とある休日。駅前を通りかかると、木村明日香がいた。
明日香を見つけた瞬間、ビクッと体が反応する。眞白だった時、同級生に会うと目をそらすクセがついていたからだ。そんな以前の自分をおかしく思いつつ、改札口の近くいた明日香に声をかけた。
「おはよう、明日香。誰かと待ち合わせ?」
「ゆ、悠真!? そうそう、友達と買い物に行こうと思って。そういや、悠真の家ってこの近くだったよね。声かけられてびっくりした」
私服を着ている明日香を見るのは初めてだ。制服でもお洒落な印象はあったけど、私服はなおさらだった。
「友達って彩奈? にしても、明日香って私服もお洒落だね」
「なっ、なに言ってんの!! 何着てもモデルみたいな人に言われても困るっての。っていうか、今日一緒に行くのは彩奈じゃないよ。小学生の時からの幼馴染。ちなみに、彩奈も幼馴染だけどね」
何故か、明日香と彩奈が幼馴染なのは意外だった。いかにも、高校で見つけた友達同士に見えていたからだ。
「そうなんだ、なんか意外。一緒の高校受けよう、って感じで?」
「そうそう。彩奈が聞いたら怒るかもしんないけど、彩奈は常盤高校は絶対無理って先生に言われてたの。でも絶対、私と一緒の高校いくんだって、めっちゃ頑張ってさ。あの子、そんな頑張れる子に見えないでしょ? でも、頑張って勉強して、受かっちゃったんだよね」
明日香はそう言って、フフフと笑った。そういえば、眞白の時も含めて明日香とじっくり話すのは初めてだ。
「そうなんだ……俺も受験の時はめっちゃ頑張って、ギリギリで合格できたから凄く共感出来るな」
「悠真が頑張ってギリギリ合格!? なんかイメージちがーう」
明日香はそう言ってまた笑った。
「イメージっていえば、眞白って最近凄く変わったんでしょ? 俺が転校してくるまでは、結構大人しい感じだったって」
「眞白ねぇ……確かに最近、変わったよね。でも、それまでは眞白を意識したことなかったから、言われてみればって感じだけど。まあ高校生だし、イメージ変わる子なんて、いくらでもいるんじゃない? ——あ、友達だ! じゃまた、月曜日ね!」
明日香は笑顔でそう言うと、ホームから降りてきた友人に向けて「おーい」と手を降った。
私のことなんて意識したことなかったか……そりゃ、当然だよね。私だって、クラスメイトの男女全員を意識してたかっていうと、そんなこと無かったもの。