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第103話 神々の気まぐれ 7 「神にも真面目な方がいるのです。」

勇者との戦いの末、魔王は倒れた。

魔王の魂は、霧散せずに女神の元へ送られた。


「魔王さま。いえ、元勇者さま。私の力が足りず、貴方に大変な苦労を掛けてしまいました。召喚された貴方を利用して、世界を征服しようと企んだ国王。そして国王に唆された民衆に愛する人を殺された貴方は、悲しみを憎しみに変えて魔王を選び王国に復讐を成し遂げた。

しかし、私は心を悲しみで満たす貴方を罰する事が出来なかった。」


「私の魂は、地球に戻れるのでしょうか?」


「戻れます。しかし、貴方が望むならこちらに残る事も可能です。」


「ありがとうございます。出来るなら、自分はあの人が産まれたこの地で平和に暮らしたいと願います。」


「貴方の愛した人と再び、巡り合い今度こそ、幸せを掴んで欲しいと願っております。」


「女神さま。願いを聞いて頂けるならば、地球に残った両親の事だけが心残りです。一度だけでも会う事は出来ないでしょうか。」


「わかりました。しかし、今の貴方は魂の存在となります。[会う事] [話す事] [触れる事] は出来ません。ただ一度だけ、ご両親の夢に出る事だけ許可しましょう。それでも宜しいでしょうか。」


「辛いですね。ならば手紙を渡して頂けませんでしょうか。」


「許可します。その手紙と共に貴方のご両親に加護を与えましょう。」


「ありがとうございます。両親の事を 宜しいお願いいたします。」


手紙を渡した彼は、静かに輪廻の中に入っていった。魔王の頃の猛々しさは無くなり、穏やかな雰囲気を漂わせて。


女神は、彼の手紙とご両親が生活に困らない様にと、彼の遺産をなに気無い形でご両親に渡る様に計らうと同時に、加護を与え ご両親と彼の来世の幸せを祈った。



神々も真面目な方もいるのです。

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