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第五十二話 side:H 眼鏡と指示棒と

「おお、逃げられ。早いな」


昨日の疲れをゆうくんでたっぷりと癒してから、出社すると、先にオフィスに居た大濠くんにそんな風に声をかけられた。僕は苦笑いをしながら、おはよう、と返す。


「大濠くん、そんなキャラだっけ?」

「いやいや。同期で入社して以来、何事もスマートにこなしてきた桐月久嗣が、花嫁に逃げられたなんてこの上なく愉快な話があるか?」


大濠くんがにやっと浮かべた笑みは、それはそれは人が悪そうなものだった。

・・・これ、当分弄られるのではないだろうか・・・厄介な人間にバレたもんだ、と溜息を吐きながら自分の席へと座る。

まあ、かと言って彼の口が軽いわけじゃないことくらいは理解しているので、そこは安堵・・・・・・いや、飲んだときは不味いな?大濠くんは酔った時は色々とすっ飛ばすし。まあ、誤魔化しようはいくらでもあるかもしれないが、不安の種が少ないにこしたことはない。飲む時は、止めよう。谷くんにメッセージを送ってでも。


「そういう君は?谷くんとは大丈夫だったのかい?」


僕がそう振ると、大濠くんが笑みを消して遠い目をした。


「・・・散々だった・・・・・・全身が痛い・・・・・・」

「え、怖・・・君達、どんだけ激しくやりあうのさ・・・」


谷くんは、美人好きなゆうくんが懐くほどの容姿ではあるがーーまあ、容姿だけで懐いているわけじゃないけれどーー苛烈さも人一倍だと言うのは昨日の飛び蹴りから始まり、僕を本気で葬ろうとしたことで知れたことではあるが・・・いやぁ、よく大濠くんも付き合えるなぁ・・・しかしながら昨日の同調ぶりを見るに、お似合いではある。

僕達がそんな会話をしている時に、


「え、なになに?朝から猥談?おっはよーん」


ひょこ、と治くんが現れた。おはよう、と声をかける。


「まさか。大濠くんと恋人さんの喧嘩の話だよ」

「あー、美しいんだ・・・と三成が繰り返す」

「いや、その物真似似過ぎてて吹き出すからやめて・・・ああ、でも確かに凄く美人さんだよ。ねぇ、大濠くん」


隣の大濠くんを見ると少し照れくさい表情を浮かべて、まあな、と一言だけ返す。恋人を褒められると大濠くんも嬉しいらしい。

まあ、ね。現代日本では男女でのカップルがマジョリティであり、男同士はまだまだマイノリティだ。

色々と意見が変わってきたといっても、実際の社会はそう変化がない。未だに性的嗜好での差別なんてありきたりに溢れている。生きていくためには社会的地位を維持しないといけない僕らは、あまり恋人を大っぴらに紹介ができないのが辛いところだ。


「えっ、嗣は三成の彼女を見たのか?!」

「偶然だけどね」

「えーなんだよ!俺も見たいんだけど!!」


俺にも見せろ、と言いながら治くんが大濠くんの肩をバシリ、と叩く。すると大濠くんは呻きながら、デスクに突っ伏した。

治くんがぎょっとして、大濠くんと僕を見る。


「え、なに・・・俺、そんな強く叩いてないんだけど?!」

「ああ、いや喧嘩・・・違うな?粛清?を受けたみたいなんで・・・」

「うっわ、何したらこんな一発で蹲る程の傷を・・・こっわ。彼女、こっわ・・・俺、暴力振るわない子を絶対選ぶわ・・・」


大の大人がここまでなっている現状に、治くんは若干引いているようだ。

のろのろと身体を上げながら、大濠くんが息を吐く。


「ちょっと勝気なだけだ・・・。で?光川は何をしにこっちに来たんだ?お前も油を売りに来たわけじゃないだろう?」


ああ!と治くんは思い出したように、紙束を大濠くんへと手渡す。

しかし、勝気、で済む話だろうか・・・本人がそれでいいならいいけれども。


「デザイン案の草稿。二人でチェックしてから俺にリターンで。んで、嗣にコレをやろーかと」


言いながら、僕の顔へと眼鏡をかけてきた。視界に変わりがないことから、度数は入ってないようだ。


「え、どしたの?これ」

「いやさーファッション眼鏡で買ったのはいいけど、どーにも似合わなくて。三成は自前のがあるしさ。なら似合いそうなのは嗣かね、と。いいんじゃね?似合うじゃん。なー三成」


