「ヨシダ、コイツらが今回の作戦行動を共にして貰う冒険者パーティ『
ギルドマスターにそう紹介されたのが、女性4人組で結成された冒険者パーティだ。
「何だ、ハルクのおっさんか? で、連れのそっちは見慣れない顔だけど何者だい?」
ギルドマスターの声に打ち合わせか何かをしていた一人がクルリと此方をむく。 燃える様な赤い髪が特に目を引く戦士らしき人物が、俺を眇めながらギルドマスターに問う。
「うむ、以前から要望を出していただろう? レンジアタッカーの優秀なのが欲しいと。そこでだ、今回の作戦行動で暫定的にだが、此奴を入れて見ようかと考えた訳だ」
そう言いながら俺の方へ顎をしゃくるギルドマスター。その言葉に胡散臭い者でも見るかの様に俺を見やる美人戦士。その肩や腕には歴戦を思わせる傷跡が走り、その立ち姿からはただならぬ圧が感じられる。他のメンバーも、それぞれに個性的ながら、一様に鋭い目つきをして俺に視線を寄越す。
(うわっ、デカいな。俺の顔が丁度彼女の胸の高さと同じぐらいじゃないか、そして偶然にも目の前に在るのが、これまたデカいメロンが二つたわわに実る)
俺がデカいメロンの虜になっていると、ギルドマスターはニカッと歯を見せて笑った。
「ヨシダ、コイツらは俺が目を掛けてやってるパーティで、赤髪の戦士がリーダーのフレアだ。
(オイオイ、冒険者ランクAのトップクラス? 俺必要か? 大体遊撃部隊じゃ無いのか? これじゃ最前線待ったなしだろ?)
頭に浮かぶ無数のクエスチョンマークと格闘しながら状況を纏めようとするが、混乱した思考は纏まるはずもなく、そんな俺の内心などお構い無しに話を進めるギルドマスター。
「で、こいつがヨシダだ。今日登録したばかりの新人だが、ちぃとばかし『面白い魔法』を使うんでな。今回の作戦、お前らのパーティーに預けることにした。まあ、上手く使ってやってくれ」
「新人……ねぇ。ハルクのおっさんが直々に連れてきたって事は、ただの新人って訳じゃ無さそうだけど、使えるのかい?」
フレアと紹介された赤髪の戦士は値踏みするような視線を俺に向けてくる。その視線は鋭く、まるで獲物を狙う鷹のようだ。
(ヤバッ、デカメロンをガン見してたのバレてる? 幾ら若返ったとは言え、
などと俺が内心でくだらん謝罪をしている事などお構い無しに話は進む。
「まあ、確かに今日登録したての新人だ。だがギルドマスター権限でこの作戦に限り暫定Cランクを与える言ったら如何だ?」
ギルドマスターが付け加えた言葉に、フレアの片眉がピクリと上がる。他のメンバーたちも、興味深そうに、あるいは訝しげにこちらを見ている。
「そもそもは強制依頼はDランク以上が対象で
「ギルマス権限を使ってまでランクをCに上げる……更に訓練場を半壊……もしかしてさっきの地震騒ぎはアンタの仕業ってことかい? アンタ一体、何をやらかしたんだい?」
フレアは面白そうに口の端を吊り上げた。
「いや〜あのオッサンが初心者講習してやるとか言って、のっけから超本気で打ち込んでくるし、
取り敢えず、ギルドマスターのせいにしてテヘペロしといた。
「あははは、そりゃ災難だったねぇ。ま、ハルクのおっさんはアレが普通だ。そんな事より自己紹介するかね、アタシはフレア。『
こっちの
フレアと名乗った赤髪の戦士が、仲間たちを次々と紹介して行く。
鬼灯と呼ばれた女性は、赤銅色の肌と頭には短い角が2本と
続くキャトリーヌは、モフモフの猫耳としっぽの分かりやすい特徴を持つ
最後に、ヒーラーの瑠奈は、黒髪黒目に前髪ぱっつんのおかっぱ頭に、白衣に千早、赤い袴に玉櫛と完全に巫女さんで有る。その馴染みのある風貌は、恐らく
(こりゃ中々個性的な面子だが、ジョブのバランスは良いし装備も最高、オマケに美人で揃いで俺の居場所が有るのか不安だが、取り敢えず挨拶からか)
「ヨシダだ。一応、魔法使い……のカテゴリかな? まあ、ギルマスの言う通りのド新人なんで、「弾幕薄いぞ、何やってんの!」って言われない様に頑張ります」
俺は当たり障りのない自己紹介をする。内心では「STGスキルしか取り柄がないんで前線出たくね〜」と叫んでいたが。
「Fランク……いや、暫定Cか。まあ、ハルクのおっさんが言うんなら、何かあるんだろうね」
フレアはそう言うと、腕を組んで俺をじっと見つめる。
「で、アタシたちに預けるってことは、こいつも明日の作戦に参加するってことかい?」
「その通りだ。こいつの火力は上手く使えば戦況をひっくり返すだけのモンがある。だがこいつはまだまだ実戦経験が浅く、その辺はお前らベテランの判断で上手くフォローしつつ使ってやれ」
ギルドマスターの言葉に、フレアはふむ、と顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。
「実戦経験は浅い……だけど訓練場を半壊させる……新人ねぇ……。面白そうじゃないか。いいだろう、ハルクのおっさん。このヨシダっての、アタシたち『
フレアは不敵な笑みを浮かべ、俺に向かって手を差し出した。
「よろしくな、新人。せいぜいアタシたちを楽しませてくれよ?」
(うわぁ、なんか完全に面白がられてる……。楽しませるって、俺は珍獣枠かよ)
俺は差し出されたフレアの手を、恐る恐る握り返す。その手は、戦士らしく硬く、そして力強かった。こうして、俺の異世界での初の大規模作戦は、この個性的な女性パーティと共に始まることになったのだった。