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21 戦争は畜生の所業

 モモジリから出撃するは、シバキイーヌ、エロエテッキー、トリビッチーナのASことキグルミ3体!!


 いつものように危険なチューンナップしたせいで、発進した際に爆発したりもしたが、そんなん何度も言ったってしゃあないので泣く泣く割愛させて頂く!!


 そして最後に1体……メタリックに蒼く輝くタヌキ…いや、ヌッコみてぇなずんぐりむっくりしたロボットが続く!!



【秀猫型機動兵器5号…ヌッコロシエモン】



 それはなんの面白みもなかったウルトラフールに改良を加え、猫五郎専用機とし、腹に“八次元ズタ袋”を備えた新型キグルミだったのであーーる!!


『大丈夫か? 猫五郎』


 無線で犬次郎の声が入る。


「はい。問題ありません。試運転もやりました。戦えます」


『せいぜい、ワシらの足を引っ張らんようにしろや!』


 猿三郎の声が入る。


『アタシたちの撃ち漏らしたヤツを叩けばいいだけだから、そんな気負わなくて大丈夫よ。猫五郎くん』


 雉四郎の声が入る。


「ありがとうございます。雉四郎さん」


『コラァ! ワシのことは無視かァ!』


 猫五郎は無言のまま、猿三郎の音声だけミュートにした。


「猫五郎! ヌッコロシエモン…行きます!!」




☆☆☆




 フェロモン要塞の玉っころの一部が開き、そこから艦隊が出撃する!!


 アール・バイターの指揮する、第1手【網代本手】艦隊こと10万隻の大艦隊だァー!



「コーポー。第40手【松葉くずし】は右翼、第16手【鵯越の逆落とし】は左翼に展開……鶴翼の陣にて向かい撃つ」


「閣下? こちらが数にて圧倒的優勢です。円形陣にて包囲し、十字砲火した方がより効率的では?」


 副官が疑問を挟むと、アール・バイターは軽く手刀を払った。


「コーポー。それを行った銭太郎が敗れた」


「そ、それは確かに…」


「数の優勢は、個の絶対に覆されることもある。クラスに女子は数多といえど、アイドル級にカワイイのは1人か2人しかいなくて、メンズ共の取り合いになるようにな」


「た、確かに…そんなクラスのマドンナは、2年の夏休み、ヤリチン先輩によってヤられましたッ!!」


 副官はトラウマを思い出して男泣きする。


「全艦隊はモモジリの進行を妨害し、その主砲にだけ気をつければよい」


「ハッ!」


「コーポー。ワシはKGK、“ゴンザレス”で出る」


「!? 閣下、御身が出撃されるので!?」


「コーポー。そうだ。この戦いは機動兵器戦が主軸となる」


「え? 前回の20話にて、『出会系詐欺懲らしめたい砲』のことを、たぶん敵方は色々話してたんではないかと思うのですが……フェロモン要塞の主砲は使わないので?」


「話にでてきたからといって、使ってやる必要もない」


「ま、まあそりゃそうですが…。それならなんで話題に出したとか思われそうで…」


「そう思っている裏をかくのが戦術というものだ」


「な、なるほど…」


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 前回、ゴリッポの説明はまったく意味がなかったのであーーった!!


 さらに、挿話『汚物ペアとコリー姫②』で、彼らが主砲をOFFにしたサポートも何の価値もなかったのであーーる!!


「それに敵機は戦艦1隻。的が小さすぎるだろう。戦略兵器を使うのは非合理的だ」


「おっしゃりようはわかりましたが、それでも閣下御身が出る必要はないのでは?」


「ムラムラの力を持つ男が出撃したのをムラムラと感じた。……なればこそ、ワシが出ざるを得まい」


 アール・バイターの全身から黒紫色のオーラが炭酸みてぇにシュワシュワと湧き出るのを見て、副官は「お、おお…」とびっくら仰天する!


「出るぞ!! ドドリアーン! ザボボン!」


 昼飯のピッツァをつついていたドドリアーンとザボボンは、「え?」みたいな顔でびっくら仰天したのであーーった!!




☆☆☆




 2体の還暦型決戦兵器が、先陣を切ってブースターで爆進されあそばされる!


『ホホホ! アテクシらが出たからには、エロ規制派なんて中古ビデヲショップみたいに消えはてるザマショ!!』



【カネカース・サンダーカー型カネカース号】



 ドドリアーンが駆るのは、手羽先みてぇなヌンチャクで武装した、白いタキシードを模したボディとクワガタみてぇなアンテナを出したチブサー帝国のロボットだ!


