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第65話

「なんだ、風でこれが落ちただけか……」


 そんなタキシードの声が聞こえたのなら、2人がこの短い時間内に溜め込んでいた緊張が一気に吐き出される。




「……そんな訳がないでしょう?!」


 不意にテーブルクロスの下からタキシードの顔と声が流れ込む。


「ひゃっ!」


 2人は神妙に机の下から這い出るしかなかった。



◆◇◆◇



 イイネ様たちはナミたちと合流すべく向かっていた。イイネ様にはレジスタンスの目的が分からない。そして千畝がレジスタンスではないのに協力する理由……藍は『お母さんのため』といっていた。


ガキンチョの母親はウィルス感染で亡くなったってなってたかしらねぇ……)

 そもそもあのときの学生運動のきっかけとなった新型ウィルスの発見、それは『月から持ち込まれたウィルス』と言われている。


(千畝のおっさんの目的はアポロ計画の失敗?)

 そうなると共通項は『宇宙ウィルス』。レジスタンスは『宇宙ウィルス』を何かに利用しようとしているのではないだろうか?


(ってことは意外と千畝のおっさんとレジスタンスの利害は一致していないのかもしれないねぇ?)

 レジスタンスが次起こす行動は何か? そして宇宙とくればディープステートが絡んでくるはず、となればCIAが持つディープステートの情報が欲しいのはイイネ様だけではない、レジスタンスもだ。


(もう1つ……千畝のおっさんは『初めっからケネディ大統領が死んだ方が良い側』だったという事実……)



◆◇◆◇



 イイネ様たちがCIAのオフィスに近づいたそのときだった……銃声が乾いた空気を振動させる。


「エモッ!」


 イイネ様らが乗った車のガラスが割られ、運転するエモの腕を掠った銃弾。そして波紋で広がった銃声はタキシードの耳にも伝わっていた。タキシードが警戒態勢に入る。


 エモは割れたガラスの方向へとすぐにゴムを膨らませて、防御をとる。オフィス側まで車を着けたのなら、車から散開して狙撃手を窺う。そっと顔を覗かせたイイネ様が高い方へと視線を向けた下方から、仁が切り込んでくる。


 間一髪ビルの影から転げ落ちて仁のナイフを躱したのなら、絶好の狙撃チャンスとなってしまう。


「姐さん!」


 すかさずバズがピコピコハンマーで眩ましで援護する。銃声はしたが、ビルの壁に着弾した。

 狙撃手が厄介だ。


(早いとこスナイパーの位置を特定しないと、まずいねぇ)

 そう思った矢先、空を舞うカイトが狙撃手を炙り出した。


ガキンチョかい?!)

 これで戦える!



◆◇◆◇



 タキシードは外に出てきて状況を確認した。あの人間離れした動きをする男は『敵』だ、タキシードは以前からそう判断していた。

 そして同様にタキシードはナミたちを『危険ではない』とみている。デンちゃんとナミは拘束されていない。ナミたちも外を確認する。タキシードの足元をスナイパーの狙撃が穿つ。




「今から6年後の1969年7月16日に打ち上げられたアポロ11号は20日に月面着陸し、24日に帰還する」


 仁がタキシードとナミに襲い掛かる。


「へーえ、これはまた貴重な発言をいただきました」

「その時地球に持ち込まれた『レゴリス』をメディエに、いいやディープステートに渡すわけにはいかない」


「レゴリス? ……あなたたちの目的はそれですか、僕たちの持つエリア51の情報」


 仁を迎え撃つはデンちゃん、十手で受ける。


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