大濠くんは書類に目を通しながら、ちらっと僕を見遣ってくる。


「まあ、悪くはないんじゃないか?」

「エリートサラリーマンみたいじゃーん。嫁さんも喜ぶかもよ?」

「え、奥さんが・・・喜ぶかなぁ・・・」


そう言われると浮かれてしまうのが、ゆうくんにベタ惚れな僕だ。

今朝も出る前に僕のキスにとろとろになった可愛い顔を思い出してしまい、ニヤけてしまう。お熱いこって、と治くんが揶揄るように笑った。



結局、治くんがかけてくれた眼鏡は終業までそのままで、帰りの現在もそのままである。『嫁さんも喜ぶかもよ』という治くんの何気ない一言にのせられっぱなしで、ウキウキと玄関を潜ると、僕の帰りに気付いたゆうくんがリビングから足早に出てきた。


「おかえりなさい、嗣にぃ。・・・って、それ、どしたの?」


僕の眼鏡に早速気付いて、指を差してくる。


「同僚に貰ってね。どう?似合うかな?」


ゆうくんは、一つ頷いてから笑みを浮かべる。ーー最高に可愛い。

目の前にいるゆうくんの手を引いて、抱きしめた。ーーああ、もう、本当に可愛い。


「うん。いつもとは違って・・・こう、先生みたいだね?桐月先生だ」


僕の顔を見上げながら、ゆうくんの指先がそっと眼鏡のフレームを撫でる。

桐月先生・・・えええ、桐月先生?!?!?!

僕の緩い頭が、パーン、と弾けた。いいねそれ!いいねぇ、それ!

先生なんてワードがでたら、そりゃもう、やるしかない。やるしかないでしょう・・・!


「ゆうくん」

「うん?」

「制服に着替えよう?」



「桐月先生、本当に馬鹿だと思う・・・」


なんて顔を赤くして僕を罵りながらも、ちゃんと制服を着てくれるあたり、ゆうくんは本当に素晴らしい。

僕に対する呼び名もいつもの『嗣にぃ』から『桐月先生』に変えてくるあたりも、実に良い。

ちなみにゆうくんが纏っているのは女子制服であるーーブレザータイプの上着に、スカートで首元には朱色のリボンだーー。ちょっと前に購入していた僕は、本当に馬鹿だと思うが、最高に可愛い。

