――ズズンッ!
屋敷の奥から、何かが“起動”するような重低音が鳴った。
「……あれ、なんの音だ?」
振り向いた俺たちの前に、廊下の奥の扉がガタンと開き、真っ暗な空間から何かがぞろぞろと這い出してくる。
「お、おい、あれ……ロボット? いや……おもちゃ?」
出てきたのは、古びたブリキの戦車に乗った無数の兵隊人形、ビームサーベルを持ったスーパーロボ系プラモデルの山、そして――明らかに何かの合体中に失敗したような、巨大な半端ロボの姿。
「お、おいおい、あれ……ヤバくねぇか!?」
「うむ。こやつらは霊に操られているというより……すでに玩具そのものに意思があるようじゃの」
「ま、マジかよ……って、来たああああああ!!」
プラスチックのギチギチという音を鳴らしながら、玩具軍団が突撃してくる!
そのロボットは、CSアニメチャンネルの再放送で見た超電磁メカ・ガッダイン5という合体巨大ロボにマシンダーAと呼ばれる巨大ロボの合体合金ロボの玩具、そして俺が昔見たバンカイザーの巨大合体ロボ・グレートバンカイザー、それに名前までわからないが赤に青に黄色に緑に黒に金色のロボットのプラモデル軍団、さらに飛行機の玩具までもが襲ってきた。
「うわーっ、いったいどうなってるんだよ!?」
「オーマイガー、ガッダインデース! まさかこんなレアものがあるなんて思わなかったデース、それも腹にタイトルロゴが付いててサスペンダーでロボをツッテいる初期レアバージョンデース!!」
ペドロさん、そんなこと言ったってわからないよ。
とにかく俺達はロボットの玩具軍団の襲撃を受けている。
「まったくキリあらへんなっ」
満生さんは三独鈷の端から霊気の剣を作り出し、ロボット軍団を薙ぎ払った。
「ワ~!! 貴重なプラモやチョウゴーキンが、もったいないデース!!」
「アンタアホか!? 自分の命とロボットのオモチャ、どっちが大事やねん!」
「どちらも失いたくありまセーン!!」
この返答に満生さんはかなり呆れたようだ。
「このロボっとの玩具共、ワシらを侵入者だと思って攻めてきておるようじゃな」
紗夜はぽんぽこタヌキ着ぐるみパジャマのまま、ロボットのプラモデルを吹き飛ばした。
当然ながらペドロさんが叫んでいるが気にする様子は無さそうだ。
そんなプラモデル軍団の攻撃は地上からだけではなかった。
「ななな、何じゃと? 空から飛んで攻めてきおったのか」
ロボットのオモチャ軍団の応戦をしていた俺達に次に襲い掛かってきたのは、旧日本軍の飛行機や海外の飛行機、それにSF作品の架空の戦闘機等の飛行部隊だった。
だが、その中でも異質を極めたのが、それらの飛行機を発射している3メートル近い巨大な船、空母だった。
その空母はまるで特撮ミニチュアに使われるほどの巨大さで、その出来はとても素人の作ったものとは思えない物だった。
「ま、まさか……アレは、作造さんが作っていた船?」
「むう、そうぢゃな。アレは間違いなくわしが児童館の子供達の為に建築の廃材を使って作った旧日本軍の空母、軽空母
え? この声はじいちゃんの声?
「じいちゃん? また作造の中にいるのか?」
「ほう、また作造どのが中から出てきたみたいじゃな」
「ふむ、どうやらそうみたいぢゃ。ここは霊気が強く漂っておるようぢゃからな。わしが表に出てこれたみたいぢゃな」
子ザルの作造の中のじいちゃんはこの異常な状態の中で冷静な態度をしている。
だがこの非常事態にそんな悠長なことを言っている場合じゃない!
「あまり詳しく話をしている場合じゃないよ、どうにかあの船からの飛行機をどうにかしないと!」
「そうぢゃな、仕方ない。わしが昔乗っておった船じゃから昔話したかったんぢゃがな、まあいいわい、わしはあの船のどこが弱点かはよく知っとる、あの上部甲板のエレベーター部分を攻撃してみるんぢゃ」
子ザルの作造の中のじいちゃんが教えてくれたように、俺達は飛行機軍団の攻撃をかいくぐりながら天鷹の甲板上部にあるエレベーター部分と艦橋部分に捕まえた飛行機をぶん投げてぶっ壊した。
すると飛行機を輩出していた部分が壊れた天鷹は、何も出来なくなり、そして沈黙した。
そして、玩具のロボット軍団も満生さんに粉々に砕かれ、ようやく沈静化した。
――はずだったが!
粉々になったはずのロボのプラモや合金の玩具は謎の力で再びくっつき、元の姿に戻ろうとしていた。
「これじゃあキリがない!!」
俺達はどうにかロボットやプラモのある部屋を抜け、階段を上り二階に逃げる事にした。
さすがにロボットのオモチャは扉を閉めると二階までは上ってこれなかったみたいで、俺達はようやく危機を脱出する事が出来た。