ロックフェラー家は恐らくイルミナティトップクラスのネームバリューと思われる。となればレジスタンスのリーダーであるシャルドが現れる可能性は高い。ここはイイネ様とナミ、デンちゃんが見張る。
果たしてここに来るのはレジスタンスの誰か……千畝と藍がアスター家。バズとエモがバンディ家に張り込む。
ロックフェラー家を探りに来たレジスタンスはアンリとロべだった。そしてアスター家に現れたレジデンスこそ、シャルド、ジョゼ、ララである。
ニューヨークマンハッタンパークアベニュー16階と17階のデュープレックスのアスター家。
ブルック・アスターは慈善活動に力を置いていて、相続した財産を『すべて使い切る』ことを考えている。シャルドはそこに付け入ろうとしたに違いない。
「来た!」
先ず動きがあったのは、ロックフェラー。イイネ様より他のチームへと連絡が入る。他の2チームも周囲に神経を尖らせる。
「こっちも誰か来てる。 3人かな?」
千畝のカイトが不審者を拾った。レジデンスがこのクエストに乗り入れた人数は仁を入れて6人のはず。3対1対1で分かれてるとは考えにくい。
「ロックフェラー班、そっちは何人だ?」
「多分2人……」
「じゃあバンディはハズレってことですね」
余談ではあるが『イルミナティ13血流』にあるコリンズ家はアポロ11号の操縦士であるマイケル・コリンズとは無関係であり、バンディ家はケネディ政権の国家安全保障問題、大統領補佐官であり、複雑に絡み合っていることが分かる。
イイネ様たちは2人の人相を凝視する。シーカーたちの誰もが仁以外のレジスタンスの人相を知る者はいない。唯一、千畝だけがシャルドの顔を知っている、シャルドは垂れ目の金髪、そして上唇に傷跡が残っている。そこへ千畝からの一報が入る。
「お嬢ちゃん、悪いな、シャルドは俺たちの方だ」
千畝が言い終わらない内に千畝のカイトへと向かって発砲音が鳴る。油断していた千畝のカイトはあえなく撃墜されてしまう。
「こっちお願いッ!」
切れる前、銃声を拾った通信。即座にナミが動く。
「あたしも。坊や、こっちは任せたよ」
イイネ様もナミの後を追って走り出す。その気配に気付いたレジスタンスが逃走図る。
「ちょっ……待ってよッ!」
有名なあの台詞とは少し違うのは置いておく。デンちゃんは判断に迷ったが、レジスタンスを追う。しかしこういうのは、こうなってしまっては捕まえるのは難しい。暫く追ったが完全に見失ってしまう。深追いすれば逆にデンちゃんの方が危うい。
◆◇◆◇
こちらは千畝サイド。
こっちも距離を置いての方法がメインの2人。相手に悟られないのが必勝であったはずである。そんなことは歴然としているのに、何故か千畝が藍以外の余人をチームに入れることを拒んだからだ。
しかも3対2、逃げてもおかしくない状況でレジスタンスが攻勢に出ているのは、千畝に対する意識からであろうか。
「それにしても千畝さんが我々を裏切るとは、ね」
「レゴリスを道具にしようなんて奴と組んだ覚えはねーよ」
ある程度時間を使った言葉と攻防のやり取りが続いた。そこへナミとイイネ様が現着する。それがこのアスター家攻防を動かすこととなる。
「シャルドッッッ!!」
ナミの感情的な声が瞬間的な間を作る。誰もがその発信者を見る。名を呼ばれた当事者は尚のこと確認せずにはいられない。
「南欧の娘か……よく似ている……」