召還された勇者は女神より、高い能力と溢れんばかりのスキル、そして加護を頂いた。
王国も王自らが彼を称え、重臣たちも彼に期待を込めて満面の笑みで迎えてくれる。
勇者に付き従う仲間達が紹介された。
麗しい王女の聖女。
凛々しく若き剣聖。
逞しく恵まれた才能を持つ重戦士。
才能溢れんばかりの賢者。
頼りになる仲間達だ。
王国民は挙って沿道に集まり、彼らに期待を込めて、激励の歓声を贈る。
だが、肝心の勇者は戸惑いを隠せない。
「大丈夫なのか。こんな俺に期待をしても。しかし、何かが違う。何か変われそうだ。」
本来の彼は、病弱で気弱な暗い男である。
だか、今は違う。
何かが違うのだ。
ナニかがスッキリと彼を変えたのだ。
与えられた才能?
溢れる勇気?
頼れる仲間達?
自分を期待してくれる人々・・・?
「違う・・・! それらは、全てがこれから始まる戦いの為の未確定要素に過ぎない。それよりも俺をスッキリさせたのは・・・。鼻水が垂れない。
何時も重い頭が、何て軽いんだ。
ここは花粉症が無い素晴らしい世界なんだ。」
勇者は、改めて戦いを決意した。
花粉症の無いこの世界に住む為に。