素足に、ふくらはぎが隠れる程度の長さの、簡略版のトーガのようにたっぷりとした白い布地をまとっている。肌触りのいい素材の紗を使った、と聞いた。
何枚か重なっているのに元々が薄く
「あの…アキト様?」
「……なんて?」
「え。…これで合ってますか? 服」
「いや、それじゃなくて。今、なんて呼んだ?」
「ああ。アキト様?」
どうしてそうなる。
一応、絵にサインは入れる。本名からとって、というかほとんどそのままに、「AKITO」。
「読み方、違いました?」
「いや。いや、合ってるんだけど、様つけなくていいから…呼び捨てでいいよ…」
「…アキトさん?」
「うん。それでよろしく」
最初からこうすれば良かった。
そう言えば前にも、いきなり「ご主人様」と呼んだ人がいた。それに、ずっと敬語だか丁寧語だかで
四週間限りの雇い主とはいえ、
「次はどうすればいいですか?」
言いながら、ちらりと
金属製の本格的なもので、不安にもなるだろう。
疲れた気分を振り払って、
枷を
精一杯、穏やかな声を出す。
「手と足にこれを充ててから嵌めてもらって、このあたりに
「ええと…監禁されてる感じですか?」
「うん。…ごめんね」
「いえ、大丈夫です。本気で監禁されかかった時に比べれば全然」
「…それ、比較対象間違えてると思うな…。無事で良かったね…」
「はい」
見かけによらず
見える限りでは傷跡が残っているようなこともないけど、本当に、無事で良かった。
「わ。…固定されてるんですね」
「うん。あ、自分じゃ無理だよね。やるから、そこに跪いてもらえる? そう、そのあたり」
めり込んでよろけるほどの厚みはないものの、ある程度は床の硬さを緩和してくれるシートとラグ。
それでも、時間が
自分で設置しておいて、気まずさが強くなる。
それでも、皮の上から
腕は、天井の
「痛くない?」
「大丈夫で…あ」
「え」
少年は、真っ黒な瞳で僕を見上げた。
「あの…エネマグラ…」
「うん?」
「
「あー…」
変態でごめん、と、言ってしまえば謝るくらいならという話になるので
こんな体勢で使わせるのも問題だけど、そりゃあ入れて歩くなんて危ないに決まってる。今までの人は我慢してくれていたんだろうか。
「ごめん、考えてなかったそうだよね。えーっと…僕が挿れてもいい?」
え、と言うように口は開いたけど、声は出なかった。ただ、瞳が黒々とこちらをのぞいて来る。
「…アキトさんが、いやじゃないなら…」
「全然」
さてどこに、と見ると、服の
一度床に触れたものだし、軽く
向かい合うように、
ちゃんと食べてるんだろうか。
「体重、
「っ」
声というよりは、強い吐息。耳にかかって、少しくすぐったい。
一瞬
当たり前で、そういう人を選んでいるんだから。
変態そのものだと思いつつも、性具を使うと
一度中に触れてから、ゆっくりと器具を押し挿れる。長い吐息は、やっぱりくすぐったかった。
少し待ってからそっと身体を離すと、うるんだ目を向けられた。
「ありがとうございます」
「いや…こちらこそ。よろしく。痛かったりしんどくなったら言ってね。あー…すぐには気付けないかも知れないけど、聞こえてるはずだから、なるべく早く休憩なり中断なりするようにするから」
「大丈夫です」
そこに浮かんだ笑みはどう見てもプロのものだった。
全体を見るために距離を置いて、スケッチブックを開く。
鉛筆を手にしたところで、開けた窓から弱く風が吹き込んだ。吐息よりも、さらりとしている。
「寒くない? 窓、閉めようか? 暖房も入れられるよ」
「大丈夫です。風、気持ちいいですよ」
「…そうだね」
そう言えば、そうだった。昼も過ぎて、今が一番暑いくらいの時間帯だ。それなのに、どうして寒いと思ったんだろう。
首を
慣れた鉛筆の手触りと、
全てを写し取りたいと、思った。