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第163話 命の厚み ➄

神より与えられたスキル【重厚】。

男は冒険者として活躍を夢見た。

初めての薬草採取で魔物ウルフに狙われたが、傷付くこと無く倒してしまう。

翌日の草原で角ウサギの攻撃でも、傷付かない事から、自分が無敵と少し確信した。




ゴブリン相手なら問題なく倒せると考えた男。

「此処までは無傷で倒せるが、

何処までの相手なら倒せるのだろうか。

一度は確認が必要だな。」

と呟きながら、次の獲物の選択を始めた。


「ゴブリンの次は、オークで確認だ。」

とオークの依頼書を片手に受付に向かう。


受付嬢は、俺の体型と【中級冒険者】のカードを見比べながら、

「御一人ですか。パーティーなら問題なく、依頼書を発行致しますが、ひとりでは、大変危険かと

思われます。ご再考をお願いします。」


男は、受付嬢の忠告を五月蝿そうな顔をしながら、無理矢理に依頼書の発行をさせた。


オークは、森の中程に生息しており、体力や力では、ゴブリンとは比べ様が無い程に強力な魔物となる。

オーク程の魔物を相手に無傷なら、金銭的と実績としても美味しい獲物になると考えるが、流石にオーク相手では怖い。


道中で倒したボアを肩に掛け、

森の中を進むと、少し開けた広場を見つけた。

早速、ボアに短剣を刺し込み、血を流す。

そして草むらに潜み、血の臭いを誘われて来るのを待った。


暫くすると、2m越えのオークが臭いに誘われてやって来た。


流石に怖い。恐怖心が身体を縮こませる。


知らぬ魔に後退りしている男。

ポキリと小枝を踏んだ音に、オークが振り向く。

「しまった。」

オークが鼻を効かせて、男を見付けた様だ。


男に向かい戦闘態勢のオーク。

「ブギャー」と一声、雄叫びをあげる。


逃げられないと知った男は、意を決してオークの前に剣を両手に持ち飛び出す。


突進してくるオーク。

男は恐怖で身体が動き煩い。

素早い動きに両手をクロスして守るが、男ははね飛ばされた。

大木を背に受けて、男は止まった。


「イタッ・・・くない。」

オークにぶち当たった両手、大木に当たったはずの背中、共にダメージが無い。

そして、確信した。

オークが俺を傷付ける事は出来ないと。


男は立ち上がり、オークに迫る。


オークは、何度も男をはね飛ばす。

しかし、その度に立ち上がり迫る男。


オークが少しづつ、後退りしている。

異様な男に恐怖を感じ始めた様だ。


男はオークに飛びかかり、滅多やたらに剣を突き刺す。

やがて、ブォーの一声を残して、オークは生き絶えた。


オークに勝った。

男はオークでも無傷で倒せると確信した。





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