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SS―1.絵美里とルル9か月

私がルミナを出産して5か月が経過した。

ルミナはどうやら成長が早いらしく、まだ5か月なのにもう歩き始めている。

片言だがもうしゃべり始めた。


あう、天才かもしれない♡


あああ、私も大層親ばかになりそうだ。

お父様やお母様の気持ちが分かってきたよ。


俊則は絵美里とルルにかまう以外は、いつもルミナをだらしない顔で追いかけてはニコニコ顔だ。


「ほーらルミナ、ああっ、危ないよ。ははっ、可愛い。パパのところにおいで」

「んっ、ぱーぱ、ぱーぱ」


よちよち歩いて俊則にしがみつくルミナ。

もうやばいくらい可愛い♡


「んー、まーま、まーま」


そしていつでも私を探す。

ああ、もうマジ天使♡


「ママはここだよ。可愛いルミナ。……おっぱいあげようね」


私は母乳をあげようと服を緩める。

何故か俊則はガン見だが……


「……ねえ、俊則……恥ずかしい」

「あっ、ご、ごめん……その、なんか、神々しくてさ……母乳あげている舞奈、凄くキレイだから…」

「ん!?……もう♡……いよ」

「えっ?」

「だから、その……見ても良いよ」

「う、うん」


私が母乳をあげるとルミナは目を閉じて一心不乱に吸う。

その様子を俊則が優しい目で見つめる。


ああ、凄いな。

心の底から幸せを感じる。


こんなに愛おしく感じるなんて……

ルミナは私と俊則の宝物だ。


※※※※※


今私たちは大公爵邸で生活をしている。

何と王城のすぐ横の宮殿みたいな建物で、昔大魔法使いのレギウスさんが国王たちにお願いして作らせた建物らしい。


なんでも、

「いつか生まれる勇者の為に必要だよ?まさか出現する魔王さえ倒せば用済みとか言わないよね。……そうなら俺はこの世界滅ぼすけど?」


うん。

流石気合の入ったレギウスさんだ。

当時の王様たちはガチで怖かったらしいけどね。


まあおかげで私たちは色々煩わしいことなく暮らせている。

魔王討伐でとんでもない大金も報奨金としてもらったしね。


今度お礼しにいかないと。


※※※※※


「ロナリア様、ミリー様がお呼びですが、よろしいでしょうか」


私と俊則が寝ているルミナを眺めていたら、メイド長のドロシーがドアをノックして入ってきた。

この大公爵邸をずっと維持をしていてくれた一人で、50歳くらいの優しい女性だ。

ルルも絵美里も来月出産を控えているから流石に私のお世話をする事が出来なくなっていた。

今この屋敷にはドロシー含め12人の使用人たちが働いてくれている。


「ええ、ありがとうドロシー。俊則、ルミナをお願いね」

「うん、大丈夫だよ。ゆっくりでいいからね」


私はすやすや寝ている宝物をちらりと見てからドロシーに軽く会釈して絵美里のいる部屋へと向かった。


「絵美里、わたし。入っていい?」


ドアをノックしてから声をかける。

流石にいきなり入るのはマナー違反だ。


「どうぞ」


中から声が聞こえ、私はドアを開け部屋に入る。

ゆったりとした服を着て、大きなおなかの絵美里がベッドに腰を掛けていた。


「ごめんなさい舞奈さん。急に呼んで」

「ううん。大丈夫だよ。今さっきルミナ寝たから」

「ふふっ、ルミナちゃん可愛いですもんね」


絵美里は大きなおなかを撫でため息をつく。

うん、わかるよ。

肩凝るし苦しいよね。


絵美里、胸大きいからなおさらだね。


「それでどうしたの?体調悪いなら俊則呼ぶけど」


俊則は今数人同時の転移魔法が使える。

救急車変わりだね。


「ううん。その、ちょっと不安で……この子あまり動かなくて…」


確かに私の時はやたらとお腹の中で動いていた。


でもお母さま曰く

「女の子は動くわね。男の子はあまり動かないわよ?まあ個人差があるのでしょうけれど」

との事らしい。

この前絵美里にも伝えてあるけどね。


「でもお医者様は何も問題ないって言っていたのよね」

「ええ、でも、その……初めてで…ちょっと怖いです」

「ああ、そうだよね……うん。あとで俊則来させるからさ、今夜はいっぱい甘えて」

「!?良いんですか?その、ルミナちゃん……」

「いいのいいの。少し離さないと俊則もうデレデレ過ぎるもん。……一人は不安でしょ。ねっ」

「……ありがとう舞奈さん。……うれしい♡」


