異世界に一人の男が召喚された。
彼は、気が付くと大理石の広間中央に立っていた。
広間を屈強な騎士達が囲む様に立ち、
中央には太った男が豪華な衣装を纏い、座っている。
脇には、こ狡そうな男が何かを指示している。
騎士達とローブを纏う魔術師の一団が、
警戒しながら、召喚された彼を見据える。
おもむろに、こ狡そうな男は宰相だと言い、挨拶そこそこに、彼に向かい話し始めた。
「召喚に応じて頂き、感謝します・・・。」
から始まり、等々と王国の現状、魔王の復活と魔王軍の悪逆非道を語り続ける。
彼も最初は辛抱強く聞いていたが、途中で面倒臭くなり聞き流している。
宰相の言葉が止まった。
話が終わった様だ。
彼は顔を上げて、宰相を見つめる。
宰相は、「ご協力を願いたい」と
やや語尾を強めながら、回答を促す。
背後から騎士達の殺気が感じ取れる。
断れ無い状況を作り出し、有無も言わさずに承諾させる積もりの様だ。
彼は思案する振りをしながら、索敵スキルを発動させ、建物周りを把握する。
「大広間には、騎士が15 兵士50 魔術師が10。
建物周りに、騎士60 兵士800 魔術師 20程か、
おや!外の騎士達が纏まって誰かを守っている様だ。
ハ、ハハァ~ン。外が本命で、中の太っちょは
ダミーだな。
まずは、外を制圧するか。」
少し弱めの魔力を込めて、魔法を放つ。
「制圧完了。何て簡単な連中なんだ。」
笑いが込み上げてくる。
意識を宰相に向けた。
外での状況変化も判らずに、尚も強気で迫ってくる。
彼は微笑みながら答えた。
「俺の眠りを妨げておいて脅迫する積もりなのかな?」
意外な答えに呆気に取られる宰相。
少し強めに言い返えし、騎士達に拔刀を命じる。
「良いのかい。」と彼の声は恐れなていないようだ。
宰相の合図を待たずに斬りかかる騎士。
彼は、危ないなと一声掛けた一瞬で、床には騎士、兵士、魔術師が倒れ伏していた。
驚く宰相は、召喚者捕獲を外の軍隊に指示を飛ばした。