糞かけジジイの正体は、なんと魔界の神だったー!!
「そ、そんなこと信じられない……」
読者の代弁をするかのように、自分たち以外の客がいなくなった販売所の前で猫五郎はそうのたまう。
「いや、真実だ! 証拠に、私も魔族だ!」
販売員の顔色がやけに悪かったのは、やっぱ魔族だったからなのだーった!
「いやいやいや、急にそんなこと言われてもぉ……ん?」
しかし、猫五郎はよーく考えてみる! 今まで唐突ではなかった展開などひとつもなかったのではなかろーか、と!
「ふむぅ。受け入れるしかなさそうでおじゃるな」
時端芽は達観したツラ構えでそうのたまわったが、先程購入した500万のゴボウをポリポリしていたのであーった!
「信じてくれてありがとう」
「こちらこそでおじゃる」
微笑み合い、ガシッと握手する2人! なにか得体の知れない友情が芽生えたような感じがする!
「私の名前はパパチチイヤン1世。軍魔司令をやっている者だ」
販売員が名乗り、猫五郎は「とんでもねぇ名前だ」と口走ってしまったが、幸いにしてパパチチイヤンには聞かれなかった。
「
「大将軍? へえ、ガニンガー族にそういった役職があったような覚えがあるが、まさかこの世界にも似たようなものがあるんだな」
「あ、あの、ガニンガー族って?」
「ああ、カニだ」
「……カニ」
「別名、チポポガニとも言う」
「……チポポガニ」
猫五郎はなんだかこれ以上は違う物語になりそうで、聞いちゃいけない気がした!
「それよりも、あの白木って老人が魔界の神ってことは、大魔神の正体がそうだったりしますか?」
冴えている猫五郎は、犬次郎の持つ大魔神の陰囊玉の手がかりなのではなかろーかと、そう思ったのであーる!
「ううん? えーと、魔界の神と大魔神ってなんか違うくない?」
「え?」
パパチチイヤンに怪訝そうに言われて、猫五郎はお目々をパチパチさせる。
「魔界の神はさ、なんか威厳とか、カリスマみたいなのありそーじゃん」
「は、はぁ……」
あのジジイのどこにそんなものがあるのか疑問に思いつつも、猫五郎は頷く。
「大魔神って聞くと、なんか力の限りすべてを破壊しくすみたいなぁ……そんなイメージじゃね?」
時端芽は「確かにでおじゃる」と頷く。
「なんか、漫画とか特撮のイメージに流されてません?」
「そんなことは……ねえ」
「ないでおじゃる……ねえ」
「ヒームヒムヒムヒム!!」
「……」
猫五郎が胡散臭そうにする。
「大魔神と言えば、思いつくのは、村はずれにあるスナック『大魔神』だけだな」
「スナック?」
「ああ。美人のママが経営していて、なんか鬼のボスとかいう噂もあるようなないような……」
なんとも曖昧なことをのたまうパパチチイヤン。
「美人ママ! 猫五郎! すぐにそこに向かうでおじゃる!」
さっそく美人ママに喰い付いた大将軍であーった!
「いや、時端芽様。商売の鬼はいいんですか?」
「斯様な真っ当な商売をしている鬼は悪人ではないでおじゃる! 討伐非対象!!」
猫五郎にはどう見ても悪徳商法にしか見えなかったのだが、血走ったお目々をして、パカ之進とゴボウを取り合いしている危険人物に進言する気にはなれなんだ!
「行くのかい? なら、地図を書いてやるよ」
ドタドタンッ!!
「ん!?」
パパチチイヤンがチラシの裏に案内図を描こうとした瞬間、彼の後ろにある掘っ立て小屋で物音がした!
「いったい何の音で……?」
「お、音? 気のせいだろ……」
明らかに動揺したパパチチイヤンはお目々を泳がせていた。
「さあ、これが地図だ! 特別に無料でいい! 持って、さっさと行ってくれ!」
ササッと描いた簡易地図を半ば押し付けるように渡そうとする。
ガタガタガタンッ!
「ッッッ!!」
「いや、なんかおかしいですよ。中の様子を見に……」
「だ、ダメだ! そ、そうだ! あそこには危険な魔獣が居るんだ!」
「は!? そんな危険な魔獣がいるならなおさら放って置いたらヤバいでしょう!」
「確かに! 市井に仇為す不逞の輩を討伐せしめるのが鬼キル隊におじゃる! よくぞ、申した! 猫五郎よ!」
時端芽とパカ之進は、制止しようとするパパチチイヤンを突き飛ばし、小屋の方へと「そいやさぁ!」と向かう!
「や、やめろー!!」
パパチチイヤンの必死の叫びも虚しく、猫五郎と時端芽は小屋の扉に手をかけたのであーーった!!