「ヘル五本槍を撃破し、ゴブランクイーンを倒したスカイジーンとグランジーン! だが、今、ガガ星から新たな脅威が迫る。最高司令官、鉄の腕ゴブラン将軍が地球に向かっているのだ!! 飛べ! スカイジーン、走れ! グランジーン。今だ、アイアンブラザーアタックだ! 次回、宇宙兄弟テツジーン、第38話。ゴブラン将軍が来た! にご期待下さい」
朝7時からの再放送なので食事が終わってすぐに部屋に戻ってきたようだな。
「なー、何あんなショボい昔の特撮見とるねん」
「何がしょぼいのだ、てつじーんは立派な
でも何だか新キャラのゴブラン将軍を見て、「カッコええやん。あーし主役よりあっちがええわ」と言っていたので同じ穴の
「おーい、見終わったらそろそろ出かけるぞー」
「わかったのじゃー」
そう、俺達は松樫市の比奈橋市長の強制命令で、バリハワイアンセンターの廃墟を調べに行く事になってしまった。
それもこれも紗夜と満生さんが市長再選記念パーティーで大暴れしてくれたからだ。
あー頭が痛い。
しかし、いつも思うが、松樫市の市長なのに名前が“比奈橋”って……もう“比奈橋市長”って呼ばれるたびに、どこの市長なのか分からなくなってくるんだよな。いやほんと、ややこしすぎるわ。
「えー! 今回はワタシも松樫プリンスホテルじゃなくバリハワイアンセンターに行きたいのデース。あそこはテツジーンの20話のロケ地だったのデース。ロケ地巡礼マップも作ってきたのデース。そして……堀木久美子さん……ミッちゃんの水着姿も見れたのデース」
「なんぢゃいペドロ、お前さんそっち行くんかい。それぢゃわしは甚五郎の方を見てくることにするわい」
どうやらじいちゃんの魂の入ったぽてりこんぐは今回はバリハワイアンセンターではなく松樫プリンスホテルの修繕の監督に回るらしい。
しかし、ぬいぐるみから監督の指示が出るってある意味シュールな光景だな……。
そんなこんなで俺達は準備を進め、バリハワイアンセンターの廃墟に向かった。
母さんが「あらあらまあまあ、ハワイアンセンターに行くならせっかくだからこれ持っていきなさい」って渡してくれたのが、よりによってビキニの水着とワンピース水着って……今から行くとこレジャーランドじゃないのよ。
しかもノリノリの紗夜は……。
「はわいとは……南国なのじゃろ。つまりは琉球や印度みたいな場所と聞く、それを母上どのに言ったらこれを用意してくれたのじゃ」
これ用意させたのはお前か。
マジで遊びに行くんじゃないんだぞ……とは言いつつも、紗夜は車にまた大量のぽてりこを、満生さんはアームストロング缶チューハイを詰め込んでた。
もうこの光景に慣れてしまった自分が嫌になってくる……。
そして俺達はバリハワイアンセンターに到着した。
雨で錆びた看板には、当時の文字が色あせていて少し不気味さを感じる。
「ついに来まシタ―、ここがバリハワイアンセンターデース」
「ここ。なんかめっちゃ嫌な予感がするんやけど」
「これがはわいなのか? 南国っぽさがよくわからんのじゃ」
とりあえず、断水してて水は使えないだろうから、車にポリタンクを何個か持ってきたが、足りるかどうかが不安だ。
出来るだけ汚れないようにしよう。
――と思っていたのだが、俺達が入口に入るとすぐにバシャッッと泥が全員を襲った!!
