モモジリーのエンジンルーム。
ところどころに『KEEP OUT』だの『危険』だの『関係者以外立ち入り禁止』だの、『夜露死苦』だのバン○シーだのが描かれている!!
ここに立ち入ることができるのは、整備士のゴリッポや、設備管理責任者の資格を持つベンザーだけであーる!
ちなみにここに来たのは、猫五郎、犬次郎、猿三郎、雉四郎、ゴリッポ、ベンザーの6匹だぁー!
オ・ウーナは「なんか頭痛が痛い。気圧の変化のせいかしら?」とかなんとか言うてリタイアしてもらった!
ぶっちゃけ、なんかいても話が盛り上がらなそうだったので、ブリッジに置いてきたのであーる!!
ちなみに頭が痛いのはカチ割れているからであるが、そのことを指摘する優しい畜生は皆無なのであーった!!
「中はアッチィーぞ! もしかしたら焼け死ぬかもしれねぇべさ!」
「焼け死ぬ!? 嘘でしょ!? 焼き鳥はいやぁーよ!」
雉四郎が悲鳴を上げた。
「嘘じゃねぇ! 核融合なぞより、強力なエナジーっちゅうか、ハンパねぇースケベッティやエロッティのエネルギーがなんか臨界突破してて、偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをしている可能性があるんだっぺさぁ!!」
「どんな比喩でなにを言ってるかさっぱりわからないんですが、要は巨大なエネルギーを流用した、空間を超越する超弦ワープの話をされてるんですよね?」
「……」
ベンザーは鼻水をくったらかせて押し黙る。
「ね、猫五郎。今のが理解できたのかよ?」
ゴリッポが尋ねると、猫五郎は頷く。
「超宇宙理工学は一通り学びましたからね」
猫五郎が自慢気に言うのに、猿三郎は「チッ」と舌打ちする。
「時空との時空を渡る際のエネルギーの余波を転換させて、特異点を作る……平たく言うと、空間に異世界へ繋がる窓のようなものが生まれるので、そこから通常航行なら充分すぎるくらいの……」
「オラ! そういうのどうかと思うっぺ!」
「びっくりした! いきなり大声だすなよ! ベンザー博士よ!」
そんなことをのたまうゴリッポの声もやかましかった。
「なんかこう、違うんだっぺよ!」
「なにが違うってのよ」
ベンザーは喉がつっかえた感じを示す動作をしたが、ア○〜ンをやってるようにしか見えないダッ○ンダァ!!
「そうだ! なんか、アレでコレださぁ! 猫又狂四郎は…そういうキャラじゃなかっぺ! オラさぁがそういう解説するのに、『な、なんですかそれ!』とか、そんなん言うのが正しいキャラの在り方だべさ!」
「な、なんですかそれ!」
「ワシもそう思うわーい!」
猿三郎がいきなり勢いづいてのたまわった!
「猫五郎! オメェは強敵を前に、『ウァン』とか『アァ…』とか言ってしゃがみ込むヘタレがお似合いなんじゃあ!!」
「偏見ですよ!」
さすがの猫五郎も怒る!
「黙れ」
「ヒゥッ!」
犬次郎のドスの効いた声に、猿三郎はすくみ上がる。
(クソがぁ! 犬次郎さえいなければ、こんな餓鬼猫なぞ、超宇宙のモク……モズク? 佃煮? …に、してやれると言うにぃ!)
ギリギリと猿三郎は歯軋りする。
「そんなことより、エンジンルームについたぞ。開けていいのか?」
ゴリッポが鼻ホジーしながらお伺いする。
「いや、中は危ないんですよね? 防護服かなにかは?」
「そんなモンねぇだ!」
「は? ならどうやって…」
「気合いだ! 大概のことは気合いさえありゃなんとかなるださァ!」
「なるかぁ! ちょ、勝手に開け…」
ベンザーは
エンジンルームと言えば、なんかメカメカしい、鉄くせぇ、油くせぇ、デッケー機械がガッコンガッコン動いているイメージだが、そんなことは全くなかった!!
