その翌朝。起床してベッドルームから出て来たペトロは、洗濯物を室内干しするユダを見て固まった。
「…………」
「あ。おはよう。ペトロくん」
ユダは朝に相応しい爽やかな笑顔で挨拶をするが、口を開けっ放しのペトロは挨拶なんて耳に入らなかった。
「……パ……」
「ん?」
「パ……」
「パ?」
「オレの……パンツ……!」
ユダはちょうど、ペトロの下着を干そうと手に持っていた。それを見たペトロは、白い頬を赤く染めていた。
「うん。洗濯したから干そうと……。どうかした?」
「だっ……て……!」
(昨日の今日なのに、告られたやつに自分のパンツ触られてる……!)
告白されて、まだ顔を合わせるのも気不味いユダに自分の下着を触られているのが、沸騰しそうなくらい恥ずかしくてたまらなかった。
「き……今日はいい! オレが自分で干す!」
ペトロはユダの手から下着を奪おうとした。
ところがユダは、下着を高々と掲げて取られないようにした。ペトロは手を伸ばすが、約10センチの身長差で僅かに届かない。
「なんで急に遠慮するの」
「いやっ。だって……」
口籠るペトロが赤くなっている様子を見て、ユダは鋭く察する。
「恥ずかしいの? もしかして、意識してる?」
「しっ……」
してないと否定しようとしたが、してなくはないと心の中で正直に認めた。
自分のことを意識して動揺し、こんなに懸命になるかわいいペトロを見られたユダは、朝から特をした気分だ。感情が漏れて、思わずニコニコしてしまう。
「長いハグした仲なのに。洗濯なんていつもしてるんだから、今さらそんなに意識しなくても」
「いいから!」
ペトロはジャンプして奪おうとするが、ユダはこの時間を楽しむように下着をひらひらさせる。
「ハグなんて、挨拶と変わらないよ? それにもう……」
既にしてしまった件を口にしそうになったユダは、急に口を閉じた。
「もうって、何?」
「ううん。何でもない」
ユダは笑顔で誤魔化した。しかしペトロは、言い掛けたことに怪訝の目を向ける。
「何を言い掛けたんだよ。オレに何か隠してるのか?」
「何も」
ユダはササッとペトロの下着やタオルを洗濯ロープに吊るし、洗濯干しを完了した。
「さて。朝ごはん食べに下りようか」
「絶対何か隠してるだろ。何となくわかるぞ!」
「先に行ってるよ。ペトロくんも着替えておいで」
「あとでまた問い質すからな!」
うそぶきかわしたユダは、ペトロの尋問から逃れるように先に部屋を出た。
「危なかったー」
(間接キスしたことは、両思いになるまで隠しておこう)