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青龍10

校舎裏。女生徒が待ち人を今か今かと待っていた。早く来て欲しいような、それとも来て欲しくないような、複雑な気持ちが読み取れる。


緊張に緊張が重なって、心臓の音が周囲にも聞こえてきそうなほどだった。


足音が聞こえ、待ち人がやってくる。

女生徒が呼び出したのは、男性だった。


「先輩――」女生徒のか細い声が響く。


「ずっと…ずっと、好きでした…!」とても緊張して、恥ずかしくて、たまらないのだろう、顔が真っ赤だ。


「お願いです…お付き合いしてください!」お辞儀する女生徒。

「はい、失礼しまーす」その横で七輪をセットする私。ビニール袋から出てくるお肉。今日はビールも付いちゃうぞ。


女生徒、先輩、私。三人の間に穏やかな沈黙が駆け抜ける。


恥ずかしくてたまらない様子を示した慣用句、「顔から火が出る」が実は慣用句でも何でもなく、純粋に炎のエネルギーとして取り出せることが分かった昨今。研究に研究を重ねることにより、告白をしようとする女生徒の顔から出る熱を利用したお肉が極上の焼き上がりになることを最近突き止めた。中までしっかり火を入れつつもその肉汁を完璧に逃さないレアとミディアムの中間。噛んだ瞬間、そのあまりの柔らかさと美味しさが口の中に広がる新世界は、一度体験したものの心を捉えて離さない。


あ、君たち。別にこっち注目しなくていいです。勝手に告白でも何でもしておいてください。おじさん、君たちの関係より、この肉にしか興味ないんで。


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