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第50話

「ケネディクエストが『再』の理由ってさ……前回は『暗殺を防ぐ』ことが主たるミッションだったそうさ……」


 イイネ様がメディエ直轄のコネを利用して調べたようだ。


「前回はつまり、『ケネディが生きていたら』の分岐点を歴史が求めた。それを今回は『ケネディを殺した首謀者が暴かれたなら』その世界の変動を確かめる、違いはそんなところさ、ね」

「今回、ケネディは暗殺される必要があるってことですよね……」


 因みに前回のクエスト期間は1953年9月12日のジャクリーン・リー・ブーヴィエとケネディとの結婚から暗殺のあった1963年11月22日までの約10年。今回はケネディが大統領就任した1961年1月20日から2039年ウォーレン委員会の全ての資料が公開されるその日までの78年間のクエスト期間がある。⦅2023年6月30日で99%の公開が完了している⦆


「キューバ、ソ連、CIA…ジョンソン副大統領など、当時からいろいろ無責任な共犯者説が流されてきたけど、もしそうだとしたらそんな組織を相手に俺たちができることって一体?!」

「シークレットにされていた情報を今持っている僕たちは、ジム・ギャリソンやボブ・ベアよりは有利に戦えるかもしれない……けど……」


 藍の詰まった言葉を続けるようにイイネ様が宣言する。


「それはとても危険なこと、ってことでもあるわね」


「ケネディ暗殺後1時間でオズワルトは逮捕された。そして48時間後にはオズワルトもジャック・ルビーに殺されている」


 ゴクリと嫌な音を立ててデンちゃんは生唾を呑み込む。ナミを歴史の恐ろしい場所へと連れてきてしまった後悔が過らなくもない。


「真相に迫ることは、より命の危険に近づく……」


「魔宮クレムリンのフルシチョフ政権下のソ連は不気味に感じます」

「KGBの13課は超法規的な殺人をも行っているって言うじゃんが」

「ピッグス湾事件があって、大統領がCIA幹部を更迭した恨みだとか」

「CIAはカストロ暗殺も企んでたとか⦅CIAによるフィデル暗殺計画で、147回計画されたといわれている⦆」

「そのキューバのカストロだって、アメリカへの報復を示唆したとかでべし」


 この場に居る誰もが『全員黒だ』そう言いたくなった、はずだった。


「ねーそれじゃわたしたちにとっては、ウォーレン委員会の結論通りオズワルド単独犯だったら良いんじゃない?」


 可愛いこと言うじゃん、デンちゃんはこの場でなければそう言いたくなる無垢なナミの言葉。そうであったら本当に良かったのかもしれない、しかしそうではないからクエストがある。それを藍が証す。


「でも、オズワルドは硝煙反応がなかった、つまり銃を撃っていない証拠があるんだ」


「オズワルドが使ったとされたのが『マンリカ・カルカーノ』というライフル銃。古い上に粗製濫造品で引き金は二段式⦅* 1発撃つたびに手元のレバーを引く⦆で弾がそれやすいんだ。それを射撃が得意ではないと言われているオズワルドが80メートル先の動く標的へ6秒間⦅* 8.5秒とも⦆に3発撃ち2発を命中させたというのは、やはり無理がある」


 これはデンちゃんの言葉。話しはヲタク方向へと舵を切る。


「現場ではワイズマンという警官が『モーゼル』というドイツ製の銃も発見していたらしいけど、広く知られることとなっていないどん」


 どうやらバズもそっち系らしい。カルカーノはイタリア製でモーゼルはドイツ製の銃だとか知識の披露が始まる。


「ふーん……」


 ナミの興味が無さそうなリアクション。ナミが端を発した話題なのにナミの手から離れて盛り上がる。


 使用したと言われるカルカーノからはオズワルドの指紋も出ていないこと。マルクス主義者で、ソ連への亡命歴がある元海兵隊員ということ。

 ケネディ暗殺の約半年前、オズワルドは元米陸軍少将を暗殺しようとして失敗したこともあり、ケネディが暗殺された後、オズワルドは下宿近くの路上で職務質問をしてきた警察官も射殺した⦅* 否認している⦆こと。

 職を得たダラス中心部の教科書倉庫で働くため、妻子を郊外の知人宅に残して1人で下宿していたこと。


「ってことは、オズワルトは勤務先の窓6階から、ライフルでケネディさんを狙撃したの?」


 思ったよりオズワルド情報は波乱万丈で、ナミは話に戻ってきた。


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