『そうなのね! アテラの本気マジ受けとってもらうのね!!』



茂頭六手もずろって型ガナルドォン号】



 ザボボンが駆るのは、歌舞伎役者とピエロを足してデザインで、かみしもみてぇなボディ、提灯アンコウの疑似餌かつチョンマゲ風アンテナをつけたチブサー帝国のロボットだ!


 そしてそれに連なる数十体のモブども! いわるゆザ○やジ○とかいった汎用量産型の機体!



薄葉陰男うすばかげお型ウスセン号】



 バーコードヘアーのアンテナと、鼻眼鏡風のモノアイに、くたびれたスーツと、アタッシュケース型の機銃を装備した如何にも雑魚っぽいロボットだ!



 さてはて、迫りくる敵のKGK軍を前にしても臆すことなく、ヌッコロシエモン、シバキイーヌ、エロエテッキー、トリビッチーナが向う!!


『ゲヒョヒョ! ここはワシに任せんかーい!』


『ズルーイ! アタシも行くから! “シン”になってから見せ場がなくてウズウズしてたのよォ♡』


『猿三郎伍長! 雉四郎兵長! 数じゃこっちが圧倒的に不利です! 突出しちゃダメですって!』


 猫五郎の話など聞かず、エロエテッキーとトリビッチーナは先行して飛んで行ってしまう!


『なんでひとの話を聞かないんだ!』


『放っておけ。最初から当てにしていない』


『……犬次郎さん』


 最強戦力である犬次郎が言うんだから、そうなんだろうと猫五郎は思った。




☆☆☆




 さてはて、先行したエロエテッキーとトリビッチーナが、やはり先に会敵する!!



 猿三郎の駆るエロエテッキーが、ドドリアーンの駆るカネカースと相対する!!


『おやおや、命知らずが来たザマショ!』


 カネカースが手羽先みてぇなヌンチャクを振り回すと、変なビームみてぇなトゲトゲが現れた!


『さあ! おくたばりあそばせザマショ!!』


『はあん!? ワシを舐めとるな!? 目にもの見せてくれるわーい!! ここで大金星をあげて、あの調子こいた糞猫に土下座謝罪を要求するんじゃーい!!』


 エロエテッキーが、右拳を腰だめに構える。


 そして、「コーッ」というニワトリ人形の如き呼吸音で意識を拳に集中させる!


 その時の猿三郎の顔は、古いにしえのエアダッチ式ラブドールの如き様相であーーる!!


 そして拳にポテンシャルが溜まる!


 思春期の睾丸に集まる溢れんばかりの白きオタマジャクシの如く、異世界のエナズィーだか魔法だかよく解らん、「とりあえず光らせとけばいいんじゃね?」のような、そんな感じの程で浅はかなクリスマスのイルミネーションの如く光る!


『必殺【疾風怒濤波しっぷうどとうは】!』


『な、なんザマショ!?』


 超宇宙に迸るエネルギーに、ドドリアーンはびっくら仰天する!!




『待つのね!』


『待てと言われて待つ馬鹿はいないわよ!』


 雉四郎の駆るトリビッチーナと、ザボボンの駆るガナルドォンが流星群の中をジグザグに飛び回る!


『埒が明かないのね! こうなれば、これでもくらうといいのね!!』


 ガナルドォンは提灯みたいな触覚にエネルギーを溜める!


 必殺技で一気に蹴りをつけるつもりなのだ!


『掛かったわね!』


『な、なに!? は、速いのね!?』


 ガナルドォンが止まった隙を狙い、機動力に長けたトリビッチーナが背後に回り込む!


 そしてトリビッチーナの胸板が、そりゃ鳩胸みたいにボリューミーに膨らんだ!!


『必殺【矯正乳砕き】!』


『おおおーッ!』


 胸の谷間に挟まれるガナルドォンであった!!




☆☆☆




 そんなこんなで、必殺技を決めた猿三郎も雉四郎も「「やった!」」と、勝利を確信したそんな瞬間でござった!!


『ご苦労』


 犬次郎の声が聞こえる。



 そして…



 ズコゴーンッ! チュボボボーンッ!!


 スゴゴーンッ! チュボボボーンッ!!



 爆発の中に消えるエロエテッキーとカネカース!!


 爆発の中に消えるトリビッチーナとガナルドォン!!


 こりゃ一体なにが起きたのか!?


『ひ、ヒドイですよ! 犬次郎さん!! 背後から仲間ごとブッ叩くなんて!! しかも勝ちそうだったのに!!』


 猫五郎が悲痛の叫びを上げる!


 そう! 猿三郎と雉四郎が戦ってるのを囮にし、犬次郎は鉄球で味方もろとも撃破してしまったのだーーった!!!