だだっ広い部屋に、ポツネンと1台あるマウンテンバイク!!
「ハァハァ…」
それを懸命に漕いでいるのは、ただサングラスをかけ、裸体で赤パン一丁の角刈りだ!
「うッ!」
もう見た瞬間に嫌な予感しかしなかった猫五郎は、劇画風の面構えで拒否感を露わにする!
「なんの用だ!? 糞アニマルども!!」
開口一番で怒り狂う!
危険人物の特徴だ!
サングラス奥のお目々が何処かにイカれてしまってらっしゃられる!!
「おい。“エンジン”よ」
「え?!」
ゴリッポが当たり前の様に言うのに、猫五郎はびっくら仰天した。
「コイツがエンジンじゃ。そんな事は常識中の常識じゃけんのぉ〜。エリ〜ト様ちゅうんはそんなことも知らんのけぇ?」
猿三郎はムカつく顔をして、猫五郎の肩に肘をかけてのたまう。
「誰がエンジンだッ!! 俺にはゴッデムという立派な名があるッッッ!!!」
ゴッデムは、右手で左手首を押さえ、伸びをする……よく日焼けした大胸筋が引き伸ばされ、乳首が浮き立ち、魅惑的な脇が顕になる。剃り残しはない。つまりパーフェクトだ!
「せっかく『シン』となったのに、“神”であるこの俺が!! 前回の失態という黒歴史のせいでこんな目に! それもこれもどれも、貴様ら糞アニマルと関わったせいだッッッ!!」
意味不明なことを叫び、血の涙を流すゴッデム!
手と脚には枷と重りが付けられていた! つまり、彼はこのエンジンルームに拘束されて労働を強いられているのであーーる!!
その時、猫五郎の眼に、ゴッデムの赤パンに金文字で『神』と刺繍されている上に✕が描かれており、その横にマジックペンで『メインエンジン』と書かれているのが飛び込んできたせいで、彼の意識は「無限の彼方へ! さあ、行くぞ!」の世田谷にガレージを持つ某有名シンガーソングライターの声(幻聴)と共に、無限の超宇宙の彼方へと飛び去りそうになったのであーーった!!
「そんなことはどうでもいい。勝手に艦を出したのは貴様か?」
「犬次郎…」
さしものメインエンジンのゴッデムも、最強の柴犬を前に、借りてきたエンジンのようになった(借りてきたエンジンってなんやねん!)!
「ああそうだ! なんかよくわからん大混乱が生じていることを察し、メインエンジンとして緊急発進した!!」
「ど、どうやって?」
「ハチワレ猫よ! 見ればわかるだろう! 漕いでるじゃないか!!」
そういやさっきからゴッデムは自転車を漕いでいた!
「そ、そんな電力の自家発電みたいなので…」
「実際に飛んどるんじゃけぇ? それをどう説明するってぇのかのぉ? ええとこの学校出た猫五郎様なら、さぞかし頭のええ解説してくれるんじゃろぉ? 期待に胸熱じゃのぅ〜」
(う、ウゼー)
猿三郎は耳をホジホジしながら言うのに、猫五郎は辟易とした!
「でも、発進したのはいいとして、ゾンビビス問題は解決したってのにどこ行くのよ!?」
「そうだ。さっさと元の星に戻れ」
「い、犬次郎♡ あ、アタシと意見が合うだなんて、やっぱり運命の赤いゴム(下の方)で結ば…ンガァ!!」
犬次郎は無言で雉四郎の鼻の穴に指を突っ込んだ! まさにこれこそ強姦であーる!
「ドックフードを買う。早くせねば、店が閉まる」
「ムダだ!」
「なにぃ?」
「もうすでに超空間ワープ航行モード(畜生転移)に入っている! 今更のチェンジ・キャンセルは、シャワーを浴びたデリヘル嬢に申し出るよりも難しい!!」
ゴッデムがニヤリと笑うのに、畜生どもはびっくら仰天する!!
