「久しぶりだな。相も変わらず この国は魔王に狙われているんだね。」
召喚早々に勇者から奇妙な発言が?
「勇者さま。この王国をご存知なんですか?
異世界からの召喚ですので、勇者さまは初めてと思われるのですが?」
宰相らしき男と豪華な衣装を纏う王らしき男が、疑いの目で見詰めてくる。
「俺か。ここに召喚されたのは2度目の筈だけど。
確か・・・う~ん。1度目は26代国王の時代だったかな。
彼奴は元気かな?」
勇者の言葉に驚く王様。
「お祖父様をご存知なんですか? 私は29代国王となります。・・・確か120年前に魔王を倒した勇者の話が残っております。・・・?それが貴方様にですか?」
国王が答える。
「120年前!あれからそんなに経ったんだ。
俺が帰ってから3ヶ月も経ってないぞ!
異世界と俺の世界は時間の流れが違いすぎないか!」
驚く勇者。
「貴方様の活躍は伝説になる程に世界中に広まっております。・・・・・しかし、伝説と現実はこうも違う物ですか?」
呆気に取られる人々。
「おいおい!そんなに伝説と違うのかい?」
少し照れながら答える勇者。
「ハイ。伝説の勇者様は、長身で色白。流れる様な細やかな髪で、引き締まった筋肉と男も惚れる程の知的な顔立ちのイケメン・・・・!
溢れる活躍の数々が、今世界中の舞台で演じられております。・・ところが!」
夢破れた人々の視線が、勇者を痛め付ける。
勇者は、チビの小太りで髪はボサボサ。
服装はジャージ姿に寝起き顔。
本当に鎧が着れたのか?と疑問符が頭に浮かんでくる。
結論から言えば、本当に魔王を倒した勇者なのかと疑いたくなった。
現実を知り、失望の人々は小声で呟いた。
「何処から、あの伝説の勇者が生まれたかは、もはや解らないが、伝説は伝説のままでいて欲しかった。」と!
失望は魔王の出現を凌駕した。