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12 ババエロンガ

◇前回までのお話◇


 ていへんだ! ていへんだ!


 少子高齢化、医療費高騰、経済低迷、外交問題の山積みで先行きの見えない超日本!


 超政治家は不正を働き、マスメディアは嘘八百を並べ立て、いかがわしい犯罪者どもが人心を惑わす昨今!


 こんな毎日なら、畜生になった方がマシじゃねぇかってもんよ!


 つーまーり、これは畜生に解決を委ねた作品ってことぉ!


 そんなこんなで、畜生代表の犬次郎が快刀乱麻を断つがごとくに大活躍するんだぜよ!!




★★★




「なんかまったくそぐわない紹介が入ったんですけど!!」


 どこまでも畜生になりきれない飼い猫風情の猫五郎が叫んだ!


「なにこの非常事態にわけわからんこと言ってるべさぁ!?」


 ベンザーに言われたくないと猫五郎は思ったが、確かに今は大変なことになっていた!


 固く閉じられた扉の向こうから、何者かが体当たりを仕掛けたのだ!



 ズッドゴオンッ!!



 またもや生じる轟音と震動に、猫五郎とベンザーは恐れ慄く!!


「オドゴオオオオオッ!!」


 覗き窓に“鬼”が見えた!!!


「「ゲェェェッ!」」


 猫五郎とベンザーは抱き合って泣く!


 覗き窓から見えたのは、実のところオ・ウーナであったのだ!!


 しかもエプロンがどこかに消えてしまったのか、こりゃまた全裸!


 大事なことなので2回言うが、全裸!


 とどのつまり、スッポンポンなのであーーる!!


 そして血走ったお目々!


 口の端からアブク!


 怒気に煽られる白髪!


 全身に浮きだち、激しく脈動する血管!


 暴れ狂うスルメのような乳房! 


「オオオオオ〜〜〜ンッ!!!」


 明らかに正気を失い、某人型決戦兵器の暴走モードのごとく前傾姿勢で、グルグルと走り回っては咆哮するッッッ!!


 もちろん獲物は扉の先だ!




 ズッドゴオンッ!!



 だから体当たりを繰り返す!!


「な、なんてことだべ! オ・ウーナ副艦長があんな哀れな姿に……いや、ぶっちゃけ、暴れ回っている以外には元とあんま変わんねぇが! とりあえず、なんてこった!!」


「これもゾンビビスですか!?」


「いんや違うだ! あれは“ババエロンガ”! ゾンビビスの最終進化系だべさァァァ!!」


「そんなポケ○ソみたいな事が!?」


 こんなポケ○ソいたら子供ギャン泣きのトラウマ間違いなし!!



 ズッドゴオンッ!!



 ポケ○ソという可愛い雰囲気の微塵もない、ホラー映画から出てきたかのようなグロテスクなバイオレンスモンスターは、まさに悪鬼の様相で何度も扉に体当りする!!


「ひぃぃい…」「おしまいだぁ…」


 さっきまで無気力症に陥っていたゴリッポたちが、声を押し殺して泣く! あまりの恐怖に賢者モードでいられなくなったのだ!!



 ズッドゴオンッ!!



「ま、まずいべ! このままじゃ扉さぁブチ破られるのも時間の問題ださぁ!」


 キツく締めてあったはずのボルトが緩みはじめた蝶番を見やり、この場にいるメンズどもはババエロンガと化したオ・ウーナの恐るべきパゥアーに戦慄するッッッ!


「そ、そうだ! こっちには犬次郎さんがいるじゃないですか!!」


 猫五郎がそう叫んだ!


 そう! 困った時の畜生頼り! 畜生には畜生ぶつけるんだよの精神!!


 あのチート柴犬であれば、ババエロンガもなんとかしてくれるに違いない!


「犬次郎さん! …エッ!?」


 さっきから静かなのが変だと思っていた猫五郎は振り返ってびっくら仰天する!


 袋が破けて散乱するドッグフード!


 そこに幸せそうに横たわる犬次郎!


 口元には食べかすがべっとり付いていた!


「ムニャムニャ…」


 そう! お腹が一杯になったせいで犬次郎なオネムなのであーーる!!


「い、犬次郎さん! なにやってるんですか!! 買ってきたドッグフード全部食べちゃってからに!!」


 なぜ食べてしまったのかと問われれば、お腹が空いていたからだ!! 本能に忠実なのが畜生なのであーーる!!


「起きて! 起きて下さいよ!!」 


「ZZZ」


「そんなリアルで“Z”で眠りを表現するなんて漫画しか見ないですよ!!」


 そうだ! これは、ネオペ小説だ!!


 揺さぶっても叩いても犬次郎は起きようとしない!


 肝心な時に役立たない…チートあるあるであーる!!



 ズッドゴオォォォンッ!!!!



「ヒィィィッ!」「アンギャアーッ!」


 一際、勢いよくババエロンガが体当した!!


 もちろん、ババエロンガに空気を読む能力なんて備わっているわけもない!


 戦隊モノあるあるの変身シーンを律儀に待つような精神など微塵もない!


 犬次郎の目覚めなんて待つわけなく、さっきから体当りを繰り返していたのであーる!!


「に、逃げましょう! こうなったら艦外に!」


「そうだっぺな! んだならば……ん?」


「どけどけどかんかーい!! 猿三郎様のお帰りじゃーい!!」


「なによ〜。辛気くさい雰囲気でやーね。せっかくエステとサロンとホストで、リフレッシュしてツヤツヤになってきたってのにぃ〜」


 入口の方から、猿三郎と雉四郎が、無気力なメンズ共を蹴り飛ばしつつ入って来た!


