時を同じくしてザプルーダー側のバズ。エモは不覚にもアンブレラマンやマリリン・シッツマンの証言にある黒人カップルなどを注視してしまい、狙撃の場所を特定できていない。
◆◇◆◇
教科書倉庫のエモ。教科書倉庫、確かにそこにオズワルドはいた。大統領の車列がエルムストリートに入ってきたとき、彼は6階にはいなかったのを確認している。
証言から教科書倉庫では、6階には少なくとも3人の男がいた。それは確かな情報だった……事実、オズワルドやビルの従業員のものではない人間の指紋が検出されている。
2人は白人で、そのうち1人は若くて痩せていて明るい茶色の髪。もう1人は体格が良く、べっこう縁の眼鏡をかけていた。残る1人は黒人で、ラテン系の可能性が高い。
痩せた若い白人は、いちばん西寄りの窓にいてライフルを持っていた。
黒人は頭に禿があり、東端の窓から発砲しているのを目撃されている。
それらはFBIのガイ・バニスターと故意にしていた反カストロの亡命キューバ人もしくはトラフィカンテ一家の殺し屋たちを連想させる。
しかし暗殺当日は、6名の教科書倉庫の従業員だけで、見知らぬ人物が紛れてビル内に出入りできる状態ではなかった。つまりはエモと同様ビルに忍び込んだ奴がいる……。
そしてエモも暗殺のタイミングにミスを犯してしまう。オズワルドが6階にいないことに気付くと、エモはオズワルドの行方を気にして階下に身を移してしまう。
『パァ―ン!!』『パァ―ン!!』
エモは上階から2発の銃声を聞いた。
◆◇◆◇
グラシ―ノールのデンちゃん……。左前方から大統領の車列が近づいて来る、その距離約30メートル。暗殺の準備が成されている狙撃手の位置を見つけることはできなかった。しかしもって犯人を捕まえることが目的ではない、クエストでは『暗殺は行わなければならない』。デンちゃんは目を閉じ、雑音が飛び回る中、神経を耳に集中させた。
柵のところから乾いた音が弾けた。間髪入れずデンちゃんが急いで音へと向かって走る。白い煙は薄く同化する前だったのにも拘らず、そこには人影はなかった。
そしてそこにはカルカーノの弾丸より一回り小さい歯型の付いた
だからグラシ―ノールから放たれた銃弾はジェームズ・ファイルズの仕業である。そして彼の弾丸はケネディの喉を前方から貫いたのである……。
◆◇◆◇
アンダーパスのイイネ様。大統領の12台の車列が交差点を左折して時速20キロメートルほどで進んでくる。先頭を先導する白バイ、次にシークレット・サービスの車、そしてケネディ大統領夫妻が乗ったリンカーン・コンチネンタルも見えた。
エルム交差点から約41メートル……暗殺されるのは分かっている。分かっているからこその騒鳴する心臓。
『ダァ―ン!!』
イイネ様の耳は4発の銃声を聞き取る。2発は教科書倉庫、もう1発はグラシ―ノール、そしてエルム交差点、ダル・テックス・ビル。ダル・テックス・ビルは大統領が走るエルムストリート直線上、真後ろに位置する。
イイネ様は4発の銃声を聞き分けただけでなく、視覚でも発射位置を捉えている。
グラシ―ノールからの狙撃が大統領の首を貫いた、1発。2発目、教科書倉6階東の窓から発射。車から逸れて道路で跳ね返り、立っていた見物人の男性の顔に当たる。3発目再び教科書ビルからの狙撃がコナリ―知事の胸を貫通する。
そして4発目、ダル・テックス・ビルからの狙撃、これが大統領の頭を粉砕した。
イイネ様は大統領が4発目の銃撃を受けた際、身体が一瞬後方に動いたのを見てとった、それは射撃は前方から行われたようにも見えるけれども、後方からの狙撃であったことを見逃さなかった。