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35 究極で完璧な老害

「キェーッ! この糞便老人めが! 麻呂にこの様な仕打ちをするとは、悪鬼羅刹の類に相違ない! ここで成敗してくれるでおじゃーる!!」 


「ヒームヒムヒムヒム(# ゜Д゜)!」


 やっぱり怒り狂ってる時端芽は、パカ之進にトキハメー・オン(騎乗)し、ジャパニーズソードを振り回しながら、白木に向かって特攻する! 効果はたぶん抜群だ!!


「ほえ?」


 すっとぼけた顔をして、白木は鼻ホジーする!


「こ、頃してはダメです!」


 物語の核心的ななにかが聞けなくなる予感がして、猫五郎は思わず止めてしまった!


「キェーッ!」


 しかしそんな事で止めるわけもない!


 今までお話の中で、やめろと言われてやめたヤツはいねぇ!


 そして、あなや! ジャパニーズソードが白木に当たりそうになった次の瞬間でござった!!


「ボチッ、とな!」


 白木はテレビのリモコンみてぇなもんを取り出してボタンを押した!


「おじゃぁァァァーー!!」「ヒーィムゥヒムゥ(´;ω;`)!!」


 突如として現れたブラックホールみてぇなのに吸い込まれる時端芽とパカ之進!!


「こ、これは!?」


「ウヒヒッ!」


 白木は両肩を震わせて鼻水を飛び散らかして笑う!


 ああ、哀れ! 時端芽とパカ之進は時空の彼方へと飛び去ってしまったのであーった!


「大将軍たちは一体どこへ!?」


「そんなことはワシも知るわけないじゃろー! 異次元のどっかにブッ飛ばしてやったから、ここではないどこかで、いつかきっと、どこかの誰かに、多大なご迷惑をお掛けしておるのは間違いないわーい!!」


「異次元のどこか? こ、これはもしかして異世界転移!? エンジン……もとい、ゴッデム神によって過去に転移した時と同じパゥワーなのでは!?」


 猫五郎は説明口調で、察しの悪い読者のためにそうのたまう!!


「ほえ? ゴッデムのヤツを知っとるんかい?」


「え? あ、あなたこそゴッデム神のことを……まさか、転移装置を与えた“天災科学者”って?!」


「なにを隠そうワシのことじゃーい! 『SシラキAオールWワールドTトランスファーSサービス』という異世界転移会社の代表取締役社長もワシじゃー♡ ゴッデムは出張所の契約社員のひとりじゃーい!」


「ゴッデム神……え? 仮にも元神だった存在が……契約社員?!」


「ホワイト企業じゃ♡ ”白”木ってだけに♡」


「いやいやいや、なに言ってんですか! アンタ!!」


「そうだー! バカヤロー!! このジジイがすべての元凶だ!! コイツが俺たちを改造してこんなサイボーグ姿にした挙げ句、こんなどこかも知らねぇ田舎で、ワケのわからないことやらせてやがんだ!!」


 ヤオキチたちオッサンが、白木を指差してブーイングする。


「さ、さすがです! さすがは魔界の神アルブス・アルボル様! 我らの世界で、創世神ニューワルトに並ぶと恐れられている、そんな武神ゴッデムまで陥落せしめておられるとは!!」


 そういやさっきからいたパパチチイヤンが、なんか感動にむせび泣いておられた!!


「創世神? あ、ソイツもワシが倒したわーい♡」


「え!? ま、まさか……ということは!」


「つまり、ワシが新世界のゴッドってことじゃーい♡」


 どこぞのデスさせるノートの主人公っぽいことをのたまうクソジジイ! まさかの事態に全員がびっくら仰天する! 


 こんな過去の超日本のド田舎で下肥をバラ撒いている老人が、なにがどうすればどうなってこうなるというのであろうか!?


 まさに畜生転移始まって以来の異常事態が展開しているのであーった!!