たまに僕を慮って女装をするゆうくんだが、足を隠すためにロングスカートが多い。しかし今日は膝上の短いものでスカートの裾を手で押さえる姿が萌える。


「先生を馬鹿だなんて・・・悪い子だね?」


ソファに座る僕の前へと、ゆうくんが立つ。僕が指示棒を胸ポケットから出すと、ゆうくんが怪訝そうな目でそれを見た。

この指示棒、会社でレーザーポインターに不具合がある際に使うものだが、まさかこんな用途があるとは。

それを伸ばして、ゆうくんの抑えるスカートの裾を少しだけ押し上げる。


「あっ・・・ちょ、桐月先生っ・・・」

「ちょっとスカートが短いかな?上も検査しないとね。ブレザーのボタンを外してごらん?」


ゆうくんは困惑しつつも、ブレザーのボタンを外す。僕は指示棒を使ってブレザーの下、ブラウスの上をそれで辿った。胸元あたりまでいくと、その身体がが、ピクリと震えた。


「どうしたんだい?」

「あ、なんでも・・・・・・っ」

「そう?」


赤くなって俯くゆうくんに、僕はわざとらしく首を傾げなら、棒の先で胸の突起があるであろう場所をゆっくりと撫でる。


「や、ぅ・・・・・・」


少しの刺激で、ゆうくんのそこは形を露わになる。ブラウスを押し上げている部分を棒の先で突くと、身を捩らせた。どうしたの?ともう一度聞くと、俯いたまま唇を噛む。


「んっ・・・あ、やだ・・・先生・・・」


少しの間、そうして弱い刺激を続けていると焦れたゆうくんが、首を横に振って僕へと熱の入り始めた眼差しを向けてきた。僕はにっこりとした笑みで返す。


「ここに何かあるのかな?」


乳首の上を引っ掻くように、棒先を滑らせるとゆうくんが息を呑む。僕を見つめる目に困ったようなものを混じらせながらも、おずおずと口を開いた。


「あ、棒があたって・・・っ、んっ・・・」

「うん、それで?」

「そ、それで・・・・・・ぁっ・・・」


ゆっくりとゆっくりと、突起物の周囲を棒先で円を描くように辿らせて、たまに突起の上を擦ると、ゆうくんは堪らないようにスカートの裾を握りしめた。既に耳まで真っ赤で、息も浅い。


「せ、先生・・・っ、も、やだ・・・っ・・・」


我慢できなくなったのか、ゆうくんは声をあげた。棒先で乳首を擦り、つん、と突いてから一旦離す。


「春見くんのここ、膨れてるね?自分で触って見せてごらん?」


ゆうくんは僕の言葉に、再度息を呑んだ。それでも刺激欲しさに、震える両手の指先を自分の乳首へと持っていく。片方はまだ触っていないが、そちらは刺激を与えずとも、既に立ち上がっているようだった。


「あっ・・・やぁ、先生・・・っあ・・・」


僕の前で、服の上から自身の乳首に触れる。指先で突起を摘みながら、弄っている。


「強く摘んでごらん?いつもあしてあげてるよね?」


乳首を弄るゆうくんの指先へと指示棒を伸ばして、とん、と触れる。ゆうくんは一度身体を震わせてから、僕が言うままに、両の乳首を摘み上げた。


「ひぅっ・・・!」


軽く達したのか、ゆうくんの方がひくひくと揺れるのが見て取れた。指示棒を下ろして、スカートの裾を捲る。


「あっ・・・だめぇ・・・っ」


達したばかりのゆうくんは反応が一歩遅れてしまい、否定の声を出したのは、スカートが捲られた後だった。プリーツスカートの下は、女の子用の水色と白の縞パンだった。男性用の下着に比べて面積の少ない布の中で、ゆうくんのものが反応している。

ああああああああああ、確かに一緒に用意したね!僕ね!律儀に着ちゃうところが、もう・・・ゆうくん、ブラヴォー!!

スタンディングオベーションを送りたいぐらいだ。尤も、僕の僕は既にスタンディングではあるけれどね!


「あれ?おかしいね、春見くんのここ・・・こんなになって。どうしちゃったの?」


胸を触っていた手が裾の端を握る。ちょうどスカートを上げているような体制になっているのに、ゆうくんは気付いてないようだ。僕は指示棒を伸ばして、ショーツの上からそれを突いた。


「ひ、っ・・・だめ、先生ぇ・・・」

「おかしいなぁ。胸を触っただけでこんな・・・はしたない子だね。そんな子にはお仕置きしなくちゃね?」


僕がそう告げると、ゆうくんが呼気を震わせた。指示棒を傍に置いて、ポケットを探る。これも偶然の産物だが、僕のポケットにはリボンがあるのだ。それは会社で社員の土産物を開けた時に、捨て損ねてしまったものだった。それを取り出して、片手でゆうくんのショーツを少しずらした。

