妻の
妻には金銭的に苦労をかけてしまった。思うように高額治療を受けさせてあげられなかったのである。わたしが知り合いから借りてでもなんとかすると力説したのだが、
突然の妻の死は、わたしの人生を大きく変えてしまった。心の中に大きな空洞ができてしまい、何もやる気が出ないのである。仕事すら全く手につかない。いわば人間の脱け殻状態だ。
そうは言っても、いつまでもクヨクヨもしてもいられないのが現実である。会社の総務部からも復帰の意思確認が来ている。
妻の荷物はすべて生前のままにしてあった。そろそろ片づけをはじめることにした。クローゼットの中には
わたしは思わずそのうちの一着を顔に押し当てた。妻の香りが蘇り、両眼から涙がとめどなく流れ落ちた。
「なぜ・・・・・・どうしておれを置いて行ってしまったんだ・・・・・・」
わたしは妻の抜け殻を握りしめたまま嗚咽し、想い出の井戸に
テーブルの上にはふたりで買いそろえた想い出の品が所狭しと並んでいた。
趣味で集めた猫グッズ、色とりどりのお人形たち、キーホルダー、缶バッチ、小物入れ、扇子、フクロウなどの動物の置物、なにやら綺麗な石、ガラスでできた文鎮、お揃いの湯飲み、二人で一緒に絵を描いて焼いてもらった皿、千代紙をちりばめた万華鏡、小さな木製の額縁に入った絵画・・・・・・。
わたしはそれらの想い出をひとつひとつ吟味しながら、必要最低限の物だけを残して、用意した段ボール箱に詰めていった。
そして5箱にもなった大きな段ボール箱にガムテープで封をし、いざ押し入れに仕舞おうとにしたその時だった。押し入れの奥から見覚えのない小綺麗な菓子箱を発見したのである。
「なんだこれは?」
怪訝に思ったわたしは箱を引き出し、眉をひそめて蓋を開けてみた。そこには大量の手紙がぎっしりと詰まっていた。