召喚された勇者の数々の武勇伝を吟遊詩人が、美しい旋律で詠い広める。
人々は勇者の出会いと別れに感動と涙を浮かべ、勇者の苦悩と喜びには、共に悩み喜びを分かちあった。
魔王との戦いには手に汗を握る様に真剣に耳を傾けて聞き逃さぬ姿勢を取り、勝利には我がことの如く喜びを分かち合う。
吟遊詩人は町まちで語りながら、また次の町を目指して旅を行う。
吟遊詩人の語る勇者の物語は、娯楽の少ないこの世界では庶民の楽しみで有り、王国政治への不満の逃し弁でも有ることは、公然の秘密である。
吟遊詩人の語る勇者の物語内容の真偽は、誰も気にしない。ただ面白いければ人々は喜びながら耳を傾けることだから。
だが何十年か後には、きっと真実だ。として残される事だろう。
今日も、何処かの町角で彼らは騙るだろう。
なんせ、彼らは王国の秘密の広報官だから・・。