朝、おきると良い天気だったので、あおいは庭で朝食を取ることにした。
ベーコンエッグをのせたトーストを庭にしいたシートの上で食べていると、ロイドとアレックスがやって来た。
「おはよう、あおい。美味しそうなもの食べてるな」
「おはようございます、ロイド様」
あおいがロイドに挨拶していると、アレックスが割って入ってきた。
「おはよう、あおい。口元に卵の黄身が付いてますよ?」
アレックスは白いハンカチを取り出し、あおいの口元を拭こうとした。
「アレックス様、私は子どもではありませんよ?」
あおいはアレックスに口元を拭かれて、顔を赤くした。
「あおいは、今日の予定は決まっていますか?」
アレックスが言うと、ロイドも言った。
「今日は俺たちは栗拾いに行くつもりなんだけど、一緒に行くか?」
「はい! 行きます!」
三人はかごを持って、森に出かけて行った。
栗の木の林に着くと、あおいが歓声を上げた。
「すごい! 立派な栗の木! 実もいっぱい落ちてる!」
ロイドは辺りを見回して、ニヤリと笑った。
「じゃあ、早速拾おうか。アレックス様、競争しましょう!」
「そうですね、ロイドさん。競争ですね」
アレックスが言うと、ロイドは何か思いついた様子だった。
「勝った方に、あおいがキスするというのはどうだ!?」
ロイドの言葉にあおいが真っ赤になる。
「ちょっと、困ります!」
あおいは眉をひそめた。
「いいでしょう。あおい、私を応援して下さい」
アレックスは腕まくりをして、勝負に望んだ。
地味な戦いは続いた。
地面に落ちた栗のいがを靴で踏んで広げて、栗を拾う。
腰をかがめた作業を続けているので、二人ともしんどそうだった。
「そろそろお昼です! ロイドさんもアレックス様も終わりにしませんか!?」
あおいの声で、勝負はここまでとなった。
勝ったのはロイドだった。
「あおい、祝福のキスをしてくれ」
「……!」
あおいは、ロイドの手の甲に軽く唇を当てた。
アレックスは不機嫌そうだった。
「まったく。あおいは軽薄です」
アレックのぼやきを聞いて、あおいは怒った。
「勝手に人を優勝賞品にしておいて、何を言ってるんですか!?」
「まぁまぁ。でも、キスは口にするものだと思ったけどな」
「ロイドさん! 破廉恥です!!」
あおいとアレックスの声が重なった。
「まあ、栗も沢山採れたし、今日はこれで帰るとするか」
ロイドはかごを見せながら、あおいとアレックスに言った。
「私もかごいっぱい栗が拾えたし満足です」
あおいもにっこり笑った。
「私が拾った栗は城に持ち帰るとクレイグに叱られますので、あおいにあげます」
「本当ですか!? ありがとうございます、アレックス様」
さりげなく、あおいとアレックスは手をつないでいた。
「おいおい、いちゃつくのは二人きりのと気にしてくれよ」
ロイドが笑いながら茶茶を入れた。
「いちゃついてません!」
あおいはアレックスから手を離し、家に向かって一人で歩いていった。