目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第133話 後悔

「君の居ない世界は、つまらんな。」


男は小さい墓石を前にして、語り掛けていた。


「君が倒れて、もう三十年か。俺は、未だにこの長い時間を一人で過ごしているよ。


とても、長いなぁ・・・。」


「う、ん。今は王国からは、伯爵を頂いているが、どうも承に合わないなぁ。

領地は任せっぱなしで山奥に籠っては、魔物退治が楽で良いさ。

だが、世の中が少し騒がしくなり始めて来たようだ。

まだ頑張らねばならないようさ。」


「まぁ、髭も白くなり、目も霞んで気やがったが、体だけは丈夫さ。

まだ、若い者にはまけないさ。」


男は座り込み、何時しか酒を取り出しては飲んでいた。


「あの頃は、苦しかったが 思えば楽しい時間だったと時々思い返しているが、

未だに、あの時の一瞬を後悔している・・・。


あれさえ無ければ、失わずに済んだのでは無いかとな。」


「さみしいよ。・・・。だが、やり残した事が有るんだ。がんばって見るさ。


・・・今度は、いつ来れるかな。」


「・・・。」


「また、来るよ。」


男は静かに立ち上がり、振り返らず歩き始めた。また、この地に戻る事を信じて。





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?