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第五十一話 side:U 説明と続きの観光と

「俺、男の人だけが好きなわけではないので!先輩によく似た美人のお姉さんでも全然いけると思います・・・!」

「ちょ、ゆうくん?!」


やっべぇ、間違えた。これ、違った・・・!

不穏な空気の中、それを打ち払うべく俺が声にしたのは完全にチョイスミスな台詞だった。嗣にぃが泣きそうな顔で悲鳴をあげる。

いや、もう動揺しているわけで!だって、目の前で漸く手に入れた嗣にぃが殺されそうになっている。まずい、まずい!!多分だが、桐月と同じ力を持っていそうな先輩のお家ならば、隠蔽工作も完璧にできそうな気がする・・・。

いや、その人も桐月唯一の後継者なんだけどな?!

あたふたとする俺を、先輩は優しい目で見ながら、


「そうか。美しくてふさわしい相手を一族内から見つけるから安心していい。さて、行け三成!」

「任せろ」


そう言い、勢いよく大濠さんが立った。まずい、殺人事件が発生してしまう。ここ、見た目は子供で頭脳は大人な探偵とかじっちゃんの名にかけた高校生とかが活躍する世界じゃない・・・!!俺は急いで立ちあがり、大濠さんの前に立つ。嗣にぃは嗣にぃで、大濠さんの腕を引っ張った。


「ええい、離せ、桐月!貴様!覚悟を決めないか!」

「いやだからね?!不倫に見えるけど不倫じゃないんだよ!!あと、斬られる覚悟って何だい?!」

「違うんですって、本当に、その!!そうそう!不倫してないです!!大丈夫です!理由が!」


俺たちが交互に叫んだことに、


「「どういうことだ?」」


大濠さんと先輩がシンクロして問いかけてくる。

うん、先輩たちも大概、相思相愛だな?!想い通じ合ってる感じする!


「わかった、話を聞こう」


先輩が頷くと、大濠さんも頷いて座った。

これどこまで話すべきなんだろうか。嗣にぃも俺と同じで、困惑した顔つきだ。

とりあえず、端折りながら支障がない程度で説明をしなきゃ・・・!!



【悲報】全部吐かされた【ステレオでの詰問責めきつい】

いや、もう、尋問だった。途中でカツ丼を頼むべきか迷ったほどに。

俺への心配と、嗣にぃへの不審からだけど、もう一切合切話すしかなかった。


「では、あの花嫁も春見君だったのか?全然わからなかったな・・・」

「あー、と。つけ毛とか化粧とか色々としていたので・・・」

「なるほど。人の顔を覚えるのは苦手でもないが・・・わからないものだな」

「俺、下を向いていたりもしたので・・・」


感心したように、大濠さんが言うと、先輩がアイスコーヒーを飲みながら、


「俺もそれは見てみたかったな。さぞや可愛いだろう?」


そんな風に言えば、


「それは、もう。ゆうくんなので」


嗣にぃが鼻高げに頷く。いやいやいや、なんだこれ。本当さぁ・・・。

しかし、と先輩は続けた。


「今は相思相愛だから問題はないにしろ、結婚相手の弟に劣情を催していたのは如何なものだろうか・・・?」


鋭い目つきで、先輩が嗣にぃを見遣る。怒った美人は迫力が桁違いだ。

確かに、と大濠さんも頷くと、嗣にぃが大きくため息を吐く。

つか、劣情って・・・。まあ確かに、最初っから嗣にぃは近かったし、やたらと触ってきたけども!


「いや、それはね・・・確かに・・・まあ、成り行きではあったし、僕は随分と不甲斐ないけれど、それで漸く気付けた部分もあって・・・」

「終わりよければすべてよし、ということも物事にはあるのは確かだけれどね。まあ・・・その場所に立たなければ分からないこともある、か。そこの三成のように」


大濠さんが話を振られて目を白黒させる。


「俺が、何だ?」

「お前、俺に好意を抱いていた癖に、見合いをしようとしたこと・・・俺は忘れてやらないからね?」


腕を組みつつ、先輩は微笑んだ。

今度は大濠さんがあたふたとして、嗣にぃが肩を叩いている。先輩は、はは、と笑って俺の耳元に顔を近づけた。


「俺たちの相手、随分と曲者のようだよ?」


そっと呟く。確かにそうかもしれないな、と俺も笑う。そんな俺たちを見て、大濠さんが「近い!」とツッコミを入れてきた。先輩を肩を竦めて、今更、と笑う。


「しかし、だ。その・・・春見のお姉さんと桐月さんの籍はどうなっているんだ?」

「籍・・・」

「そう、大事なところだろう?」


そういえば、と俺は今更ながらに思い至る。思い起こすと、その頃の俺は唯一許せるあさとの結婚と言っても、長年好きだった嗣にぃの結婚はやはり辛くて目を逸らし続けていたのだと思う。もしかすると両家での食事会の時とかの、話していたかもしれないが、さっぱりと覚えていない。あさは、「春見あさ」なのか「桐月あさ」なのか・・・どっちなんだろう?

