目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

青龍60

いつもなら、既におむかえバスの運転席に座って準備しているマチダさんが、今日は園内事務室の待機場所で、まだボーっと座っていた。


「マチダさん、おはようございます…。あれ、おむかえバス大丈夫ですか?」


私は聞く。本日は先生の私とマチダさんのタッグで園児たちを迎えに回るからだ。


「あぁ、おはようございます…ミドリ先生…。今日はね、お迎えないよ。多分幼稚園も休み」


「えぇ…!?何かあったんですか?」


「あれらしい、いつもの。園児たちのストライキ」


ストライキ。労働者が賃上げや労働条件の改善を求めて行う抗議行動。


「そうですか…もうそんな時期なんですね」


「受ける方も受ける方だけど、するほうも大変だろうなぁ、あれ」


「ちなみに園児たちの要求事項、今年は何かあるんですか?」


「お昼寝時間の延長らしい」


そもそもストライキは、企業対労働者(労働組合)の構図から発生するものであり、賃金発生のない園児たちは厳密には実施不可能ではある。

しかし、昨今の風潮か、謎のプロレタリアート意識に目覚める園児たちが急増しているのもまた事実。


我が園は、一応、自立の一過程として、肯定的に捉えてはいる。


【春闘】

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?