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第61話

「ディープステートの大統領暗殺の動機はエリア51の暴露?」

「そうだ。ディープステートの存在を世に知られたくない、ただそれだけでケネディは殺された」


 ナミの脳裏に暗殺シーンが蘇る。大権力者たちの都合で、アメリカの大統領さえも暗殺されてしまう。やはり世界は不公平でできている。


「殺したは良いけど、その真相をも闇に葬らねければならない、ってのが陰謀って訳さ、ね?!」

「そう、ケネディ大統領暗殺が国家間の謀略に発展すれば間違いなく第三次世界大戦が起きていた、だから誰かを犠牲にする必要があった、それがオズワルド、その陰謀をお膳立てしたのがCIAって訳さ」


「良くあんたが生贄になんなかったわね?」


「当然、俺が、未来人である俺が犠牲にされる予定もあったさ。しかしどこの誰だか分らなさ過ぎて、『こいつが大統領を殺した犯人です』って公開しても世間が納得しない、ストーリーが悪い」


「CIAはまだ俺を持て余している状態なんだな」

「CIAはディープステートにあんたの存在をまだ報告していない?!」


「そう、CIAもバカじゃない。俺が未来人で、ディープステートメディエが俺をここへ派遣したとなれば、パラドックスが起きるのは自明の理」


「CIAは『ケネディの死』と『陰謀の保守』、『未来人の存在』は世界のバランスに不可欠だと判断したってわけね」

「俺は未来を変えるためにシーカーになった。だからケネディを救うクエストを達成することが、第三次世界大戦の引き金悪い方の未来へとなるのなら、ケネディは死ぬべきだと判断した」


 CIAは昼飯会とスピーチが行われる予定であったダラス・トレードセンターにケネディ大統領暗殺の舞台を用意していたという。



「ランちゃん先輩のお父さんはどうして未来を変えたいんですか?」

「父さんは……」


 ナミの質問には藍が変わって答える。


「父さんは、母さんを助けたい、それだけなんだ」

「藍、知っていたのか……お前には迷惑をかけた」

「父さん、大丈夫だよ」


「それがこのケネディ大統領暗殺事件にどう関わってくるってんだい?」

「それは……言えない」


 千畝は両手の人差し指を耳の穴に向け、困ったような表情を向けたのなら、小刻みに指を回す。イイネ様は手早く周囲を見渡しすと、千畝に向かって頷いた。ナミやデンちゃんらはまるで意味が分からない。


「ここまで話して、なんでさー?」


 デンちゃんがその言葉をみなまで言う前に大きな声でイイネ様が話を被せる。


「あたいたちも第三次世界大戦なんてまっぴらごめんだねー。ね、あんたたちもそうだろ?」

「アイアイ」「でげすな」


「ま、核戦争とかになったら、大変だし……」

「『宇宙戦隊ヤマト』ってアニメがあったよねー。それみたいな?!」


 人差し指で耳を指すのは『聞こえる』の手話で、小刻みに回すのは『騒音』を意味する。つまりは『盗聴されている』との合図である。だからイイネ様は話をCIAの耳に良い方へと持って行ったのだ。


「じゃあ、もうケネディ暗殺の陰謀を暴くのクエストは止めておいた方がいいなぁ」


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