「大神官、魔王の軍勢に脅かされた王国の行く末は、そなたらに掛かっておる。
頼むぞ。
必ず勇者を召還してくれ。頼むぞ。」
王の願いを一身に受けた大神官は、
「必ずや王様のご心労を安らげる結果を出して見せます。ご覧あれ!」
部屋いっぱいに刻み込まれた魔方陣を取り囲む様に神官達が、一斉に魔力を魔方陣に注ぎ込む。
大神官は、天に祈りを捧げる。
「女神さま。王国を守るべき力を持つ勇者をお与え下さい。」
一人の小柄な男の子が、真新しい制服を着て、道を急いでいる。
間もなく中学校の入学式が始まろうとしている。
突如、足元に目映い光が・・・召還の魔方陣が光る。
驚く男の子は、急いで光の輪から逃れようと試みる。
ダメだ、片足が魔方陣に張り付き抜けない。男の子は、再度足を抜こうと力を込めた。
スポっと靴が脱げた。
光る魔方陣に張り付く片方の靴。
そして、徐々に光は薄まり、魔方陣も消えた片方の靴と共に。
小柄な男の子。成長と共に大きくなると見越して買った、大き目の靴に助けられた。
王国では、魔方陣の光が薄まった後に残された一足の靴・・・召還が失敗に終わった瞬間だった。