「暑い……」
あおいは目を覚ますと、ベッドの中で呟いた。
「やだなあ。今日お店に立つの、しんどそう」
あおいはそう言いながら台所に移動した。
「そうだ! たしか熱耐性のあがる薬の作り方を本で読んだっけ」
あおいは記憶をたどり、魔法の釜に材料を入れた。
「たしか、最後にスライムのコアを入れるんだよね」
スライムのコアを入れた、魔法の釜をぐるぐるとかき混ぜる。
しばらくすると、冷気が漂ってきた。
「そろそろ完成かな?」
あおいが釜をのぞき込むと、中にあったのは……アイスクリームだった。
「うーっ」
あおいは一匙すくって、それを食べてみた。
「甘い! あれ? 体がひんやりしてきたみたい」
あおいはアイスクリームを瓶に詰めて、街のあおいの店に向かった。
「あおいのクレープ屋です! 今日は熱に耐性の付くアイスクリームもありますよ!」
お客さんが増えてきた。
「アイスクリームってなんだい?」
お客さんの問いかけにあおいは答える。
「冷たい、口の中で溶ける食べ物です」
「そうか。それなら今日も暑いし、ひとつ頂こうか」
「ありがとうございます」
あおいはクレープの注文に答えながら、錬成アイスクリームの紹介も怠らなかった。
「あおいさん、アイスクリームを一つください」
「あ、クレイグさん。はい、どうぞ。100シルバーです」
クレイグはアイスクリームを受け取ると、列から外れ一口食べた。
「これは!? 体の芯から熱が冷める感じがしますね」
「はい、熱耐性が付くアイスクリームです」
「なるほど。熱耐性の薬も、あおいさんが作るとアイスクリームになるんですね」
クレイグは真剣な顔でブツブツ呟きながら、頷いている。
「今日は、アレックス様はお城で仕事をしていますよ」
「そうなんですか?」
「はい、ここのところ街の視察を続けていましたから、書類仕事や貴族からの挨拶などの仕事がたまっているんですよ」
クレイグは笑いながら言った。
あおいは少しアレックスが気の毒に感じた。
「あの、クレイグさんも王宮に行かれるんですよね?」
「はい」
「でしたら、アレックス様に差し入れをお願いできますか?」
「いいですよ」
クレイグは笑顔で答えた。
「良かった」
あおいはアレックスが好きな薬草クレープを焼くと、アイスクリームと一緒にクレイグに渡した。
「それじゃ、よろしくお伝え下さい」
「はい、あおいさん」
クレイグが去って行った。
「やっぱり、アレックス様忙しいんだな」
あおいはぼんやりと王宮の方を眺めていた。
「なあ、クレープ早くくれよ!」
「あ! 失礼致しました!」
お客さんの言葉にハッとして、あおいはまたクレープを焼き始めた。