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第21話 二日酔いの薬



「うう、またやってしまった……」


 あおいはだるい体を起き上がらせた。


「はあ、アレックス様になんかしてたような気もするけど、考えると怖いから気にしないでおこう……」



 あおいはのろのろとベッドから降りると、一階の台所に向かった。


 水を一杯飲んで、ため息をつく。


「うーん、また二日酔いだ……」



 あおいは椅子に座ってボンヤリとしていたが、ふと思いついた。


「そうだ! 二日酔いの特効薬を作ろう!」


 二日酔いになるほど飲まなければ良いという正論は置いておいて、商品としても魅力的だろうとあおいは思った。



「えっと、それじゃあ材料は毒消し草と薬草かな?」


 あおいは魔法の釜に毒消し草と薬草を刻んで入れた。


「それに、蒸留水をいれて……」


 材料の入った釜をかき混ぜると、ごぽごぽと言いながら泡が立った。


「うん、効きそうな匂いがしてる!」



 あおいは、釜の中の汁を一口飲んでみた。


「苦い!!」


 しかし体は軽くなり、頭の重さも解消した。


「これは良く効くなあ」



 あおいは緑色の汁を、瓶に詰めて蓋をした。


「よし、これをお店に出してみよう!」


 あおいはいつもの錬成物と一緒に、二日酔いの薬を持って街の店に向かった。



 あおいは店に着き開店準備を済ませた。


「あおいのクレープ屋です! 今日は新製品もありますよ! 飲み過ぎの貴方に朗報です!」


 あおいは元気に客を呼び込んでいた。



「こんにちは、あおい。今日は大丈夫そうですね」


「アレックス様! おはようございます」


 あおいは昨日の記憶が無くなっていたので、アレックスに元気な挨拶をした。



「あおい、昨日のことは覚えていますか?」


「えっと、覚えてません!」


「そうですか……」


 アレックスは、少し赤い顔で肩をがっくりと落とした。



「あの、アレックス様は二日酔いは大丈夫ですか?」


「一応大丈夫ですが、少し飲み過ぎたと思っています」


 あおいは緑の液体が入った小瓶を取り出して、アレックスに渡した。


「これ、飲んでみて下さい、アレックス様」



「これは? 頂きます……」


 アレックスは不安げな表情で、緑の液体を飲み干した。


 あおいはにっこり笑って、その様子を眺めていた。


「うん、苦いですね」



 アレックスは少し顔をしかめたが、次の瞬間驚いていた。


「体が軽くなった気がします。それに頭もすっきりしますね。なんですか? これは?」


「二日酔いの特効薬です。良く効きますよ!」


 あおいが得意げに言うと、アレックスは困ったような笑みを浮かべて言った。



「あおい、二日酔いになるほど飲まなければ良いんですよ」


 元気になったアレックスは、薬草クレープを買うと街の中に消えていった。


「アレックス様って、暇なのかな? よくお店に来てくれるし」


 あおいがぼんやりそんなことを考えていると、新しいお客さんがやって来た。



「おい、俺にも二日酔いドリンクをくれ!」


「はい、100シルバーです!」


 二日酔いドリンクはあっという間に完売した。


「やっぱり、お酒は飲んじゃうよね」



 あおいは二日酔いに苦しんでいるのが、自分だけではなかったことにホッとしていた。


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