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11 未知のヴィールス

 大量のドッグフードを仕入れた犬次郎は、珍しくご機嫌麗しゅうであり、そこそこの速度で街道をブッ飛ばしていた!


「しかし、犬次郎さん。あの中年夫婦がローション家の暗殺者だとよくわかりましたね」


「まだそんな昔のことを言ってるのか」


「1時間も経ってませんよ!!」


「いや、なんか間が空いたろう? なんか途中に無駄な追加エピソードがあった気がするぞ」


「え? た、確かにそうかも知れませんけど、止めてくださいよ! そういう発言は! 嫌がられますよ!」 


「誰にだ?」


「それよりも、暗殺者の件ですよ!」


 これ以上はヤベェーと察した猫五郎は、主人公のパゥワーを使って半ば強引にお話を戻した。


「暗殺者の件? 簡単な話だ。当てずっぽうで言ったら、当たっただけだ」


「へー。……え? は? あ、当てずっぽう?」


「倒れた時、やけに胸元が膨らんでたんでな。側に携帯電話は転がっていたから…拳銃かなと思って適当に言ってみたんだ」


「じゃあ、殴った時には…」


「決まっている。知らなかった。目撃者だから始末しただけだ」


「はあァァァッ!?」


「いちいちうるさいな…」


「あ!? え!? なら、あの夫妻が本当にローション家を狙ってたかは…」


「そんなこと俺が知るわけないだろう」


「ええー!?」


「まあ、ローション家に恨みがあるか、俺に恨みがあるのかは知らんがよくあることだ。始末できたんだからよかった」


「よくあるって…?」


「何人か刺客を差向けられたことがある。全部、返り討ちにしたがな」


「……」


 「そりゃこんなことやってりゃ命も狙われるわな」と、猫五郎はそう思った。




☆☆☆




 さてはて、そんなこんなで、ジープはモモジリの元へと戻る!!


 艦内へと戻ると、やっぱりここぞとばかりに異変が生じていた!!


 ゴリッポが、出入口の扉の前に、邪魔クソそうにうずくまっていたのであーる!


「死んでいるのか?」


「そんなわけないでしょ! ゴリッポさん! いったいどうしたんですか!?」


 犬次郎の冷徹な言葉を否定し、猫五郎はゴリッポを揺する。


「……俺はもうダメだ」


 ゴリッポは死んだ魚の様なお目々をして、ヨダレを垂らしていた。


「ダメって……何があったんですか!?」


「……しないんだ」


「しない? 何がしないんですか!?」


「ムラムラ…しないんだ」


「…………は?」


 ひとのいい猫五郎でも、「なに言ってんだ、このクソゴリラは」と思わざるを得なかった!!


「どうでもいい。そこをどけ。中に入るのに邪魔だ」


 スガンッ!!


「ンゴォッ!?」


 ひとの心がない犬次郎は、容赦なくゴリッポを蹴り飛ばす!


 ゴリッポの巨躯は、ポリバケツのようにその場に転げた!


「……ん?」


 扉を開いて、びっくら仰天!


 なんと、メンズたちが一様に無気力になって、廊下の隅に、ゴリッポのように転がっているではないかァー!!


「こ、これはいったい…」


「ムラムラしねぇ…」


「え?」


 ゴリッポと同じようなことを言うのに、猫五郎はびっくら仰天する!


「いいところに帰って来たださぁ! さあ、この扉を封鎖するのを手伝ってけろ!」


「ベンザー博士!?」


 ベンザーはなにやら通路の非常隔壁を閉めようと悪戦苦闘しているところだった。


「急ぐだ! 猫定吉! はよ閉めねぇと大変なことになるっぺよ!」


「大変なこと?」


「いいから早くするださぁ!」


 ベンザーに急き立てられ、猫五郎はわけもわからず扉を閉めるのを手伝う。


「しっかし、サビついててまったくビクともせんだっちゃわ! おーい、グルコサミン! もっと力強く押してけろ!」


「ドスコーイ!」


 扉の向こう側からグルコサミンが押しているのが、のぞき窓から見えた。


「固い! ダメです! ビクともしない! なんで、こんなになるまで放置してたんですかぁ!?」


 パラパラとサビの粉が落ちるだけで、隔壁はほんの少し動くか動かないかで、まったく閉じる気配がない。3人がかりでやってこうなんだから無理そうだった。


「閉めればいいのか?」


 犬次郎が冷ややかなお目々をして聞く。


「そ、そうだっぺよ!」


「さっさとどけ」


「ぎゃんッ!」「あれまッ!」


 犬次郎が、猫五郎とベンザーを横薙ぎに突き飛ばし、ハンドルレバーに片手を掛ける。


「いくら犬次郎さんでも、片手じゃ…」


「ふん」


 ガッシャーンッ!!!