「アンタが異世界に異動する装置さえ作らなければ…そ…れをゴッデム神に渡しさえしなければ!! 超宇宙は犬次郎さんによって滅びる目に遭うことはなかったんですよ!?」


「ほえ?」


 白木はすっとぼけた顔をした。猫五郎は猫生じんせいで一番イラッとした。


「なにが目的なんですか!?」


「暇だったんじゃーい!」


「え?」


 猫五郎は我が耳を疑う。


「暇で暇で仕方なく、面白いことがなければ自分で創ればいい……そう思って色々とやってるんじゃーい! 科学者や、床屋や医者や本屋までやってたのはそういうわけなんじゃーー♡」


「……暇だったから? いや、あの、皆、泣いてますよ」


 咽び泣くオッサンたち。


「それに、魔族だかなんだか知らないですが、他の異世界の人にも影響…与えてるんですよね? それも神様とかクラスの…」


 パパチチイヤンは頷く。


「しかも、いまさっきも、この国の大将軍を異世界へ飛ばしたり……」


 そういや、時端芽はあんなでもこの国のトップであった! あんなんでもいなくなったら国は大混乱するに違いない!


 猫五郎の中で色々とバラバラだったパズルのピースが、そうこうカッチリとハマっていく感じがする!


 『畜生転移(無印)』がなければ、『畜生転移2』や『畜生転移3』も、当然に『シン畜生転移』なんかいう物語が誕生するわけがなかった。


 とどのつまり、この老人が余計なことしくさらなければ、こんなメンドクセー問題は起きなかったと結論づけた猫五郎の名推理だったのだ! 褒めてつかわす!


「それを暇だったからって、おかしいでしょうが!!」


「なにもおかしいことはない!! 超宇宙&別次元はワシを中心に回っとるんじゃ! たかが、超宇宙を股にハメたくらいで、調子に乗るんじゃぬぁーいわーいッ!!」


 トチ狂ったことを申される白木!!


 トチ狂った登場人物の多い中、当然にその始祖とも言うべき存在が狂ってないハズもない!!


「でも現実に困っている人がいるッ! アンタのやっていることはおかしい! だから言う! アンタはおかしい! 究極の完璧な老害だッッッ!!!」


「ぐぬぬぬぬぬッ!!」


 怒りのあまり、前頭葉部分から湯気が出ている白木!


 そういや高齢者は前頭葉が萎縮してしまい、怒りやすくなるとかならんとか言っていた気がするが、怒るからこそ短絡的になって、より前頭葉の萎縮が余計に進むんじゃなかろーか!? 怒る前に冷静になって物事を見直す脳トレをオススメしたい!!


「お前さんはこの超宇宙の崩壊が阻止できさえすればいーんじゃな!?」


「そ、そうですよ!」


「なら、こんなところで油売っとらんで、村はずれのスナックへ行くんじゃ!」


「スナック? ま、まさか『大魔神』とかいう……」


「そうじゃぁ! そこですべてがわかる! 道草くいおってからに! あー、もう! 腹が立つわーい! こうなったら、どこぞの帝国で巨大メカでも造って、腹いせに小惑星でもブッ壊してやるわーい!」


 白木はそんなことをブツブツと喚いて(高齢者にありがちな)、またリモコンを取り出す。


「え? ま、まさかそれって……チブサー帝国とかいう場所じゃ……」


「あ? 確かそうじゃったかな? 前に異世界へブッ飛ばした、“愉快なローション一家”とかなんとか言うヤツらに、強い兵器作っちょくれって言われとるんじゃーい!」


「ちょ! それ待っ…」


「うるさーい! ボチッとな!」


「バカヤロー! 待てクソジジイ!」「お、お待ちを! アルブス・アルボル様!」


 ヤオキチとパパチチイヤンの制止も聞かず、白木はボタンを押してブラックホールみてぇなのに吸い込まれて行く!!


「バカヤロー! 残された俺らはどーすんだ!!」


「ハッハー★ こりゃZI・GO・KUだゼー★」


「オンドリャー! ワシらを元の時代に戻さんかーい!」


「ま、魔王軍の再興はこれからどうすれば……」


 咽び泣くオッサンたち+魔族であったが、猫五郎はそんなことどーでもよかった!


「目指すは……スナック『大魔神』!」


 手にした金の剣ヴァイブセーバー(そういやほんなの持ってたわな)を握り締め、主人公っぽくのたまわったのであーーった!!

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