町はざわめき。雑踏の中を忙しく馬車が走り行く。
広場では、肉とタレとが絡み合い、美味しそう匂いが行き交う人々にまとわり付き、食欲を刺激する。
仲間と談笑する冒険者、物売る声たちが町の繁栄を写してる。
人々の群れは、男を避けるかの様に左右に割れて流れて行く。
男はひとりで、茫然と立ち、遠くを見詰める。
彼は召喚者。異世界からの孤独な旅人で有り、故郷を永遠に失わざる宿命を負わされた罪人。
彼は自らこの世界の保護者を断ち切った。
己を縛る鉄鎖を切り裂き、全て失った。
彼に後悔は無い。ただ目的を無くした事により、孤独を選んだ。
彼は、召喚者。この世界でただひとり孤独な流罪人。