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第13話

スマホを操作してモンスターガチャを呼び出して、『回す』ボタンをタップする。

なんだか、本当に課金ガチャを回してる気分だ。

隅に表示された残ポイントが300になった後、目の前に光が現れ始めた。

そこそこ大きい光が消えた後に俺の目の前に残っていたのは、黒く光る鉄の巨人だった。

「マジ○ガーZ……」

「どっちかって言うとボスボ○ットみたいですけど、違います。……これはアイアンゴーレムですね」

なんだかリゼルが微妙な顔をしている。

コイツって、弱いのか?

「弱いって程じゃないんですけど……」

なんだか説明がしにくそうで、少しだけ考え込んでいる。

「えっと、ゴーレムの特性で一番厄介なのが『自動修復』ってスキルなんです。周りに自分と同じ物がある時に、それを取り込んで回復するスキルなんですけど……」

そこまでの説明を聞いただけで、なんとなくリゼルの言わんとしていることが分かった気がする。

「つまり周りが鉄だらけじゃないと、コイツはただの鉄の塊って訳か」

「はい。しかも、攻撃力はあっても素早さはゴーレム界で最遅。正直に言ってロックゴーレムの方がまだ使えます」

つまり、ハズレってことか。

「まぁ、鋳潰せば鉄装備が作れますし、その為に召喚する分には最適なんですけどね」

「でも、今は必要ないです」

「まぁ、そう言うことですよ」

……よし、鋳潰そう。

「いや、せめて経験値になってもらいましょうよ」

早速スマホを使ってどうにかしようとした俺を、リゼルが慌てて止める。

「コイツだって、倒せば結構な経験値になりますから。勿体ないですし」

それもそうか。

「じゃあ、ミリィ。やってみてくれ」

「ふえっ!? 私ですか?」

「まぁ、妥当なところよね」

どう考えても俺たちの中で最弱なのは、俺かミリィ。

俺は直接戦うことなどたぶんそれほどないだろうし、ミリィは被差別種族として今後も積極的に襲われる可能性が高い。

そうなれば、ここはミリィ一択だろう。

指名されたミリィは、どうすれば良いのか戸惑っているみたいだが。

「大丈夫ですよ。コレあげますから、顔の部分の宝石みたいなのを狙ってみてください」

どこからか取り出した投げナイフをミリィに手渡しながら、リゼルが倒し方を説明している。

俺はアイアンゴーレムに命令を出すと、倒しやすいように少し屈ませた。

そのまま動かないように命令しておいたので、これなら良く狙えば当たるだろう。

「さぁ、やってみてください」

「頑張って」

他の二人からも応援されてやる気になったのか、ミリィがナイフを構える。

そのまま腕を振ってナイフを投げると、その刃先は寸分違わず宝石の中心に突き刺さった。

「おおっ!」

「上手いもんですねぇ」

予想外の結果に、思わず声が漏れる。

頭を撫でて褒めると、「えへへ」と可愛らしく笑うミリィをめでていると、突然スマホから今まで聞いた事のない軽い音が鳴った。

「なんだ?」

驚いた俺が慌てて確認すると、画面にはスキル欄が開いていた。


(New)投擲術Lv.1:ミリィ



開かれたスキル欄を覗いてみると、そこにはチカチカと光る文字が表示されていた。

これは、ミリィが新しいスキルを覚えたって事か?

「でしょうねぇ。それにしても、一回で覚えるようなスキルじゃないですよ、コレ」

リゼルも、なんだか不思議そうな表情を浮かべている。

「あっ、もしかしたら……」

「心当たりがあるのか?」

「はい。私、奴隷になる前は良くお友達と的当て遊びをしてたです」

村で一番上手かったんですよ、と胸を張るミリィが可愛くて頭を撫でまわす。

「はわっ! びっくりしました……」

最初は大きな声を上げたミリィだったが、耳のマッサージを始めると気持ちよさそうに俺に身を預けてくる。

「て言うか、そろそろコレ抜いたら?」

「そうですね。もう経験値は入ってるみたいですし、私が抜きましょう」

ふわふわと飛んで行ったリゼルがナイフを抜いた瞬間、アイアンゴーレムの身体にヒビが入る。

そして次の瞬間には、鉄の巨人は粉末となって地面に広がっていった。

「なぜ、粉?」

「……まぁ、大丈夫ですよ。こうやって集めたらインベントリに入れられますから」

袋いっぱいに鉄粉を詰めると、どんどん机に置いていくリゼル。

そうしてあっという間に、鉄粉は全て袋に詰められた。

「さっ、後はインベントリにしまうだけですよ」

早く早く、と急かしてくるリゼルには悪いけど、ひとつだけ聞いていいか?

「なんですか?」

この世界、インベントリってあるのか?

「そりゃあ、ありますよ。あれ? 説明してませんでした?」

ああ、初耳だ。

そんな便利機能は、真っ先に教えておくべきだろう。

「いやぁ、あまりにも当たり前のことなんで忘れてましたよ」

「主様の居た世界には、インベントリさえないのね」

「えっ!? ご主人様は異世界の方なんですか?」

ミリィが一人だけずれたことを言っているけど、ややこしいのでとりあえず放置する。

ともかく、あるならさっさとインベントリの使い方を教えてくれ。

「それが人に物を頼む態度ですか?」

……教えてください。

「まっ、良いでしょう。手で触れて『入れ』と念じればしまえますよ」

それだけか。

試しに鉄粉の入った袋の一つを持って念じてみると、フッと一瞬で袋が消えてしまった。

代わりに、スマホのインベントリ欄が点滅を始めた。

「忘れっぽいハヤトさんの為に、スマホで確認できるようになってますから。ちなみに、出したい時は『出ろ』と念じるだけですから」

邪魔なんでしまった鉄粉は出さないでくださいね、と先に釘を刺されてしまった。

まぁ、出すのは今度で良いだろう。


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