「他にはなにか情報ないのかしら?」
「動画見て見るべがす?!」
エモは360°動画を撮影していた。みなでその映像を見る。
「待って!」
突然ナミが大声を上げる。
「少し前……そこ、止めて。……で、ここ。拡大できる?」
そこには行動のメモらしき殴り書きが貼られている。画面に食らいついて覗き込んだナミの形相がみるみる変わる。
シャルド ネバタ州 エリア51 アンリ/ロべ PM~合流。
ジョゼ/ララ CIA待機
ムラン 千畝同行
「
デンちゃんでさえ、こんな取り乱したナミを見たことがない。ナミは仁に掴み掛った。慌ててイイネ様がナミを押さえる。仁は少し驚いた表情で言葉を溢した。
「南欧さんの娘だったのか……」
◆◇◆◇
「えっっと……少し整理しようか」
A: ナミはお母さんのことでシャルドを探していた。
B: 千畝は宇宙ウィルス『レゴリス』を地球に持ち込ませないよう、アポロ計画
を失敗に導くべく歴史を変えたい。
C: レジスタンスは『レゴリス』をメディエに取られたくない、自分たちが手に
入れたい。
D: CIAはケネディ大統領暗殺の真相を世に公表したくない。
E: Q sedai⦅イイネ様たち⦆はレジスタンスをとっ捕まえたい。
これがそれぞれの言い分である。
つまりは、
① デンちゃんパーティはクエスト達成を諦める。
② イイネ様たちはとりあえず仁を連れて帰れば文句ない。
③ CIAはこれ以上未来人に居て欲しくない。
④ ナミはシャルドを捕まえたい。(できればイイネ様たちも同じ想いがある)
⑤ 藍は父親を連れて帰りたい(スパルされているので無理だと思うが)
Aのためには③は我慢してもらう。
Bの理由を聞き、⑤は本人たちが話し合うしかない
といったところか。
先ずは藍と千畝が話し合う。
「父さん、伝説のシーカーなんて言うのはメディエのでっち上げ、そうなの?」
「伝説のシーカーか……存在するのかしないのか……真実は謎だ。でもメディエに異を唱えることはレジスタンスにでも就かなければ住みにくいのが今のエリア居住区だ。だから自分で信じた答えを見つけることだな」
「くくくっ……息子さんも俺を開放して、レジスタンスに加わるってのはどうだい?」
仁が口を挟んでくる。
「レジスタンスのリーダー、シャルドはわたしのお母さんを騙した張本人よ、許さないんだからっ!」
ナミも黙ってはいられない。気持ちは分かるが、今は一先ずその話は後で、となだめられてナミは辛うじて気持ちを押さえる。
「クエストを達成しても、歴史が変わることはない、そうだよね?」
「それは俺も少し考えてた……『終了後報告』を読んでも何か……なるようになってる、って感じで」
「そんなことどうだっていいじゃないかい?! お金、貰えてるんだしさ」
イイネ様は大分割り切った考えのようだ。
「……それでもクエストで変えられることがあるかも知れない、レゴリスが地球に持ち込まれさえしなければ、
「まぁでも、『真球』は歴史を変えるパワーを秘めているってのは本当さ。ただ『レゴリス』を手に入れたのなら、我々が
再び仁が口を出す。ナミに睨まれると、顔を逸らして口を閉じた。
「レジスタンスもメディエも真球だ、歴史の分岐点だって痒いこと言いすぎなんだよ。大統領だか、トップとか知らないけど、
頂と底辺、オンリーワンとナンバーワン……。三角形で考えるのなら、それはピラミッドの頂点と底辺と同意。だとしたならナンバーワンはオンリーワンの象徴といえなくない。
結局歴史は、偏差値の高い人生しかスポットを当てない。数多が支えている底辺は、平々凡々が過ぎるのであろう、それぞれの物語は在ってもドラマがない。
だから
「スパルされて分かった……大多数の底辺がオンリーワンとして存在したとして、それを社会の物差しで比べたり、数値化で差別することで順位をつけているのは、ナンバーワン側だ。その大きな力は、小さな個ではとても抗えない……運命や歴史を変える程のパワーは誰もが持ち合わせられるものではない、全てのモブにドラマを与え、全ての人にクエストが存在しないのがその証明さ。クエストは、ある一定の権力者のためにある大きな陰謀といえる」