『レベル
「これ……どう思う?」
手にしたクエストをヒラヒラと掲げるのはデンちゃん。藍とナミもその紙の動きに視線を動かされる。
「ちょーせんしたいは、したいけど……」
「デンくん、そのクエストは……?!」
冷静な藍が一瞬、普段見せない表情を浮かべたのをデンちゃんは見逃さなかった。しかし彼自身の興奮がその違和感を上回る。
「……俺は……やってみたいんだ! ナミちゃんが心配しているのは、『俺たちがこのクエストのレベルに見合っているのか』ってことでしょ? 3人になってできることも増えたし、暗殺の阻止がクエスト目標ではないから、危険なところは狙わないって方向ならいけるんじゃない?」
いつも通りの落ち着きを装う藍が、いつも通りのお兄さん振りと知識をご覧入れる。
「デンくん、ケネディ暗殺の真相を探るだけで結構危険な目にあってるんだよ」
「そーなの?」
「クエストに挑戦する、それだけでケネディ暗殺に関与してるのとイコールってこと……」
電子はきっと難易度の高いクエストで、より大きい真球となって表れると思われる。だからきっと仁は前回の『ムガール』・『タイタニック』のレアクエストにも参加したに違いない。
ナミはそう思って参加者パーティを調べた。クエストが終了していれば参加パーティの情報は、最低限のみ開示される。どちらのクエストも終了していて、クエストクリアパーティはなかったとのこと。
ナミはそれらしき怪しい名前を発見していた。
何故ならそれらの名前は『自由フランス』に関した名前をモジった名前に似ているから……。
「ほら、ムガール帝国とタイタニックだって誰も達成できてないけど、みんな挑戦してるじゃない?」
「ムガールは攻防戦クエストだったにも拘らず、ライフエンドの人もいなかったみたいだしね」
「そんな甘いもんじゃないよ!
デンちゃんとナミの、2人の少しお気楽なノリに不安を覚えた藍、同時に少し場の空気が変化したのも感じた。
「…………」
「あ、ごめん。僕もやってみたいんだ、それはホント。ははは……ほら、記念参加のパーティもいるみたいだって言うし」
その場を取り繕うような藍の態度から、2人は乾いた笑いで応えるしか術がない。それでも逸る気持ちの方へと一気に傾いてしまうのは、若さなのだろう、藍の次の言葉が天秤を動かす。
「っていうか、ここでやらなきゃいつやるの? って感じ?!」
「一見に如かず、だね」
「むしろ『一験』よね!」
「……じゃ、僕たちも初
「初めてを共有するって特別感だよね、ナミちゃん!」
「だね、デンちゃん! 私も嬉しいッ」
「あんたたち目立ってるね~」
「騒がしいでごじゃる」
「カフェ中に聞こえてるじゃじ」
イイネ様たちが現れた。イイネ様はナミと同じ『メロンの刺身』の皿を持ち、バズは藍と同じ『梨の干物』を手に、エモはデンちゃんの注文した『納豆パフェ』と同様に口から糸引いている。
「
イイネ様の一段上に立つ物言いは、きっと恐らく受け手の感じ方なのだろう。そして返事を待つことなく続けた言葉に驚かされる。
「どうだい? あたいたちとパーティを組まないかい?」
イイネ様はデンちゃんの口から伝う納豆の糸を指で掬ったのなら、自身の赤い唇へと運ぶ。瞬間的にデンちゃんとイイネ様の唇が納豆の糸で繋がる。挑発的な所作は大人の魅力……ナミはイイネ様を睨むけれど、知らん顔のイイネ様から垂れ下がった納豆の糸はいつの間にか切れていた。