ぽろん、とゆうくんの愛らしいそれが下着の中から出てくる。


「せ、先生・・・?やぁ・・・」


何をされるか分からず、ゆうくんは困惑しているようだ。僕は出てきたゆうくんのそれを緩く握り込んで軽く扱いた。ゆうくんが、んっ、と息と唾を飲み込む。指を外して、リボンを両手に取ると、ゆうくんの根元にそれを巻く。


「あっ、やぁ、なにっ・・・?!」


僕が施すセックスへの好奇心もあってか、不安げな声を漏らすものの、ゆうくんが僕の行動を止めることはなかった。僕が仕込んだゆうくんは、快楽に従順で素直かつ、好奇心も高い。本当に最高な恋人だ。

巻いたリボンを少し強めの蝶結びにする。


「外すまで、出しちゃダメだよ?」


実際に射精を抑制する効果なんて、こんなリボンにあるわけでもなく、ただの遊びにしか過ぎない。ただ、それをされたことのないゆうくんの身体は多少戸惑うかもしれないな、と思いつつほくそ笑む。

ずらしたショーツを戻して、スカートを握り込む手を取って引き寄せた。


「春見くんのはしたない姿を見たら、先生のここがこんなになってしまったよ?春見くんのせいなんだから、責任は取らないと・・・どうすればいいかわかるよね?僕の優秀な生徒だから」


自分の膝上に座らせながら、耳元で問いかける。ふあ、とゆうくんが背中をしならせた。興が乗ってくると、ゆうくんの身体は全身が敏感のなるらしく、僕の吐息が当たるだけでも声を漏らすことが多くなった。僕だけのゆうくんになってきているな、と思うと感慨ひとしおだ。

ゆうくんは首まで朱色に染めながら、俯いた。あーーー、可愛い!僕がどんなに馬鹿を言っても付き合ってくれるゆうくんが愛おしくて堪らない。ぶっちゃけ、今すぐ押し倒して抱きたい・・・!が、マンネリ防止のために多少の遊びは必要なものだ。

ゆうくんはもじもじとして手を開いたり握ったりしていたが、ぎっとスカートを握ってから、僕を見上げる。


「俺、あ・・・わたし、あの・・・先生の、口で・・・あの、します・・・」


ゆるりと僕のものをゆうくんの指先が撫でて、ゆうくんは僕の口端に口付けると、自分から床へと降りる。

ンンンンンン?!あれ?!手でするくらいで考えてたよね、僕ね!え、口で?!口でって言った?!?!あ、僕まだ帰ってきてそのままなんだけど?!?!

今日はジムにも寄らず直帰したのでシャワーを浴びていない。

社屋は涼しいとはいえ、真夏であれば多少は汗もかく。しかも僕は行き帰りも徒歩だ。

僕が静かに動揺している間にも、ゆうくんは僕の足の間に降りていて、ベルトに指をかけていた。


「春見くん、その・・・」

「先生ぇ・・・」


両手でベルトを外し、ゆうくんの手がスラックスのチャックを下ろして、そこを寛げる。下着の上から、ゆうくんが僕のものへと口付ける。ちゅ、ちゅ、と何度もされると、既に勃っていたものが尚更に硬度を増させていた。

そのままゆうくんの指先が下着をずらして、僕のものを露出させる。


「先生の、おちんちん、おっきぃ・・・」

「・・・っ・・・」


ゆうくんが、今度は直に、亀頭へと口付ける。

ふああああああ!これこそ、教師だけに、教師の教師がビンビン物語・・・っ!

・・・いやいやいやいや!大昔のドラマに準えている場合じゃない。清潔じゃないんだから、ええええ、これ、ええええええええええ・・・!そりゃ、してもらいたいけどね・・・!

僕の脳内はゆうくんの行動に狼狽えていて、体を止めさせたままだ。ゆうくんは竿に指先を絡めながら、尿道の先を丁寧に舐め始める。


「あ・・・、先生の、匂い、濃い・・・・・・」


舐めたり吸ったりしながら、呟きを漏らした。

僕のゆうくん、まずい。やばい。

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