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青龍22

全世界株式という投資信託商品を、コツコツと買っている。


全世界株式とは、簡単に言えば、世界中の優良企業の株式を詰め合わせた商品。

今、私は中年だが、この商品を毎月積み立てて購入(投資)し、数十年先の老後に少しずつ取り崩す予定。


投資なので当然、儲けを狙う。購入した値段よりも多くの金額で現金化できるようになれば、少しは老後も楽にはなるだろうとの算段を立てた。


さて、全世界株式を購入する、ということはどういうことか。

これはつまり、「世界経済が発展する」、強いて言うならば「地球規模で皆が経済的に豊かになる」ことにベットするということだ。

歴史的に見て、世界は様々な金融危機(世界恐々、ITバブル崩壊、コロナショックなど)を経験しても全て乗り越えてきた。それは、株価の推移が証明している。


つまり、変動あれど、この商品を買っておけばほぼ間違いは無い。多少楽観的かもしれないが、長期的に見たら元本割れの心配もほぼないだろう。未来に向けた準備だと思って、現在も積立を続けている。


そう決心して25年の月日が流れた。


私は今、ボロ布をまとって炊き出しの列に並んでいる。


まさか、あの頃、こんな未来になるなんて想像だにしていなかった。


私の資産、つまりお金の価値は紙くず同然となり、貨幣としての効力を失った。

それに関してはちょっと後悔はしている。あのとき、頑張って投資していたお金を別の何かに使っていたら、人生少しは違っていたのだろうかと思わなくもない。


しかし、私は、今、それほど不幸を感じてはいない。


どうしてか。

周囲のみんな、かつて日本だった国のみんな、そしてこの星に住んでいるみんな、みんなみんな同じ状況だからだ。


今日は月曜。この日の炊き出しのお味噌汁は絶品なので、とても楽しみだ。

私の所属するグループも持ち回りの食事当番制だが、月曜担当は腕が良いし、良い食品を入手できるのだろう。


どこのグループから強奪してきた食料なのかについては、一切問わないこと。それも、我々の世界の大切なルールの一つ。


【ポスト・アポカリプス】

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