全世界株式という投資信託商品を、コツコツと買っている。
全世界株式とは、簡単に言えば、世界中の優良企業の株式を詰め合わせた商品。
今、私は中年だが、この商品を毎月積み立てて購入(投資)し、数十年先の老後に少しずつ取り崩す予定。
投資なので当然、儲けを狙う。購入した値段よりも多くの金額で現金化できるようになれば、少しは老後も楽にはなるだろうとの算段を立てた。
さて、全世界株式を購入する、ということはどういうことか。
これはつまり、「世界経済が発展する」、強いて言うならば「地球規模で皆が経済的に豊かになる」ことにベットするということだ。
歴史的に見て、世界は様々な金融危機(世界恐々、ITバブル崩壊、コロナショックなど)を経験しても全て乗り越えてきた。それは、株価の推移が証明している。
つまり、変動あれど、この商品を買っておけばほぼ間違いは無い。多少楽観的かもしれないが、長期的に見たら元本割れの心配もほぼないだろう。未来に向けた準備だと思って、現在も積立を続けている。
そう決心して25年の月日が流れた。
私は今、ボロ布をまとって炊き出しの列に並んでいる。
まさか、あの頃、こんな未来になるなんて想像だにしていなかった。
私の資産、つまりお金の価値は紙くず同然となり、貨幣としての効力を失った。
それに関してはちょっと後悔はしている。あのとき、頑張って投資していたお金を別の何かに使っていたら、人生少しは違っていたのだろうかと思わなくもない。
しかし、私は、今、それほど不幸を感じてはいない。
どうしてか。
周囲のみんな、かつて日本だった国のみんな、そしてこの星に住んでいるみんな、みんなみんな同じ状況だからだ。
今日は月曜。この日の炊き出しのお味噌汁は絶品なので、とても楽しみだ。
私の所属するグループも持ち回りの食事当番制だが、月曜担当は腕が良いし、良い食品を入手できるのだろう。
どこのグループから強奪してきた食料なのかについては、一切問わないこと。それも、我々の世界の大切なルールの一つ。
【ポスト・アポカリプス】