召喚から15年の年月が流れた。
激しい戦いの中を、我武者羅に俺は生きてきた。
魔王軍の執拗な攻撃で多くの命が散っていった。
幼子を抱いた母子
恐怖の表情を隠せないままの人々
町を守り切れずに無念で逝かざるを得ない兵士達
そして・・・。
人々を町を仲間を、守り切れなかった俺は嘆き悲しむ事も許されなかった。
魔王軍の怒涛の進撃が、立ち止まる事を許さないかったのだ。
その連戦で、俺は多くのモノを失った。
涙を。感情を。信頼する仲間を・・・。
ただ、戦いたかった。
魔王軍を破りたかった。
魔王を殺したかった。
そして、戦いは終わりを迎えた。
今は、虚無感が徐々に恐怖と変わっていくのを実感している。
戦いだけが、俺を必要としていた事を感じてしる。
恐怖が、俺の残った感情を食い散らかす。
眠りを恐れ、暗闇に怯え・・・。心身ともに疲れきった俺は、死の言葉に安堵を求めていた。
恐怖に彩られたあの頃は、狂っていたのかも知れない。
俺は疲れきり、何時しか目を閉じていた・・・。
暫くすると、あたたかい温もりが俺を包んでいる事で気が付いた。
幼子が、母の胸の中に抱かれる様な、安心感が荒ぶる神経を安らげてくれる、そんな感じか全身を包んでくれる。
あたたかい・・・。
何時しか深い眠りに誘われていく。
何時日かぶりだろう・・・。
静かに目を開けると彼女と目が遇った。優しく微笑む彼女に俺の涙が頬を伝う。
何故か嬉しかった。
何時も側に居てくれた彼女。大切で信頼している仲間として俺は見ていた。
彼女は、戦いの中で、そして戦いきった中で俺を見ていてくれた。
精神的に苦しむ俺を、見捨てずに見守ってくれた。
・・・言葉が出てこない。もどかしい。
無理やりに絞り出した言葉が、【ありがとう】だった。
更に、暫しの時を経て、言葉を繋いだ。【伴に歩んでくれないか。】
彼女の微笑が嬉しかった。