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青龍43

ドッペルゲンガーをご存じだろうか。自分と瓜二つの人間、いわゆる“そっくりさん”が現れるという現象を指す。都市伝説や怪異、怪談の中で語られることも多い。


諸説あるようだが、自分と瓜二つの人に出会ってしまうと、そのどちらかが死ぬ――そんな話があるらしい。これも、色んなバージョンがあるようだ。出会ったら自身が乗っ取られてしまう場合もあれば、二人出会ってしまうと死んでしまうといったものまで。さすが都市伝説といったところか。噂が噂を呼び、情報が様々なかたちで拡散していくのだろう。


ただ、ドッペルゲンガーと出会うと本当に人は死んでしまうのか。この説には私は異を唱えたい。


なぜなら、これからドッペルゲンガーとの飲み会が新橋であるからだ。


出会いは本当に偶然だった。旧知の友と飲み屋街で飲んでいたら、遠くの席に座っている私と目が合ってしまったのだ。


一目で私だと分かった。そりゃそうだ。だってそっくりさん、というより、もはや私そのものが座っているのだから。


もしやと思い、私は立ち上がって辺りを見渡した。


同じように辺りを見渡している私があと二人いた。


こうしてドッペルゲンガー四名、一気に揃ってしまったのだ。


一応、みんな、事情は察したらしい。なんとは無しに、ご挨拶し、名刺交換。

そして連絡先を交換し、なんとなく、半年に一回くらいのペースで集まりましょうと飲み会を開くようになった。


そんな飲み会も早10回目になろうとしている。よくもまぁ、続いたもんだ。

おかげさまで今のところ誰一人死んでいない。


面白いもので、全員そっくりではあるのだが、うち一名は婿養子に入ったのか名字が違ったし(名前は一緒)、今の仕事の業種もバラバラだった。結婚している人もいれば、未婚の人もいるし、彼女持ちな人もいれば、そうじゃない人もいる。


趣味嗜好もだいぶ違う。最初こそみんなビールを頼むが、その後頼む酒の種類は皆バラバラだし、唐揚げにレモンをかけるのが許せないやつもいれば、大量にかけないと気がすまないやつもいる。現在の近況を聴いてみても、自分には全く想像付かないことばかり。


いくらそっくりであろうと、みんな、それぞれの人生があるということか。


にもかかわらず、結婚相手や彼女、好きなタイプ──全員が揃いも揃って巨乳好きなのである。なんでここは似るんだよ、と毎回皆で空を仰ぐ。さすがはドッペルゲンガーというべきか、いや、そういう問題じゃないのかもしれない。よりによってここが似るのかぁー、という謎の気持ち。


改めて、“自分”というもののカルマを考えさせられる。


【ドッペルゲンガー】

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