相変わらず私も含め絵美里もルルも俊則のことが大好きだ。

流石に絵美里とルルとは今性交はしないけど、私は…その…うん♡


まあ、ね。

いつもちゃんと俊則、絵美里もルルも優しくしているけどたまには独占させてあげたいからね。

……ちょっと私が寂しいけど。

ルミナが生まれてからどうしても俊則は私とルミナと一緒に寝る機会が多くなっていた。


こりゃあルルも不安かもだね。

様子を見に行った方が良いかもしれない。


「じゃあ私俊則に伝えるから失礼するね。ルルの様子も見たいから」

「はい」


私は俊則に伝えてからルルの部屋へといった。

案の定ルルも不安を抱えていた。

よくよく考えればルルはまだ16歳。

日本ならこの年で妊娠するのは少ないもんね。


「ロナリアお姉さま、その、この子、凄く動くんです…あうっ、また……すごく元気♡」

「あっ、本当だ。うん、凄く元気な子だね。ルルも健康だし、パパが勇者だからかな」


私はルルのお腹をさする。

ぐんってお腹の中が動いている。

お手てかな?可愛い♡


「はい。……ロナリアお姉さま?」

「うん?」

「あの……シュラド様、その…えっと……」


顔を赤くしうつむく。

ああ、うん。

そうよね。

傍にいて欲しいよね。


「あのね、さっき絵美里にも言ったんだけど、俊則とさ、一緒に夜過ごして甘えて?今日は絵美里だけど、明日の夜ね」

「!?良いんですか?嬉しい。……えっ、でも、ロナリアお姉さまは……」


ああこの子は本当にいい子だ。

こんな状態なのに私の心配をしてくれる。


「いいのよ。俊則あなた達のことも心から愛しているんだもの。もちろん私もね。だから心配しなくていいからたくさん甘えて?」

「はい。ありがとうございます」


結局またローテーションで俊則は絵美里とルルが出産するまで日替わりで夜を共に過ごすことになった。


俊則と一緒にいるときの絵美里とルル、めっちゃ可愛いのよね。

ちょっと妬ける。


※※※※※


一方転生し、あれから少し成長した大輔は親友の俊則に会いたくて父であるレイナルドにお願いをするため対面していた。


「父上、俊則のところへはいつ行くのですか?」


宙に浮きながら執務室で書類仕事に追われているレイナルドに問いかけるさまは異様だ。


今レイナルドは伯爵位を受爵し、フィナリアル領の領都であるルイコスタの領主邸で執務に追われていた。

書類をサインする手を止めため息交じりに息子へ声をかける。


「ふう、見ての通りだ。しばらくめどが立ちそうもない。何ならお前手伝うか?…元創造神様なんだろ?」

「あの、俺まだ1歳ですけど?……はあ、父上優しいけど仕事には厳しいからな。……一人で行っちゃダメ…」

「リオ」


レイナルドから恐ろしい何かが沸き上がる。

ビクッと体を震わせるリオナード。


「ラナが心配する。却下だ」

「むう……はあ。わかりました」


リオナードはふよふよと浮きながら執務室を後にした。

元々数千年生きた元神様だ。

本当は一人でも問題はないのだが……


「流石にね。……優しい両親を心配させられないからなあ」


独り言ちるリオナード。

突然優しい匂いに包まれる。


「リオ♡……もう、またお父様のところへ行ったのね。たまにはお母様に甘えなくちゃだめよ?ふふっ、おっぱいあげようね」


「い、いや、母上?もう俺、1歳ちょっとだから、もう母乳は…んん♡」

「ほら、美味しい?ふふっ可愛い私のリオ♡」


この世界の結婚は早い。

母のラナはまだ19歳だ。

しかも凄い美人だしガチで可愛い。


もう1歳と3か月になるので母乳は殆ど出ないはずなのだが……

どうやら母であるラナは、スキンシップをお望みのようだ。


女性経験のない大輔は母親とはいえ恥ずかしさと赤子の本能に挟まれ、嬉しいやら恥ずかしいやら……


まあ、苦労していた。


「可愛い私のリオ♡……今度わたくしの実家に行くの。シュラド様に会えるわよ」

「!?」

「ふふっ。だからそれまで我慢してね。三日後に行きますからね」


(やったー、さすが母上。……でも、その、もう、おっぱいはやめてほしい。うう、恥ずかしいよ。……くそっ、でもめっちゃ嬉しいんだよね!?うう…)


大輔の苦悩はまだまだ続くようだ。

まあ幸せの悩みは大歓迎な大輔ではあったのだが。


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