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青龍50

このバーで飲むとき、締めの一杯はいつも決まっている。


「マスター、マルガリータをひとつ」


「かしこまりました」


定番の注文だが、マスターは何も言わない。黙々と仕事をこなす、ここのマスターが、私は好きだ。


テキーラ、トリプルセック(リキュール)、ライムジュースと塩少々を取り出すマスター。

手際良くそれらをシェイカーに混ぜていく。


そして、シェイカーを手に取り――シェイク。


シェイク。


シェイク。


シェイク。


キィエエェェッという、マスターの甲高いシャウト。


全力でシェイカーを窓ガラスに向かって投げつけるマスター。


ド派手に吹き飛ぶ窓ガラス。



私は手に持っていたスピードガンの数値をチェックする。152km/h。さすがはマスター。かなりのご高齢のはずだが、まったく肩が衰えていない。日々の鍛錬の賜物なのだろう。


私はお会計をし、飛び散ったガラスを避けつつ家路に着く。

今日も今日とて、良いものを見ることができた。明日も頑張ろう。


投擲とうてき

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