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第27話

 ルーラ様のお屋敷とやらに着いた私たちは、馬車を下され、まるでウサギ小屋みたいな小さな部屋に押しこめられた。


 人さらいいの男が高圧的に言い放つ。


「ルーラ様は奥方様を亡くされてからというもの、夜の相手をしてくれる若い女性を求めている!今日はこの中から夜伽の相手を決める手はずだ!くれぐれも粗相のないように!」


 ――夜伽の相手。


 なるほど、そういうことね。


 私はやっと事情を飲み込んだ。


 ルーラとかいう貴族に命令されて、こいつは近くの街から夜伽の相手をする女の子を誘拐して来ている、というわけなのだ。


 なんてやつ。貴族の風上にもおけない。しかもこんなに若い子ばっか。


「そうだな、今日は、そこのお前!」


「はへ!?」


急に指をさされた私はきょとんとする。


「それと、そこの小さいの!」


次に、モアが指をさされる。


「モア、小さくないもん!」


 頬を膨らませるモア。そんなこと言ってる場合? 


 私が男の相手をするのも気持ち悪いけど、モアが相手をするのはもっとダメーっ!


 むくれるモアに、男は一喝する。


「うるさい黙れ! それからお前! そっちの胸のデカい女!」


最後に、私と同じくらいの年の、栗色の髪をボブカットにした女の子が指をさされる。


「ひ、ひぃ! 私ですか!?」


 そう言って彼女が身を震わせると、気弱そうな外見と素朴な服装とは不釣り合いなほど大きな胸がぽよんと揺れた。


 この子、見た目は地味だけど凄いスタイルいいな。エロい……。


 私がゴクリと唾を飲みこむと、隣にいたモアがジロリと私を睨んだ。


 な、なんで私がエロいと思っていることバレたんだろう?


 私たちがコソコソとそんなやる取りをしていると、男がゴホンと大きな咳払いをした。


「今日はお前たち三人の中からルーラ様に相手を選んでいただく! 日が落ちたら迎えに来るからな!」


バタン、と大きな音を立ててドアが閉まると、女の子たちの間に、絶望感が広がった。


「どうしよう。もうお嫁に行けない!」


 栗色の髪の女の子が、胸を揺らしてさめざめと泣き始める。


「大丈夫だ。私が何とかする」


 私がそう言うと、栗色の髪の女の子は怪訝そうな顔で私を見た。


「ぐすん。あなたに何ができるっていうの?」


「大丈夫だって! ええと」


「私はマロンよ」


「そうか、マロン。可愛い名だね。私はミア。マロンもモアも、他のみんなも、私が絶対に助ける」


 私が笑うと、マロンもつられて笑う。あ、この子、地味だと思っていたけど笑うとえくぼが出て可愛いかも。


「分かった。私、あなたを信じるね」


 うなずくマロン。

 モアも胸を張って言う。


「大丈夫よ! 私のお姉さまは最強なんだから!」


 天使の笑顔。モアにそう言われたら力もいつもの百倍湧いてくるってものだ。


「さて、とりあえずこの縄を切るか」


 足のロープは外されたが、手は縛られたままだ。このままでは身動きがとれない。


 私は腕に力を込めた。並のロープならば、私の腕力で軽々と引きちぎれる。


 だが、このロープは何か特殊な魔法でもかかっているのか、力を込めると赤い稲妻がバチバチと走り、びくともしない。これは困った。


「さーて、どうするかな」


 私は途方に暮れてしまった。


 *




 そして縄から抜け出せず、有効な作戦も思いつかないまま日が暮れ、私たちはルーラの寝室に呼び出されたのであった。


「がっはっは! 今日はどの女の子にしようかな~っと!」


 両手に大きな宝石の指輪をいくつもはめ、でっぷりと太った中年男が下品に笑う。


 なんていうか、絵に描いたような成金だな。


 私があきれていると、モアが私にしがみついてくる。


「お姉さま!」


 その様子を見て、ルーラ様とやらは下品な笑みを浮かべた。


「どの子も若くて可愛いなあ。 今日は豊作だ! そうだなあ、たまには三人一度に相手にするのも面白いかもしれん」


 ガハハハハ! と笑う男。下衆が。あー胸糞悪い。


 お前なんかよりな、地面で干からびている馬糞やミミズの方がまーだ価値があるっての!


 が、私はそんな思いをかみ殺し、作り笑顔をしてずい、と前に出た。


「嫌だわおじさま~! 欲張りね♪ 三人一度に相手をしなくても、私だけでおじさんを腰が立たなくなるほどヘトヘトにしてあげるんだからっ☆」


 ニコリ、とウインクをすると、マロンほどではないものの、自慢の胸を寄せて谷間を作ってやる。おまけに脚をわざと組み替えて美脚をチラリと見せてやる。


 流石にちょっとわざとらしいか。ベタ過ぎて怪しまれるかな? 


 ちらりとルーラを見やると、ルーラは私の体を舐めまわすように見た。


「ほ、ほう。君は若いのに大胆だね!どれ、どんなふうにおじさんを楽しませてくれるのかな~?」


 でれでれと鼻の下を伸ばすルーラ。


 た、単純だ……少しは怪しめっての!


 わきわきと両手を動かし私に襲い掛かってくるルーラ。


 背中にゾゾゾと鳥肌が立った。


 あーー、キモいんだよ、オッサンが!


「それはもちろん」


 私はにやりと笑った。


「特技の足技でな!」


 私は一足飛びでルーラの前まで移動すると強烈な蹴りを食らわせた。


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