「ななな、何なのじゃー! ワシのお気に入りが泥だらけなのじゃー」
「アンタだけやないわ、あーしもこんな状態や!」
「うわー、テツジーンの超鉄合金が汚れてしまったデース! すぐに磨かないと」
満生さんの着ていたTシャツには――後の祭り――と書かれていたが、まさに今はその状態だ。
しかしどうするんだよ、車に持ってきたポリタンクの水は全員がシャワー出来る程の量じゃないんだぞ。
紗夜は泥まみれで固まってるし、ペドロさんはテツジーンの超鉄合金を必死でタオルと持参した紙やすりで磨いてるし……。
――てか何でいきなり建物入った瞬間に泥を浴びる事になったんだ!?
満生さんは一人ブツブツ何かを唱えている。
「しゃーないな、あの子呼ぶしかなさそうやな。おいで、
満生さんが呪符を地面に置くと、そこからは少し可愛らしい水色の小象が姿を現した。
その鼻は花屋さんやホームセンターで見かけるような如雨露のような形になっている。
「この子は如雨露射輪象。あーしの式神や。あーしが小さいころに如雨露見て象みたいやなーと思って作った式神やねん。この子なら水で綺麗にしてくれるわ」
なんともファンシーな見た目の如雨露射輪象は、その鼻から大量のシャワーを出してくれ、俺達はどうにか泥を洗い流す事が出来た。
でも服がびしょ濡れになってしまったので、俺とペドロさんは濡れたままの肌シャツ一枚にトランクス、紗夜と満生さんは母さんの渡してくれた水着に着替える事になった。
今は梅雨明けの初夏とはいえ、まだ肌寒さを感じる。
紗夜は薄いブラウンのワンピースにフリルと小さな尻尾の付いた可愛らしいデザイン、満生さんは大胆ビキニスタイルにパレオ……しかしやはり上にはTシャツを着たみたいだけど、今回の文字は――ハワイやん――。
もうツッコミは入れないぞ、でもやはりどこで買ってるのかは気になる。
そして、紗夜のぽんぽこタヌキ着ぐるみパジャマは、入口の看板の棒にかけて干しておくことにしよう。
中を探索すると、そこは辺り一面泥にまみれた悪臭の漂う泥水ばかりだった。
入口開けた瞬間の泥は、その溜まった泥がドアを開けた瞬間一気に出てきたのかもしれないな。
ペドロさんは持参した地図を基にあそこでスカイジーンが何だかんだ、そこでグランジーンが何だかんだと言っていたが……見ていない俺にはまるでわからん。
紗夜はワクワクしながら聞いていたみたいだが、それよりもこの場所をどう解体するのかその算段を考えないと。
「そうそう、そこデース。そこの大型スライダーのとこからミッちゃんが滑り……ってなんでアナタがそこにいるんデスカー!?」
ペドロさんが朽ち果てた大型スライダーの上を見ると、そこには大型の戦車を背中に背負ったような怪人の泥人形が姿を見せた!
「アアア、アレは……テツジーン20話に出てきたガガ星爆弾三勇士の一人、タンクダンデース!! 間違いありまセーン!!」
戦車型の怪人の泥人形は、俺達を確認すると、その砲塔から泥の塊を放ってきた!!
「危ないっ!!」
俺達はどうにかそれを躱したが、今度は紗夜が何かを見たようだ。
「何なのじゃ? ここに泥で出来た特大ぽてりこがあるのじゃ……」
「こっちは特大サイズのアームストロング缶チューハイや、いったいどうなっとるねん」
みんなが戸惑っているが、俺も実は竦んで動けない。
何故なら……俺の目の前には、大量の泥で出来た大工道具が見えるからだ。
俺は何故か大工道具が苦手だ、なのに何故、こんな風に泥で出来た大工道具がオレの前に出てきたんだ!?
「
「じ、実はそうなんだ。家が建築会社なのに、おかしいだろ」
「せやな、でも……それは人それぞれやからな。それよりも……これってつまりは、泥を使う何者かがあーしらの意識したものを具現化して出しとるように思わへんか? さしずめ、能力による意識化、能識ってとこかいな」
気を付けないと、ここには泥を具現化する何者かがいるのは間違いないんだ。