「な、なんてこったぁ。い、行き先はどこだべさぁ!? 言うてみい! 言うてみいよ!!」
「ククク! 知れたこと! 敵の主力部隊が集結しつつある、チブサー帝国の誇るフェロモン要塞だッ!!」
「敵地に!? それに敵が集結しているだなんてどうして……」
そうエンジンルームに閉じ込められている、メインエンジンであるゴッデムがそんなこと知るのは、ネット環境もないのに出会系サイトで出会うより難しいことのように猫五郎には思えたのだ!
「簡単な話だ! 名前までは出せんが、とあるシャム猫が教えてくれた!」
「それって、まさかミーシャさん?」
「ッ!」
猫五郎が尋ねるのに、ゴッデムは冷や汗を流す。
「こ、個人情報保護法に抵触する恐れがあるので、回答を控えさせてもらう。これもひとえに弱者である女性を保護するために……」
「あんのスッパイ雌女が! やはりあの場で始末しておくべきだったんじゃー! このクソエリート気取りの雄猫が庇ったばかりにぃ!!! あーあ、やっちまったなぁ、猫五郎さんよォ!!」
ここぞとばかりに猿三郎が喚くが、誰もそんな話を聞いていなかった。
「な、なぜ誰も反応せんのじゃ!?」
「ドックフードが買えんのは分かったからもうどうでもいい」
(このクソ犬!)
「えー、アタシもぉ。犬次郎がいいっていうならぁ〜いっかなぁ♡」
(この鼻の穴ガバガバ女!)
「オラさぁ、この尻の間にさっきからなんか挟まってる気がして落ち着かねぇべさ。ちょっくら菊門みてくんろ、猿之進」
(なんでワシが尻穴を見なきゃいけんのじゃい! 猿之進って誰やねん!!)
「まあ、皆がいいって言うなら俺もだなぁ」
(知性0のバカ面ゴリラが!)
「彼女がスパイであることはわかってましたから、いまさらどうこう言っても変わりません」
(こ、コイツ!! 開き直りおったじゃと!?)
猿三郎がハンケチを噛んでる間に、猫五郎はゴッデムをビシッと指差す!
「なぜ、敵地に我々を放り込むような真似をしたんですか!?」
ゴッデムは喉の奥底で笑うのに、「なにがおかしい!」との台詞を猫五郎が言おうとしたのを、猿三郎が奪って「なにがおかしいんじゃーい!」とのたまわったが誰も意にも介さなかった。
「……知れたこと。それは貴様らへの復讐だ! この18話も続く、ダラダラとしたつまらん物語を早く終わらせるためには、ここで貴様らにお亡くなりになってもらう他ない!!」
「な、なにを言って……」
「こんな駄作は一刻も早く終わらし、『畜生転移リベンジ』もしくは『畜生転移クロニクル』か『畜生転移ジェネシス』で、俺はまた“神”として返り咲くのだ!!!」
もうネタが尽きかけている作者を頃す気マンマンの台詞をゴッデムはのたまう!
「よくわかった」
犬次郎が一歩前に進み出る。
「犬次郎。やはり貴様なら、俺の気持ちがわかって……ンボォ?!」
ゴッデムの横面を、犬次郎は鉄球でブン殴った!
「ウゴゴゴッ! な、なにを……」
「ゴッデム。お前を“転生”させてやろうと言うんだ。感謝しろ」
「て、“転生”…ま、まさか、この俺を頃……」
「そのまさかだ。俺たちが死んでこの物語が終わろうと、お前が死んでお前の物語が終わろうと同じことだろう」
「そんな理屈が通るわけ……」
「知らん。俺は柴犬だ。柴犬に理屈など関係ない」
猫五郎、猿三郎、雉四郎は「また始まったよ……」的な顔をした。
「さあ、さっさと
「い、いや待て…」
「それが嫌ならエンジンとして大人しくこれからも生きるか?」
「……わ、わかった」
「わかった?」
「わ、わかりました……」
ゴッデムはやつれた顔で自転車を黙々と漕ぎ始める。
「解決したな」
「はぁ…」
犬次郎がそうのたまうのに、猫五郎はなんだかすべてがどうでもよくなってそう答えたのであーーった!!