『なにも問題はない。予定通りだ』


『なにがですか?!』


『それに必殺技まで出す見せ場もくれてやった。2匹に思い残すこともあるまい』


『だからなにがですか!?』


『過ぎたことをあれこれ言うな。それより残りの雑魚を片付けるぞ』


『ンンンンンン〜!!』


 まったくひとの話を聞かない犬次郎に、猫五郎は唇を噛んでコクピットに頭を打ち付けたのであーった!




☆☆☆




 それからはまさに地獄だった。


 シバキイーヌが鉄球を振り回す度、爆散するウスセンどもや戦艦ども。


 もはやそれ以上の描写が必要あるであろうか?


 この1機1機に誰かパイロットが乗り、そして戦艦にも数百人からなる数多の人々が乗っている。


 それは誰かの父であり兄であり弟であり、母であり姉であり妹であっただろう。


 それぞれにかけがえのない人生があり、笑いもすれば泣きもして、光輝く毎日を懸命に生きていたに違いない。


 しかし、それが今日この日に、無情に散らされることとなると誰が思い至ると言うのか。


 それも柴犬が振るう無慈悲な暴力。圧倒的な理不尽を前に、誰もが己の無力を感じざるを得ない。


 果たして、彼らの命はこんな風に一瞬で奪われていいものなのだろうか?


 彼らの人生は、たった1行如きで語り尽くせるものではないはずだ。


 嗚呼。そんなに薄っぺらなものではないに決まっているじゃないか。


 彼らはモブといえど、草木のようにいつの間にか生え出てきたわけじゃない。


 他の誰かから、父や母を通して、“命を与えられた者たち”なのだ。


 世に産まれ落ちた時、ほとんどの者たちが、最高の人生となりますようにと周囲から願われたはずだろうし、皆の笑顔や優しさという素敵な祝福を享受したのではないだろうか。


 例え、仮に、そんな幸せな誕生でなかったとしても、命が与えられたのは、こんな戦場で無惨に散る為のものであるはずがない。


 生まれて落ち、母の乳房から生命の糧を受け、ハイハイからやがて立上がるに至り、学校へ行き、竹馬の友を得、愛する恋人を作り、社会に出て家庭を持ち、そして自身が次の父や母となる……そんな尊い唯一無二の経験を、個人差はあれこそ、彼らひとりひとりが経て来たに違いない。


 その彼らの経歴はかけがえのないものであり、命は失ったら二度と取り戻せないからこそ、尊重され、恒久に護られるべきもののはずだ。


 しかし、現実は違う。


 迫る死から逃れる術もなく、あっという間に爆散して、星へと還って往く人々。


 取るに足らない星の瞬きとなり、深淵なる真空の彼方へと消え果ててしまう。


 嗚呼、これが戦争である。


 有史以来、人々は互いに相争い、無益に互いを傷つ合い、それがごく当たり前のものだと受け容れることに慣れてしまったのだ。


 平時であれば、不可侵の尊厳として扱われる命…しかしながら、戦争という状況になっただけで、それは紙よりも軽く、使い捨てできる消耗品ように雑に扱われ、消えてしまう事になんの抵抗感も抱かなくなってしまう。


 戦争とはまさに畜生の所業であり、命を軽んじ侮辱する最低最悪の人類の発明である。


 今こそ人類は己が行為を見直し、知恵ある生物としての矜持を遺憾なく発揮し、恒久的な平和、生命の尊厳の在り方という根幹的な部分を思い起こす必要があるのではなかろうか。


 そう。よりよい人類の未来を迎えるためにはそれ以外には選択はないのだから──




 ……と、少々センチメンタルな風になってしまったが、これはそんな話では決してない!!


 現実的に戦争はよくない!


 しかしながら、これは違うのだ!!


 なにが違うのか!?


 それは……


 この話は……



 畜生の畜生による畜生のための畜生なのだ!!



 つまーり!!



 モブ共がどんだけ犠牲になろうと、犬次郎はそんなもん関係ないのであーる!!


 なーにが、知恵ある生物としての矜持だ!


 なーにが、恒久的な平和、生命の尊厳だ!


 そんなもんで腹がふくれたら苦労はしねぇ!!


 畜生は本能のままに暴れまわり、己が利することだけに眼を向けていればいい!!


 とどのつまり、“自分だけが一番大事”なのであーる!!!


 爆散する者共は、犬次郎よりも価値が低かった!


 嗚呼! ただそれだけのことなのだ!!!




☆☆☆




『コーポー』


 犬次郎が無双しているのを、離れた所で見ている真っ黒なシルエットがあった!


『……チブサー帝国が誇る艦隊はほぼ潰滅とはな。チート能力者、“大魔神の陰囊玉”か。なればこそ、ワシが相手をせねばならぬようだ』


 謎の人物(モロバレとか言うな!)が駆る謎のKGKが動き出すッッッ!!!

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