「「エッ!?」」


 なんてことでしょう!


 犬次郎がほんのちょっと力を入れただけで、いとも簡単に扉が閉まってしまう!!


 向こう側から押していたグルコサミンが、引っ張られた勢いで、したたかに顔面を強化ガラスに打ち付けた!


「やったべさ! ……はー。これで安心だっぺ」


 ベンザーは地ベタに座り込んで頭をポリポリする。


「安心って、本当にいったい何があったんですか?」


「いやな、それが…」


 説明をしようとした矢先、扉の向こうから喧騒が聞こえてきた。


 グルコサミンが真っ青な顔をして、向こう側から扉を何度もノックする!


「あ! グルコサミンは扉のあっち側に…」


「仕方ねぇべさ。オラたちには救えぬもんだべ」


 早々に諦めたベンザーは遠い目をする(向こうから押させていた時点で、彼を助ける気は皆無だったわけであるが)。


「あ、あれは!」


 そして猫五郎はとんでもねぇもんを目撃する!!


 それは艦内の女性たちが白目を剝いて、ヨダレを撒き散らし、ワニのような四つん這い姿勢で大挙して押し寄せて来たのであーる!!



「「「オトコー!!」」」



 そして半狂乱となった女性たちは、あっという間にグルコサミンを呑み込んで、脱水中の洗濯機に放り込まれでもしたのかごとく、もみくちゃにした!!


「グルコサミンさーん!」


 呼びかける猫五郎の声も虚しく、蟻が餌となるイモムシを運ぶがごとく、あのグルコサミンの巨躯は軽々と持ち上げられ、ソラ、トットコ、ヨイヤサッ! とばかりに、奥に連れて行かれてしまったのだーった!


 その間、ベンザーは目尻に涙をためて念仏を唱えていた! まさに役立たずであーる!


「これは何なんですか! ベンザー博士!」


「や、やめれー! 酔うっぺよ! おえー!!」


 猫五郎はベンザーの肩をガックンガックン揺さぶる。


「あ、ありゃぁ、“ゾンビビス”だっぺよ!」


「ゾンビビス? あ、あの超地球を荒廃させた原因の…」


「そうだぁ! 人間をエロティック・グロ・性欲モンスターに変えてしまう、恐るべき未知のヴィールスだっぺよ!」


「それに感染した? で、でもどうして…」


「“でも”も“どうしても”ねえ! 艦内などの密閉された空間でヴィールスは拡がるださぁ! 感染源は不明だけんど、見ての通り、この艦のオナゴどもは間違いなく全員が感染しちまったべ!」


「なら、ゴリッポさんたちも…」


「いや、これは違うべ! “ナエナエ・シンドローム”の症状だっぺ!」


「ナエナエ…シンドローム??」


「んだ。俗に言う“賢者モード”だべさ! それが強制的に起って、厭世的怠惰的な投げやり状態の無気力になっちまうだ! 出会い系サイトで写メに釣られて逢ってみたら、それが写メと全然違う地雷系で、一挙に萎えた時とかと同じ現象でもあるださぁ!」


「…は、はぁ」


 猫五郎はウンザリした気分になった。


「それでなんでゴリッポさんたちは、そのナエナエとやらに…?」


「艦内などの密閉された空間でヴィールスは拡がるださぁ! 感染源は不明だけんど、見ての通り、この艦のオトコどもは間違いなく全員が感染しちまったべ!」


「……とどのつまり、こっちも原因は不明だと?」


 ベンザーは頷く。猫五郎は「なら長々と喋るな! 役立たずが!」と殴りたい気持ちを堪えた。



 ズッドゴオン!!



「うわぁ!!」「おげぇ?!」


 いきなり扉が大きな音を立てたのに、猫五郎もベンザーもびっくら仰天する!


「こ、今度はなんなんですか…? まさかグルコサミンさんが…」


「…ね、猫八郎」


「な、なんですか?」


「正体が気になるところだが、生憎ともう3,000文字を突破してっぺさ!」


「……??? 3,000文字??? 何を言ってるんですか?」


「知らなくてもいいださ! だけんど、ネオペ読者は5,000文字以上を忌避する傾向にあるっぺよ!」


「はぁ…」


「いいから、“巻け”っうぺよ!」


「はあ? “巻け”……?」


「よしきた! わかったっぺ! では尺を巻くとする!」



 そんなわけで、雑に次回につづーくぅ!!

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