「俺は戻って来たんだ!・・・懐かしい。無性に涙が溢れてくる。」
男は、異世界に召喚されて十年の年月を魔王との戦いで費やして来た。
長いし烈な魔王軍の攻勢をはね除けて魔王を破った。
当初は王国のいい加減な扱いに苦労はしたが、厄介払いなのか、すんなりと帰還が許された。
王国からは慰謝料として高圧的な対応で貴金属及び高価な薬品と貴重な鉱物をせしめて来たつもりだ。
石畳の広間に書かれた魔方陣の中央に立ち、王や大臣たちを見る。苦虫を噛み潰したよう表情が俺に満足感を与える。
目の前がボヤけていく。少しずつ気が遠くなっていく・・・目が覚め、懐かしい教室が。窓ガラスには、若い俺の姿が写っている。
「帰れた。召喚前か解らないが、帰れたんだ。」
感無量で言葉にならない。
ブルブルとポケットのスマホが、現実を戻す。
「もしもし・・・。今帰るとこ。」
懐かしいお袋の声に涙が溢れそうになる。
懐かしの我が家へ。