嗣にぃを見ると俺に向けて、大丈夫だよ、小さく言った。


「入籍は結婚式の後に、というのがゆうくんのお姉さんの希望だったからね。入籍はまだしていないよ」


え、それって。いや、嬉しいっちゃ嬉しいけど。あさのやつ・・・。


「「逃げる気しかないな」」


また先輩と大濠さんとの声が重なった。俺もそう思った。嗣にぃは何とも複雑そうな表情で「仰る通りで・・・」と答えるものだから、俺はまた笑ってしまった。



それから。

先輩と大濠さんには、どうにか納得して貰えたようで話し合いはそこまでとなり、先輩の案内で城見物に戻る。ちなみに4人でだ。先輩が見聞を披露するたびに、大濠さんが得意げになるので、面白い。最終的には「お前の知識じゃないだろうが」と先輩に蹴られていたが。

そして今日知ったのは、先輩も大濠さんも剣道と居合の有段者ということだ。何でも谷家の男子は、極める極めないかは兎も角として剣の道は必須らしく・・・俺、一般家庭でよかった・・・絶対に無理だ。

頭も良くて、顔も良くて、身体能力も高くて・・・て、先輩にしろ、大濠さんにしろ、嗣にぃにしろ、皆、化け物だなぁ・・・と心でだけ思った。

そうやって特にその後は問題が起こることもなく観光も終わり、先輩とはそこで別れて、今は漸くマンションに着いたところだーーうっかりと俺は帰りも先輩の車に乗りそうになり、大濠さんと嗣にぃに「違うだろう?!」と叫ばれたがーー。


「ゆうくん、今日は、ごめんね?」


玄関の扉が閉まるなり、嗣にぃが後ろから抱きしめてくる。

まあ、色々とありはしたが・・・。


「あー・・・別にいいよ。楽しかったし。なんか、その・・・嗣にぃの心配も、今更ながらにわかった気もするし。嗣にぃの首もあるしね」


ふふ、と俺が笑うと嗣にぃは俺の耳元に口付けてくる。擽ったさに身を捩っていると、嗣にぃが、


「ところでね?ゆうくん・・・谷くんによく似た美人のお姉さんでも全然いける、ってどういうこと・・・?」


謝ってきた声を下げて、俺をぎゅっと抱きしめた。

オッフ・・・しまった。そんなことを言ったな、俺な・・・。


「いや、えっと、その、あの、えっと・・・」


どう言い訳をしていいかも分からず。俺がしどろもどろになっていると、嗣にぃの手がゆるゆると動いて、服の裾から直に腹を触ってきた。

ちょ、おい?!?!慌てて俺はその手を阻止しようとするも、嗣にぃの手が動く方が早く、指先が胸の突起上を引っ掻く。


「ひぁっ」


嗣にぃのおかげーーってもんじゃないんだけど・・・ーーですっかりと敏感になった俺の身体はたったそれだけでも、声をあげるくらいに快感を捉えるようになってしまっていた。もう一度、俺は身を捩るが嗣にぃの腕はビクともしない。


「あ、嗣にぃ・・・やぁ・・・」

「いやぁ・・・たまに思うんだけど、ゆうくん、ちょっとさぁ・・・僕以外に気が行きすぎだと思うんだよね・・・」

「そ、そんなことないだろ・・・?!んっ、あ・・・」


俺の返答に、嗣にぃの指が突起の上をもう一度引っ掻き、反応し始め場所を摘む。

後ろで、そうかなぁ、と不満げに呟きながら、今度は耳朶を噛まれる。


「谷くんのことも大好きだしねぇ。いやいや、いいと思うよ。友人って大事だもんね。でもちょっと近いし・・・なので、ね。僕、ゆうくんには・・・ちょっと調教が必要だと思うんだよね」

「ちょ、調教・・・?!え、なにそれっ・・・嗣にぃ、ちょ、やめっ・・・ふぁ」


空恐ろしい単語に目を瞬かせたが、くりくりと指先で乳首を捏ねられると、どうしても感じてしまう俺は、息を喘がせてしまう。

これ、絶対のダメな調教の方だろ?!そもそも、どうあっても調教ってダメだろ?!?!


「冗談でも、他の人でも大丈夫、なんて言えないような身体にしてあげないとね?」

「やぁ、あ、んっ・・・・・・!」


今一度、嗣にぃの指先で強く乳首を摘まれて、俺は極々軽くではあるが、そこだけの刺激で達してしまい、足が震える。・・・これ、もう結構やばいと思う、俺。結構やばいと思うよ・・・?!これで他の人と、と言われても無理だろ?!

けれど手際の良さが天下一品の嗣にぃにより、素早く身体の向きは変えられて、抗議をしようとした俺の口は嗣にぃによって塞がれた。キスの合間に嗣にぃが、


「たぁくさん、可愛がってあげるからね、奥さん」


と呟く。朝から観光だなんだしてこの体力・・・!!凄まじい、としか言えず、諦めて俺は身体から力を抜く。

ちなみにだが、お気遣い万全な嗣にぃからシャワーのサービスもありましたよ、と。もちろん、中も洗われた・・・・・・。んあんっん。

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