キヨ!
ご主人様!
どのくらい暗闇に居たのだろう? 可愛い声とよく通る艶やか声に起こされた。
「ん、ここは?」
俺は目を覚ますとささやかな胸の向こうに泣きそうなレイティアの顔が見えた。
膝枕?
俺はゆっくり起き上がるとあたりを見回し、現状を思い出した。
あの大広間だ。
周りを見るとみんなは回復薬やマナ石、回復魔法で戦いの傷を癒していた。
どうやら俺はマナ切れを起こしていたらしい。
あれ? 俺、せっかくの膝枕を堪能してない!
もう一度横になろうちしたが、レイティアは立ち上がってしまった。
見るとアレックスとユリが二人で俺を呼んでいた。
「ゴブリンリーダーのようだ。どうする? 殺すか?」
「ちょっと待て! アレックス。こいつを殺すのは簡単だが、今回の俺たちの目的は先行隊の救出だ。まずは奥に行こう。万が一の時はこいつを人質にすれば良い。ユリさん、この奥ですよね?」
「ええ、その奥でアーちゃん達と別れたの」
俺はゴブリンリーダーに向かった。
「最近、人間が来ただろう。その人たちはどうした?」
「ふん、一匹は奥に転がってるゴブ。あとは知らないゴブ」
「じゃあ、奥に案内してもらおうか。どうせ罠があるんだろう。いいな。アレックス」
俺は剣でゴブリンリーダーを突っつく。
「ああ、案内してもらおう」
ゴブリンリーダーを先頭に奥の進む。途中で罠があったが解除してさらに進む。すると先程ほどではないまでも大きい部屋に出た。
「お姉ちゃん!」
そこにはアリシアだったものがあった。
アリシアの形をした石像だ。
石化の罠?
「どういう事だ! 治す方法は?」
俺はゴブリンリーダーに詰め寄る。
「知らないゴブ。こいつは他の連中が逃げ出したあと一人で勝手に石になったゴブ」
勝手に石になった? 罠ではなく?
「誰か魔法か呪いを解く方法を持ってないか?」
「魔法を解くなんてグランドマスタークラスじゃないと無理じゃないか? 呪いなんてかけ方自体どんなものかもわからないよ」
そうするととりあえずこのアリシア像を持って街に戻ってから考えるか?
「アーちゃん。土系の魔法を使うのに自分が石化するなんてなんだか皮肉ね」
アリシアさんは土系の魔法を使う?
「ユリさん。アリシアさんは魔法を四つ持ってるんですよね。どんな魔法ですか?」
「え、アーちゃんの魔法? まずウエポンハードネスでしょう。ロックウォールそれにロックアロー」
武器の強化、石の壁、石の矢、これで三つだ。
「あと一つは? アリシアさんは四つ持ってるんですよね」
「あと一つは……知らない。そういえば四つ目を使ってるのを見たことないわ」
やっぱりそうか。
「おそらくこの石化はアリシアさん本人の魔法です」
「何のために自らを石化するんじゃ?」
「どうしようもなくなった時の防御方法でしょう。アリシアさんの意思で解除は可能なはずですが、おそらくアリシアさんからは外部の様子が分からずに解除をしてもいいか判断がつかないんでしょう」
「じゃあどうやってアリシア姉さんにそれを伝える?」
俺は少し考えた。
「当然その役目はレイティア、君の役目だ。そしてソフィア、君の力も必要だ。出来るな?」
「ご主人様があたしにできるというのでしたら必ずやって見せます」
「でもどうするの? キヨ」