朱雀機関文書 :ヨモツヘグイ
怪異登録番号 :よー108
危険度 :松
対応マニュアル :
よー108に対する効果的な対応策はありません。
朱雀機関および白虎機関、青龍機関、玄武機関の各エージェントは姉妹組織間の連携を行い、研究成果を共有し、一日も早く対策を練るよう励んでください。
万が一、調査中によー108と遭遇した場合、調査員各位は心身を霊的汚染(ケガレ)から守るため、半径5メートル以上距離を取るよう心掛けてください。
また青龍機関に特殊警備員を最低3名派遣するよう要請して規制線を張り、偽装シナリオ「事件現場」に沿って、地元住民がよー108に近づけないでください。
通常、よー108は数時間から数日で自然消滅します。
よー108の影響下にある人物は白虎機関の指定する施設に収用、必要な措置をとってください。
説明:
よー108は、メイカー不明、車体の色が赤もしくは白いキッチンカーの形状を模した霊的実体です。
■■県童ノ宮市と夢ノ宮市、二つの市内に点在する商業施設、公園、路上などに主に夕暮れ時から深夜にかけてランダムに出現します。ただし、走行中のよー108が目撃されたことは監視映像なども含め、一度もありません。
基本、よー108が出現する際は遭遇するその人(以後、遭遇者と呼称)が一人ないし、少人数で行動しているタイミングに限られています。
その際、よー108はアイドリングを行っており、低くBGMなどが流されている場合もありますが運転手あるいは店員の姿は見当たりません。
よー108の商品受け渡し台には、遭遇者の好物が調理仕立てと思しき状態で置かれています。以後、この食品をよー108ーαと呼称します。
よー108ーαを目にした遭遇者は自分では制御できないほどの激しい食欲に駆られ、文字通りそれを貪るようにして食べてしまいます。
そして、数時間から数日後、激しい高熱や腹痛、下痢といった食中毒に似た症状を起こした後、様々な怪異現象に苦しめられることになります。
怪異はその被害をエスカレートさせてゆき、各段階の詳細は以下の通りです。
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・第一段階
遭遇者が一人になった時、その場にいないはずの人間の声が聞こえる。
最初は男性、もしくは女性の声は一人分だけだが時間が経過するにつれ増えてゆく。
・第二段階
遭遇者は自分の周囲を幽霊、もしくはゾンビのような凄惨な姿をした者たちが徘徊していると主張するようになる。それらが遭遇者に直接危害を加えることはない。
・第三段階
上記の幻覚・幻聴に加え、遭遇者は自らが日常的に使用している閉鎖空間(個室、教室、オフィスなど)が一日に数分から数時間、赤い光とがん細胞を思わせる腐肉に覆われた異界へ変貌すると認識するようになる。その時間は日を追うごとに長くなってゆく。
・第四段階
症状が第一段階から第四段階に進行するまでの間、遭遇者が正気を失い自ら命を絶たなかった場合、ある日、ぼろ布をまとった老婆の姿をした霊的実体ヨモツシコメ(以後、よー108ーβと呼称)が出現し、遭遇者を殺害しようとする。
よー108ーβは非常に凶暴で遭遇者への攻撃を阻止しようとした者に対しても積極的に攻撃を仕掛けてくる。現状、青龍機関にはよー108ーβに有効な打撃を与えることのできる武装はなく、今後の研究開発の発展が期待される。
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この現象はおよそ二週間程度で最終段階に至りますが、個人差があり、極端に進行が早いケースもあればその逆で遅い場合もあります。
神聖な場所での物忌、儀式を行うことで症状が後退、緩和するケースもあります。
しかし、それらは時間稼ぎに過ぎず、よー108ーαを食べた時点で最終的な運命は変わらないものと思われます。