「あー、ムカつくわい! こんなシケた星とはさっさとおさらばじゃーい!」


 黄金のキュウリを齧りながら、猿三郎は血走ったお目々でのたまう。


「あら、猿三郎、不機嫌ね。またキャバクラでボッタくられでもしたの?」


「うるせーわい! なにが5,000円ポッキリじゃ! お通しのキュウリが18万だなんて、誰も思わんじゃろがーい!」


「だから、さっきから金粉で塗られたキュウリを齧ってたの! プークスクス!」


「じゃあかしゃー! 焼き鳥にしちまうけんぞ! どうせ、オメェこそホストに貢いでスカンピンじゃろが!」


「お金はなくなったけど、アンタみたいになにも残らないなんてことはないわよ」


「あ゛?」


「だって、心に“愛”は残っているもの…」


「あー、はいはい! おえー!」


 猿三郎は吐く真似をする。


「な、なによソレ!」


「それでその“愛”の見返りに、どんだけ闇金から借りたんじゃい?」


「…さ、300万ちょっと…だけど」


「は〜?! 300万!! かぁー! 騙されてておめでたいのぅ!」


「な! 騙されてないわよ! これは彼の美容室の準備資金で、半年後に経営が軌道に乗ったら、アタシと結婚して、その時に全額返すって約束してるんだからして!!」


「それが本当なら、ワシも今頃は競馬で当てて、それを元手に石油王にでもなっとるわーい!! そんな上手い話があってたまるか!!」


「アンタと一緒にしないでよ!」


「その男の連絡先は聞いとるんじゃろな?」


「え……? は! そういえば、貰った名刺には住所も連絡先も書いてなかったわ……」


「やっぱりおめでたいのぅ! 連絡もつかん男と、どうやって結婚するのか見物じゃのぅ!」


「キー! 足し算と掛け算の違いもわからない猿人の癖に!!」


「なんじゃ! やんのか! ゴラァ!!」


 猿三郎と雉四郎は、不毛な取っ組み合いを始める!


「ちょっと! そんなことやってる場合じゃ…!」


 モミクチャになる2匹! んで、ちょうど猿三郎の肘の当たりが、何やらスイッチバーみたいなのに触れた!



 ガーー!!


 ガッシャーン!!



 シャッターが降りて、出入口の扉が閉まーる!!!


「ああ! 扉が閉まってしまった! 開けなきゃ!」


「なんじゃ!」「なによ!」


 喚く猫五郎を、2匹は睨みつける!


「扉を開けるんですよ! 外に逃げるんです!! …あ! そ、それは!」


「ん? なんじゃこりゃ?」


 猿三郎は床に落ちていた棒を拾い上げる。


「あ、あ、あ…」


 猫五郎は真っ青になった。    


 というのは、扉を閉めたバーみてぇなのが折れちまっていたからだ!!


 これじゃ、バーを上げれねぇ! 


 上げられねぇってことは、扉を開けられねぇってことだ!


「よくもそんなことを!」


 激昂する猫五郎はヒステリックに叫んだ!


「ベンザー博士! 遠隔で開けることはできませんか!?」


「む、ムリださぁ。ここの扉だけは手動なんだっぺ! オラが切り替えただ!」


「なんでまたそんなことを…」


「そっちの方がカッコいいと思ったべさ!」


「よくもそんなことを!」


「メンゴメンゴ♪」


 ベンザーは畜生らしく謝った。


「なんの話じゃい!? まったく! ドイツモコイツソイツも、シケたツラしくさって! こっちまで陰気になるじゃろうが! そもそも…」



 ズッドゴオンッ!! 



「ギィャアアアッ!」「インャアアアッ!」


 暴走中のババアに今頃になって気付いた畜生どもは、その場に尻餅をついた!


「オ・ウーナ副艦長!? 普段からトチ狂ってたけれど、それに輪を掛けておかしくなってるわ!!」


「こらぁヤバイぞ! ワシの危機感知が振り切れちまってる程にヤベェぞ! はよ逃げねば!」


 猿三郎は雉四郎は、その場から……


 逃げ出せない!!


 なぜなら、さっきバーをぶっ壊してしまったからであーる!!


「扉ぶっ壊したのは、どこのバカじゃーい!?」


「アンタでしょーが!!」



 ズッドゴオンッ!! 



「マズイっぺよ! もう少しで破られ…」



 ズッドオオオオオーンッッッ!!!



「ヒィィィッ!」「アンギャアーッ!」「ギィャアアアッ!」「インャアアアッ!」


 一瞬、誰しもがババエロンガが扉をブチ破った音かと思ったが、そうではなくこれは戦艦が飛び立った衝撃音であった!!


 証拠に、斜めになった艦内で、ババエロンガは後転してゴロゴロと転がって行ってしまう!


 もちろん全裸なんで、大事なところは丸見えだ!!


 ババエロンガの見たくもなかった秘部をスペシャルな形でモロに見てしまい、男たちはその場で嘔吐した!!


「なんで発進したんですか!?」


「ブリッジで誰かが操作したんだべさ!」


「なんじゃと!?」


「まさか、このまま超宇宙へ? 一大事じゃないの!」


「んでもゾンビビスにはそんな知能はなかっぺよ!」


「どういうことですか!?」


「しかーし、残念ながらもっと大事なことがあるべさ!」


「え…?」


「もうとうに3,000文字を突破しとるっぺ! そんなわけで次回に回すっぺよ!」


「は!?」



 そんなこんなでやっぱり雑に次回につづーくぅ!!

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