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3章 プロローグ

────「早く!!そっち持って!」


───「まずいぞ!瞳孔が開いてる……!」


──「いいから早く!治療用ポッドに運んで!!」


─「アイ!しっかり!アイ!!」



………Sir?


…………私


……壊れたの?


嫌……


私はもっとあなたと……


─────誰?


──藍さん?


────違う……けど……


──懐かしい声……


──ここは何処……?


────眩しい


──ァィ


───誰?


────私を呼ぶのは?



──今日からあなたの名前はアイ、よ!


眩む視界が開ける──


目の前には深い海の様な青──



「オリビア、喜んでくれたかね?」


「うん!ありがとう、お父様!」


青く見えたのはまだ幼い少女の瞳。


オリビアと呼ばれた少女ともう一人はその父親だろうか。


でもなぜ私の名前を──?


アイは混乱する頭を整理しようとする。


すると違和感に気づく……


手足がない……?


手足だけではない、頭も身体も……


アイはこれはシミュレータなのだと自分を納得させようとする。


HUDも付けていない事は心の奥に閉まった。


目の前には青い透明なガラス窓が張られている。


まるで囚われた小鳥の様に身動きが取れない。


「その青い石を押してごらん」

少女に父親が告げる。


少女の指が自分の前のガラス窓を押すと窓が開いた様に音声がクリアになる。


「あなた、わたしの友達になってくれる?」


少女が私にそう語りかける。


何故か応えなくては、という気にさせられる。


「あなたの名前は?」

ただ今の状況を知る手掛かりが欲しくて質問で返してしまう。


「わたし?……わたしはオリビア……!オリビア・ズーよ」

少女は満面の笑みでそう答える。


オリビア……!

Sirの言っていた大切な友達と同じ名前……

でも思ったより幼い……?

芽衣と同じくらいの年齢……


……考えても仕方ない、アイはこれは訓練だと割り切って考える事に切り替える。


「ええ、いいわ、お友達になりましょう……!

よろしくね、オリビア」


「うん!よろしく……アイ!」

彼女がそう言って私を勢いよく持ち上げる……!


何が起こったのか理解が追いつかない。

あたりの景色が目まぐるしく変わる……


ふと、鏡が目に入り自身の目を疑う……


少女が手に持っているのは青い宝石のペンダント……


「私……ペンダントになったの……?」

不安と驚きと焦りで頭が真っ白になる。


「アイ……ずっと一緒にいてねっ!」


────その無垢な瞳にアイは今は無理に思考する事を止めた……

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